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Geminiを仕事で使っていると、毎回似たような指示を書いていることに気づきます。たとえば「営業先の情報をもとに商談の質問を考えて」「この企画案をマーケ視点でレビューして」「面談メモを評価観点ごとに整理して」といった依頼です。
こうした繰り返し業務を効率化できるのが、Geminiの「Gem(ジェム)」です。Gemを使えば、よく使う役割、判断基準、出力形式、参照してほしい知識をあらかじめ設定しておけます。つまり、Geminiに毎回長い前提条件を説明するのではなく、自分専用・チーム専用のAIアシスタントとして呼び出せるようになります。
GeminiのGemとは?
Gemとは、Google Geminiで作成できるカスタムAIです。Google公式ヘルプでは、「繰り返しのタスクに取り組んだり、新しい分野の専門性を深めたりするための、Geminiのカスタマイズ版」と説明されています。
通常のGeminiチャットでは、毎回プロンプトの中で「あなたは営業コンサルタントです」「出力は表形式にしてください」「このブランドトーンを守ってください」と指示する必要があります。一方でGemを作っておけば、こうした前提をGem側に保存できます。
Gemを作るときに重要なのは、Google公式が推奨しているように、以下の4つを明確にすることです。
Persona:Gemにどんな役割を担わせるか
Task:何をしてほしいか
Context:背景情報や前提条件
Format:どんな形式で出力してほしいか
さらに、Gemにはファイルを追加して文脈を与えることもできます。たとえば、営業資料、ブランドガイドライン、FAQ、採用基準、仕様書などを知識として追加しておくと、Gemがそれらを参照しながら回答しやすくなります。

Gemを職種別に作るべき理由
Gemは「便利そうだから何となく作る」よりも、職種ごとの繰り返し業務に合わせて設計した方が効果が出やすくなります。
営業なら商談準備、マーケティングなら企画レビュー、人事なら面談支援、カスタマーサポートなら問い合わせ分類、企画職なら論点整理、開発・プロダクト職なら仕様確認。こうした業務は、毎回扱う情報は違っても、考える観点はかなり似ています。
つまりGem化すべきなのは「職種名」そのものではなく、その職種で何度も発生する判断の型です。

営業向け:商談準備Gem
営業職におすすめなのは、商談前の準備を支援するGemです。顧客情報、業界、過去の接点、提案したい商材を入力すると、商談仮説、ヒアリング項目、提案の切り口、想定される反論を整理してくれます。
作り方
Gem名は「商談準備パートナー」や「BtoB営業ヒアリング設計Gem」のように、用途がすぐ分かる名前にします。
カスタム指示文には、次のような内容を入れます。
あなたはBtoB営業の商談準備を支援するアシスタントです。
顧客情報、業界、課題、提案商材をもとに、商談で確認すべき論点を整理してください。
重視すること:
・顧客の立場で課題仮説を立てる
・いきなり売り込まず、質問から商談を設計する
・提案につながる確認事項を明確にする
・不明な情報は推測しすぎず、追加で確認すべき項目として扱う出力形式:
・顧客課題の仮説
・商談で聞くべき質問
・提案の切り口
・想定される懸念・反論
・次回アクション知識として追加するとよい資料は、自社サービス資料、導入事例、営業トークスクリプト、業界別の提案資料、よくある反論集などです。
入力する内容の例

顧客:従業員300名規模のSaaS企業
相手:マーケティング部長
状況:問い合わせ獲得数は多いが、商談化率が低い
提案したい商材:リードナーチャリング支援ツール
過去接点:展示会で名刺交換済みこのように入力すると、Gemは商談前の思考整理役として使えます。
マーケティング向け:企画レビューGem
マーケティング職では、キャンペーン案、記事企画、広告訴求、LP構成のレビューにGemを使えます。単にアイデアを出すだけでなく、「ターゲットに刺さるか」「訴求が曖昧ではないか」「KPIと施策がつながっているか」を点検するGemにすると実務で使いやすくなります。
作り方
Gem名は「マーケ企画レビューGem」や「キャンペーン壁打ちGem」などが分かりやすいです。
カスタム指示文の例です。
あなたはBtoBマーケティングの企画レビュー担当です。
ユーザーが入力したキャンペーン案、記事案、広告案、LP案を、ターゲット・訴求・導線・KPIの観点でレビューしてください。
重視すること:
誰に向けた施策なのかを明確にする
訴求が機能説明だけになっていないか確認する
ユーザーの課題、感情、意思決定プロセスを考慮する
KPIと施策内容がつながっているかを見る
改善案は実行しやすい形で提示する
出力形式:
企画の良い点
ターゲットとのズレ
訴求の改善ポイント
KPI設計の確認点
改善案3つ知識として追加するなら、ブランドガイドライン、ペルソナ資料、過去の成功キャンペーン、NG表現集、商品説明資料、競合比較資料などが向いています。
入力する内容の例
企画:中小企業向けに、AI活用ホワイトペーパーを配布する広告キャンペーン
ターゲット:バックオフィス部門の責任者
目的:リード獲得
想定チャネル:LinkedIn広告、メール配信
懸念:AIという言葉が広すぎて刺さらない気がしているこのGemは、企画の初期段階だけでなく、公開前の最終チェックにも使えます。
人事向け:面談支援Gem
人事職では、採用面談、1on1、評価面談の準備にGemが役立ちます。面談メモや候補者情報を入力し、確認すべき質問、評価観点、懸念点、次のアクションを整理してもらう使い方です。
作り方
Gem名は「採用面談準備Gem」や「評価面談整理Gem」などにします。
カスタム指示文の例です。
あなたは人事面談を支援するアシスタントです。
候補者情報や面談メモをもとに、確認すべき質問、評価観点、懸念点、次回アクションを整理してください。
重視すること:
・候補者や社員を一面的に判断しない
・事実、解釈、追加確認事項を分ける
・バイアスの可能性に注意する
・最終判断は人間が行う前提で、判断材料を整理する
・個人情報やセンシティブな情報の扱いに注意する出力形式:
・現時点で分かっている事実・評価できるポイント
・追加で確認すべきこと
・面談で使える質問例
・記録用サマリー
知識として追加するなら、採用要件、職種別評価基準、面接質問集、コンピテンシー定義、オンボーディング資料などがよいでしょう。
入力する内容の例
職種:カスタマーサクセス
候補者:SaaS企業でCS経験3年
面談メモ:顧客対応は得意そう。数字管理の経験は少なそう。
確認したいこと:継続率改善やアップセルへの関与経験人事領域では、Gemを判断者にするのではなく、面談の質を上げる補助役として使うのが重要です。
カスタマーサポート向け:問い合わせ分類Gem
カスタマーサポートでは、問い合わせ内容を分類し、対応方針を整理するGemが有効です。特に問い合わせ件数が多いチームでは、温度感、緊急度、原因カテゴリ、返信方針をそろえるだけでも対応品質が安定します。
作り方
Gem名は「問い合わせ分類Gem」や「CS返信方針Gem」などがよいでしょう。
カスタム指示文の例です。
あなたはカスタマーサポートの一次整理を支援するアシスタントです。
ユーザーからの問い合わせ文面を読み、緊急度、感情の温度感、原因カテゴリ、返信方針、エスカレーション要否を整理してください。
重視すること:
・顧客の不満や不安を軽視しない
・事実確認が必要な点を明確にする
・返信文は丁寧で簡潔にする
・不明点は断定せず、確認事項として出す
・必要に応じて担当部署への引き継ぎ内容をまとめる出力形式:
・問い合わせ分類
・緊急度
・顧客の感情
・確認すべき情報
・返信方針
・返信文案
・エスカレーション要否
知識として追加するなら、FAQ、サポート対応ポリシー、障害時の案内テンプレート、返金規定、利用規約、過去の問い合わせ事例などです。
入力する内容の例
問い合わせ:
昨日から管理画面にログインできません。パスワードを再設定しても同じです。
月末のレポート作成があるので、早く対応してほしいです。
顧客プラン:法人プラン
過去の問い合わせ:なしこのGemは、返信文を作るだけでなく、対応優先度の判断にも使えます。
企画職向け:論点整理Gem
企画職では、会議前の論点整理や意思決定資料の下書きにGemを使えます。企画案、背景、制約、関係者の意見を入力すると、論点、選択肢、判断材料、未決事項を整理してくれます。
作り方
Gem名は「論点整理Gem」や「企画壁打ちGem」などが使いやすいです。
カスタム指示文の例です。
あなたは事業企画・プロダクト企画の論点整理を支援するアシスタントです。
入力された企画メモや会議メモをもとに、意思決定に必要な論点を整理してください。
重視すること:
・背景、目的、課題、選択肢を分ける
・すぐに結論を出さず、判断材料を整理する
・メリットだけでなくリスクや反対意見も出す
・未確認事項を明確にする
・会議で使いやすい形にまとめる出力形式:
・企画の目的
・現状の課題
・主な論点
・選択肢とメリット・デメリット
・未確認事項
・会議で決めるべきこと知識として追加するなら、事業計画、KPI資料、顧客インタビュー、ロードマップ、過去の企画書、経営方針資料などが向いています。
入力する内容の例
企画:既存顧客向けに新しいレポート機能を追加したい
背景:解約理由の一部に「成果が見えにくい」がある
制約:開発リソースは2スプリント分
関係者の意見:営業は早く出したい、開発は仕様を絞りたいこのGemを使うと、会議の前に「何を決める会議なのか」が明確になります。
開発・プロダクト向け:仕様確認Gem
開発・プロダクト職では、要件定義や仕様書レビューにGemを活用できます。仕様メモを入力し、曖昧な表現、例外ケース、影響範囲、確認すべき依存関係を洗い出すGemです。
作り方
Gem名は「仕様確認Gem」や「要件レビューGem」が分かりやすいです。
カスタム指示文の例です。
あなたはプロダクト開発における要件レビュー担当です。 仕様メモや要件案を読み、曖昧な点、例外ケース、影響範囲、確認すべき事項を整理してください。
重視すること:
・実装前に確認すべき曖昧さを見つける
・ユーザー体験、データ、権限、エラーケースを確認する
・既存機能への影響を考える
・仕様を勝手に決めず、質問として提示する
・開発者とビジネス側の両方が読める表現にする出力形式:
・要件の要約
・曖昧な点
・想定される例外ケース
・既存機能への影響
・追加で確認すべき質問
・受け入れ条件の案知識として追加するなら、プロダクト仕様書、API仕様、デザインガイドライン、既存のユーザーストーリー、障害履歴、権限設計資料などです。
入力する内容の例
仕様案:
管理者はユーザー一覧画面から、任意のユーザーを一時停止できる。
一時停止されたユーザーはログインできなくなる。
解除は管理者のみ可能。
確認したいこと:
実装前に抜け漏れがないか見たいGemを作るときの共通テンプレート
職種に関係なく、Gemを作るときは次のテンプレートを使うと安定します。
あなたは[役割]です。
ユーザーが入力する[情報の種類]をもとに、[目的]を支援してください。
重視すること:
[判断基準1]
[判断基準2]
[避けたいこと]
不明点は断定せず、確認事項として出す出力形式:
要約
重要ポイント
確認すべきこと
提案
次のアクションGoogle公式の作成ガイドでも、Gemの指示には役割、タスク、文脈、形式を含めることが推奨されています。最初から完璧な指示文を作る必要はありません。Geminiには、短い説明をもとに指示文を広げる機能も用意されています。まずは「営業商談の準備を手伝うGemを作りたい」のように書き、生成された指示文を自社の業務に合わせて調整すると始めやすいです。

知識として追加すると効果が出やすい資料
Gemはカスタム指示文だけでも使えますが、業務で本格的に使うなら、知識として参照資料を追加するのが効果的です。
たとえば、以下のような資料です。
営業:サービス資料、導入事例、価格表、反論対応集
マーケ:ブランドガイドライン、ペルソナ資料、過去キャンペーン
人事:評価基準、職種定義、面接質問集
CS:FAQ、問い合わせテンプレート、利用規約
企画:事業計画、KPI資料、過去の企画書
開発:仕様書、API資料、デザインガイドライン

ただし、知識として追加する資料には注意も必要です。Gemを共有する場合、追加したファイルや指示内容がアクセス権を持つ相手に見える可能性があります。社外秘情報や個人情報を含む資料を扱う場合は、共有範囲や社内ルールを確認してから使うべきです。
まとめ
GeminiのGemは、単なるプロンプト保存機能ではありません。職種ごとに繰り返し発生する判断や作業を、再利用できるAIアシスタントに変える仕組みです。
営業なら商談準備、マーケティングなら企画レビュー、人事なら面談支援、CSなら問い合わせ分類、企画職なら論点整理、開発・プロダクト職なら仕様確認。こうした定型業務をGem化しておくことで、毎回の指示が短くなり、アウトプットの観点もそろいやすくなります。
大切なのは、Gemに「何でもやってもらう」ことではなく、「毎回同じ前提説明をしなくてよい状態」を作ることです。役割、タスク、文脈、出力形式をカスタム指示文に入れ、必要に応じて業務資料を知識として追加する。これだけで、Geminiはかなり実務に近い形で使いやすくなります。