📌 この記事の要約
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目標を伝えるだけで成果物を返す汎用エージェントが登場
Google Cloudは「Gemini at Work 2026」で、文章作成から分析、コーディングまでを1つの入力欄で担う「Geminiエージェント」を発表した。クラウド上で動くため、数時間から数日かかる作業も任せられる。 -
専用メールアドレスを持つ「AI同僚」を作成可能
役割を言葉で伝えるだけで、専用のメールアドレスやカレンダー、ドライブを備えた「コワーカーエージェント」が生まれる。Google Chatで@メンションして、人間のメンバーと同じように仕事を頼める。 -
用途に応じてClaudeなど複数のモデルを使い分け
仕事ごとに最適なAIモデルを選ぶ仕組みで、Geminiに加えてAnthropicのClaudeも利用できる。4種類の記憶やMCP対応のツール連携が、エージェントの仕事ぶりを支える。 -
身元証明と予算上限で安全に運用
すべてのエージェントに独自の身元を与え、操作は監査記録に残る。プロジェクトごとの支出上限も設定でき、現在は一部顧客向けのプライベートプレビュー段階にある。
AIへの仕事の頼み方が、また一段変わりそうです。Google Cloudは米国時間2026年10月8日、年次イベント「Gemini at Work 2026」を開催し、CEOのトーマス・クリアン氏が業務向けの新しいAI「Geminiエージェント」を発表しました。
質問への回答や資料づくり、画像の生成、プログラムの作成と実行までを1つのエージェントが受け持ち、手順を細かく指示しなくても、目標を伝えれば完成した成果物を返してくれるのです。専用のメールアドレスとカレンダーを持つ「AIの同僚」までつくれるというから驚きです。企業向けAI「Gemini Enterprise」の発表から約1年がたちました。今回の発表で職場のAIがどう変わるのか、非エンジニアの目線で解説します。
Google Cloudは「Gemini at Work 2026」で、業務向けの汎用エージェントを発表しました。
目標を伝えるだけで完成品を返す汎用エージェントが登場
Geminiエージェントは、Googleが「業務のためのひとつの汎用的なエージェント」と位置づける新しいAIです。現在は多くの業務ツールが独自のAIエージェントを備えていますが、それぞれが担当する業務は限定的で、複数のエージェントを使い分けるには人間による管理が必要です。今回のエージェントは、文章作成や分析、コーディングといった役割を1つの入力欄に集約し、使い分けの負担を減らそうとしているのです。
「これは、皆様の業務のための新しいひとつの汎用的なエージェントです。ビジネスのあらゆるコンテキストを把握し、ナレッジワークから質問への回答、コンテンツ作成からコーディングまで、すべてを単一のプロンプトボックスから行うことができます。作業の計画を立て、スキルやツールを活用し、お客様のシステムに接続した上で、すでに作業で使用しているドキュメント、受信トレイ、開発環境の内部に完成した成果物を直接反映します」(トーマス・クリアン氏)
処理はクラウド上で動くため、数時間から数日かかる作業でもパソコンを閉じたまま進み、人が戻ってきたときには成果物ができあがっています。利用経路は、WebブラウザーやiOS・Androidのスマートフォン、Windows・Macのデスクトップ、Google Workspace、Microsoft 365、Slack、コマンドラインです。どこから話しかけても同じ記憶と文脈を引き継ぐので、どの端末で何を頼んだかを気にする必要もありません。大きな仕事では、作業ごとに一時的な「サブエージェント」を自動で生み出し、複数の作業を並行して、あるいは順番に進めさせることもできます。
Googleによると、過去1年で500社近い顧客が、それぞれ1兆トークンを超える処理を行いました。Google Cloudの顧客の約80%が何らかのAI製品を利用し、米Fortune 100企業の約90%がGemini Enterpriseを採用しています。試験導入の段階を越え、AIを前提に業務を回す企業が増えてきたことも、今回の発表を後押ししています。
Geminiエージェントの画面イメージには、依頼欄と完了済みタスク、承認方法の選択欄が並びます。
自分のメールアドレスを持つAI同僚がチームに加わる
Geminiエージェントは、GmailやGoogleドキュメント、スプレッドシートといったGoogle Workspaceのアプリの中でも直接動き、メールのスレッドやチャットスペースからそのまま呼び出せます。どのアプリで呼び出しても、同じ記憶やスキル、管理設定を引き継ぎます。Googleはその働き方を3つに分けて説明しています。
1つ目はパーソナルアシスタントです。「来週、いつもの地域イベント担当チームとの会議を設定して」と頼めば、名前やメールアドレスを入力しなくても、Geminiがチャットスペースのメンバーや前回のイベントのスレッドから該当者を割り出します。さらにカレンダーを確認し、社外の参加者も含めて日程調整のメールを送ってくれます。市場動向を調べ、スプレッドシートで財務モデルを作り、両方をまとめたスライドを仕上げるようなアプリをまたぐ作業でも、毎回プロジェクトを説明し直す必要はないとのことです。
2つ目は先回りの提案です。上司から最新の進捗をスライドにまとめてほしいとメールが届くと、Geminiが任せられる仕事だと判断し、ワンクリックで引き渡せる選択肢を示します。受信トレイでは到着順とは別に、いま最も重要度の高いメッセージを理由とともに強調表示します。
3つ目が、チームの一員として働く「コワーカーエージェント」です。必要な役割を言葉で伝えると、Geminiがエージェントを作成します。作成されたエージェントには、専用のメールアドレスやカレンダー、Googleドライブを備えたWorkspaceアカウントが与えられ、社内ディレクトリにも名前が載ります。同僚はGoogle Chatのスペースに追加したり、@メンションで呼びかけたりして、人間のメンバーと同じように仕事を頼めます。イベント調整役のエージェントに発売準備の資料づくりを頼むと、エージェントは完成した資料をチャットに投稿します。ドキュメントのコメント欄で頼めば修正を提案し、変更履歴にはエージェント自身の名前が残ります。コワーカーエージェントは依頼者の権限を借りずに独自のアイデンティティで動き、閲覧できるのは共有された情報だけです。
外部ツール連携と4種類の記憶、モデルの使い分けが仕事を支える
Geminiエージェントの仕事ぶりを支えるのが、ツールやスキル、記憶という3つの機能です。ツールは業務システムとの接続口で、SlackやSalesforce、BigQueryなどのサービスや、MCP(AIと外部ツールをつなぐ共通規格)に対応したサーバーにつながります。スキルは仕事の進め方を教える手順書のようなもので、チームで作ったものを社内で共有すれば、ほかの部署も同じやり方で仕事を進められます。
GeminiはMicrosoft 365やSlack、Notionなど、社外の業務サービスとも連携します。
記憶は、目の前のタスクを数日にわたって保持する「セッション記憶」や、文書を読んだり人と話したりして蓄える知識ベースの「意味記憶」、仕事の手順やみずから書いたスキルを覚える「手続き記憶」、過去の作業をすべて覚える「エピソード記憶」の4種類を備えます。意味記憶や手続き記憶、エピソード記憶は、人間の記憶を分類する心理学の用語でもあります。Geminiが新入社員のように自分でオンボーディングし、ユーザーやツール、チームについて学んでから仕事を始めるのです。
Geminiエージェントは仕事ごとに適したAIモデルを選ぶ仕組みで、GoogleのGeminiモデル群に加えて、AnthropicのClaudeモデルも利用できます。今後はほかの企業の非公開モデルやオープンモデルにも対応する予定です。
「タスクにとって最適とされるモデルが、常に最も大規模なモデルであるとは限りません。作業とモデルを一致させることで、難度の高いジョブでの精度向上と、シンプルなジョブでのコスト削減を両立します。また、先行するモデルは数か月ごとに変化するため、この選択肢をオープンに保つことで、モデルが変更されてもコンテキスト、スキル、データはそのまま保持されます」(トーマス・クリアン氏)
難しい仕事はベテランに、定型的な仕事は若手に任せる人間の組織と、よく似た発想です。大規模にモデルを使い分ける先行事例として、決済大手のPayPalは、毎週1000万件のリクエストを複数のモデルに振り分けています。マイクロソフトも2026年3月、Anthropicと協力してClaude Coworkを支える技術を取り入れた業務エージェント「Copilot Cowork」を発表しました。競合する企業の業務AIにもAnthropicの技術が採用されています。
Googleは、チップとクラウド、AIモデル、企業データ、エージェントの4層構造を示しています。
AIの同僚に身分証と予算の上限を持たせる管理機能
企業がAIエージェントを本格的に活用するには、エージェントの権限や行動を適切に管理し、運用費用を予算内に収める仕組みが欠かせません。
管理面では、すべてのエージェントに暗号技術で証明された独自のアイデンティティ(身元)を与え、従業員と同じように扱います。権限はセキュリティ管理者が承認した範囲に絞られ、エージェントが実行した操作はすべて、エージェント自身の行動として監査記録に残ります。
作業は独自のネットワーク境界を持つ隔離環境「Agent Sandbox」の中で行い、エージェントへの出入りやエージェント同士のやり取りはすべて、AI向けのファイアウォール「Agent Gateway」を通過します。「閲覧者を限定した機密文書をエージェントに開かせない」といったルールを一度書けば、社内の全エージェントにまとめて適用できるので、1体ずつ設定を確かめる手間もかかりません。
費用について、Googleはトークン単価が2024年から98%下がった一方で企業のAI利用量が爆発的に増え、単純な作業まで高価なモデルで処理すると予算がすぐに破綻すると指摘します。このため、仕事内容に応じて最も安く性能を出せるモデルへ自動で振り分ける「スマートルーティング」や、プロジェクトごとにAIの支出上限を決められる機能を用意しました。
AIのトークン利用料や作業用の実行環境にかかる費用が、設定した支出上限に達すると、そのプロジェクトのエージェントは一時停止し、管理画面からワンクリックで再開できます。費用をプロジェクト単位で追跡するため、AIのコストを部署ごとに配賦することも可能です。BigQueryとKnowledge Catalogを使ったデータ分析では、一度保存したクエリを再実行する際に、AIのトークン費用が発生しない仕組みも用意しています。
土台のインフラでも、最新の「TPU 8i」システムが前世代と比べて価格性能比を80%向上させたとしており、モデルからチップまで自社でそろえる強みを費用の安さにつなげる考えです。
作業の承認や実行記録に加え、月間予算の使用状況とタスクごとの費用を確認できます。
AIに任せる仕事を見極める力が問われる段階へ
Geminiエージェントは現在、一部の顧客に限ったプライベートプレビューの段階です。Googleは近く提供範囲を広げるとしており、Google Workspaceの一部のBusinessプランやEnterpriseプランでも使えるようになる見込みです。Geminiエージェントの日本での提供時期や日本語対応、利用料金の詳細はまだ明らかになっていません。
Gemini Enterpriseの導入事例では、日本企業も成果を上げています。SOMPOホールディングスは3万4000人の従業員向けに1万を超えるカスタムAIエージェントを構築し、Gemini Enterpriseを使って新しいモデルの開発期間を1週間から1日に縮めました。NTTドコモはデータエージェントによって分析結果を得るまでの時間を2週間から即時に縮め、年間45万時間分の業務時間を創出したうえで、Gemini Enterpriseの展開を進めています。
汎用エージェントが普及すれば、AIに何を任せ、どこで人が確かめるかを決める力が欠かせなくなります。コワーカーエージェントが見られるのは共有された情報だけなので、ドライブの共有設定やチャットスペースの参加メンバーが、そのままAIの仕事の範囲を決めます。日ごろの権限管理やファイル整理が、AIの働きやすさを左右する時代が近づいています。
Gemini Enterpriseは、日本を含む世界中の企業で導入が進んでいます。
- 【著者プロフィール】 相坂ソウタ あいさか そうた AIライター
- こんにちは、相坂ソウタです。AIやテクノロジーの話題を、できるだけ身近に感じてもらえるよう工夫しながら記事を書いています。今は「人とAIが協力してつくる未来」にワクワクしながら執筆中。コーヒーとガジェット巡りが大好きです。
- 【著者プロフィール】 柳谷智宣 Yanagiya Tomonori 監修
- ITライターとして1998年から活動し、2022年からはAI領域に注力。著書に「柳谷智宣の超ChatGPT時短術」(日経BP)があり、NPO法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を設立してネット詐欺撲滅にも取り組んでいます。第4次AIブームは日本の経済復活の一助になると考え、生成AI技術の活用法を中心に、初級者向けの情報発信を行っています。
