Meta「Muse」をGmail・カレンダーにつないで検証!メール仕分けから日程調整まで任せてみた

Meta「Muse」をGmail・カレンダーにつないで検証!メール仕分けから日程調整まで任せてみた

📌 この記事の要約

  • MetaのAIエージェント「Muse」が10月23日に日本上陸
    計画を立てて情報収集やメール処理、予約、買い物などを代行するパーソナルAIエージェント。米国では公開から約40日で1000万ダウンロードを超えた。

  • GmailとGoogleカレンダーをつないで業務タスクを検証
    メールの仕分けと返信下書き、移動時間を考慮した日程調整、企業調査、毎朝8時の定期タスクを無料プランで試し、どこまで実務で使えるかを確かめた。

  • 便利な一方、下書きの内容確認は必須
    返信の下書きには、本人が決めていない「お引き受け可能です」という約束まで含まれていた。送信前の確認と、重要な判断は自分で行う姿勢が欠かせない。

  • 接続前にAI学習とデータの扱いを確認
    やり取りをAIモデルの学習に使わせない設定は「データコントロール」からオフにできる。機密情報を扱う場合は連携範囲や保存内容にも注意したい。

Googleの「Gemini Spark」やOpenAIの「dots」、Anthropicの「Claude Duet」など、大手各社が利用者に代わって仕事を進めるAIエージェントを相次いで発表しています。メールの仕分けや返信の下書き、カレンダーを使った日程調整など、日々の業務で使える機能も充実してきました。生成AIを巡る競争は、質問への回答能力に加え、実際の仕事をどこまで任せられるかにも広がっています。

その競争に加わったMetaは、9月に北米で公開したパーソナルAIエージェント「Muse」を10月23日から日本でも提供開始しました。Museは利用者の指示に応じて計画を立て、情報収集やメールの処理、旅行の予約、買い物など、さまざまな作業を代行できます。さらに、外部サービスと連携したり、アプリを閉じた後も作業を続けたりすることが可能です。今回は無料プランを普段使っているGmailとGoogleカレンダーに接続し、日常業務でどこまで役立つのかを実際に試してみました。

「Museはあなた専用のAIエージェント」と書かれたタイトル画像。Museのキャラクターとカレンダーのイラスト入りMuseは、メッセージを送る感覚で仕事を頼めるパーソナルAIエージェントです。画像はMeta公式サイトより。

公開から約40日で1000万ダウンロードを超えたMuseが日本に登場

Museは、MetaのAI研究組織「Meta Superintelligence Labs」が開発したパーソナルAIエージェントです。米国での提供開始は9月8日で、調査会社Sensor Towerの推計によると、米国でのダウンロード数は公開から約40日で1000万件を超えました。日本ではiOSとAndroidのアプリに加え、ウェブ版の「muse.ai」から利用でき、対象は18歳以上です。

Museは依頼に応じて計画を立て、ブラウザでページを開いたり、フォームに入力したりしながら作業を進めます。時間のかかる仕事はアプリを閉じた後もクラウド上で継続し、承認が必要になった際には通知が届く仕組みです。過去の会話から利用者の好みや大切な情報を覚え、次の提案に生かす機能も備えています。

料金は無料プランと2種類の有料プランが用意されています。日本で表示された価格は「パワー」が月額2799円、「マキシマム」が月額1万3990円で、週あたりのMuseトークン(処理量の単位)の利用枠はそれぞれ5億と30億です。無料プランにも利用上限はありますが、基本機能の多くを試せるため、最初から有料契約をする必要はありません。

Museの頭脳には、Metaが4月に発表したAIモデル「Muse Spark」が使われています。10月12日には高性能な「Muse Wonder」と「Muse Wonder Full」も発表され、Muse Wonderは今後、サブスクリプション利用者から順にアプリへ導入される予定です。

Museのアップグレード画面。パワー月額2,799円とマキシマム月額13,990円のプランが表示されている有料プランは月額2799円と1万3990円。週ごとのトークン利用枠に差があります。画像は筆者撮影

クラウド上の専用環境で動作し、Gmailなどの外部サービスと連携

Museが作業する場所は、利用者ごとに用意されるクラウド上の専用仮想マシン「Muse Secure VM」です。接続先のデータや認証情報は隔離された環境に保存され、独立した「Sentinel(センチネル)」というエージェントが外部への通信を管理します。Metaによると、Muse自身はパスワードや支払い情報を閲覧できず、メール送信や購入など重要な操作の前には利用者の承認を求めます。実行済みの操作と今後の予定を履歴で確認することも可能です。

外部サービスとは「コネクター」を介して連携します。設定画面の「コネクター」からGmailやGoogleカレンダーを選び、Googleアカウントでログインしてアクセス権を許可すれば接続完了です。チャットで接続を頼む方法もあり、難しい設定は必要ありません。メールの閲覧や送信など、許可する操作は接続先ごとに選べますが、重要な操作には別途承認が必要になります。

Metaは日本向けにGmailやGoogleカレンダー、Instagramなどとの連携を案内しています。9月29日には中小企業向けの「Muse for Small Business」も発表され、SlackやNotion、Canva、Zoomなど対応する業務ツールが広がりました。一覧にないサービスとの連携にはカスタムコネクターを作る方法もありますが、接続先の安全性は利用者自身で確かめる必要があります。

Museの設定画面「コネクター」。GmailやGoogleカレンダー、Googleドライブなどの連携先一覧が表示されているGmailやGoogleカレンダーなど、普段使っているサービスとMuseを連携できます。

実際の受信メールを仕分けし、返信の下書きまで作ってみた

今回は、普段から仕事で使っているGmailとGoogleカレンダーを無料プランのMuseに接続し、まずは、日々のメール処理をMuseに任せてみました。仕事で使っているGmailの受信トレイを確認させ、返信が必要なメールの洗い出しから優先順位の判断、返信の下書き作成までまとめて依頼します。

○プロンプト
受信メールをチェックし、返信が必要なものをピックアップしてください。差出人と用件の要約、返信の期限も添えてください。そのうえで、最も急ぐメールに、返信を下書きしてください。


Museは受信メールを読み、Webサイトの見積もり依頼、記者会見への出欠連絡、連載原稿の提出など、対応が必要な用件を期限とともに整理してくれました。最も急ぐ案件として挙げたのは、10月25日までに受注の可否を返す必要がある見積もり依頼です。自分で受信トレイを見返さなくても、優先順位が付いた一覧を作れるのは助かります。

Museが受信メールから返信が必要なものを抽出し、差出人・件名・用件・期限を一覧にした画面返信や対応が必要なメールを抽出し、用件と期限を一覧にまとめました。

さらに、Museは返信文を作り、Gmailの下書きとして保存しました。ただし、その文面には「お引き受け可能です」と書かれ、見積もりを送る約束まで含まれています。確かに、下書きを書いてと頼みましたが、必ず自分の目で確認する必要があります。

Gmailに保存された見積もり依頼への返信下書き。「お引き受け可能です」と書かれている返信の下書きがGmailに保存されました。引き受け条件や納期は送信前の確認が欠かせません。

移動時間を含めた候補日を選び、相手に送るメールも作成

次は、打ち合わせの日程調整を頼んでみました。先方のオフィスに出向くため、打ち合わせの前後に移動時間が必要な想定です。

○プロンプト
来週、1時間の打ち合わせを入れたい。前後1時間の移動時間も考慮に入れて、空いている時間を3つ挙げて、候補日を伝えるメールを書いてください。


Museは僕のGoogleカレンダーを確認し、10月26日10~11時、28日14~15時、30日11~12時の3候補を提示しました。いずれも前後に1時間ずつ移動時間を確保したうえで、相手に候補を伝えるメールも作成しています。カレンダーを見ながら予定の前後を確認し、返信文を書く手間をまとめて減らすことができました。

Museが提示した3つの打ち合わせ候補日と、候補日を伝える日程調整メールの文面移動時間を含めて空き時間を調べ、3つの候補と日程調整メールを用意してくれました。

企業の直近3カ月の動向を調査し、出典URL付きで整理

打ち合わせ前の情報収集にも挑戦しました。相手企業の公式発表とニュースを調べ、会話のきっかけになる話題をまとめてもらいます。

○プロンプト
来週打ち合わせをするGMO天秤AIについて、公式サイトとニュースから直近3カ月の動きを調べてください。新製品や提携、人事などの話題を5つまでにまとめ、それぞれ出典のURLを添えてください。


Museは直近3カ月の動きを5件に整理し、サービスの新機能や名称変更、学生向けの取り組みなどを提示しました。各項目には出典URLも添えられており、情報を確認するページにすぐ移れます。

MuseがGMO天秤AIの直近3カ月の動きを5件に整理し、出典URLを添えた回答画面企業の最近のニュースを5件に整理し、出典URLも提示しました。

ウェブ上の調査は、ページを開いて内容を読み取るため、短い質問への回答より時間がかかります。無料プランでは週ごとに利用量の上限もあるので、調べるテーマを絞って依頼する使い方が向いています。

毎朝8時に予定と要返信メールを確認する定期タスクを登録

最後は、朝の情報確認を自動化してみます。その日の予定と返信すべきメールが一度に分かれば、仕事の優先順位を決めやすくなるはずです。

○プロンプト
毎朝8時に、その日の予定と、受信メールのうち返信が必要なものをまとめて送ってください。予定は時刻順に並べ、打ち合わせの前に確認すべきメールがあれば一緒に示してください。


Museは依頼を受け付け、毎朝8時の定期タスクとして登録してくれました。設定時刻になると自動で処理を開始し、その日の予定と返信が必要なメールをチャットに届けてくれるのです。実際に実行してみると、指示通りにタスクを並べてくれました。さらに、返信が必要なメール2件を抽出し、用件や期限も整理してくれます。翌25日が返信期限のメールについて、下書きが未送信のままだと注意を促してくれたのも便利でした。

Museが記憶した好みや指示は、キャラクター画面から開く「システムファイル」でも確認できます。「IDENTITY.md」「MEMORY.md」などが用意され、必要に応じて内容を編集できる仕組みです。定型作業と組み合わせれば、毎回細かい条件を入力する負担も減らせそうです。

定期タスク「毎朝の予定と要返信メールまとめ」の詳細画面。毎日8:00に実行される設定が表示されているその日の予定と要返信メールを毎朝8時にまとめる定期タスクを登録しました。

業務メールを接続する前に権限とAI学習の設定を確認

Museには、やり取りをMetaのAIモデルの学習に利用させない設定があります。気になる人は「設定」の「データコントロール」からオフにしておきましょう。Metaは会話や仮想マシン内のデータを広告システムには共有しないと説明していますが、機密情報を扱う際は連携範囲や保存される内容にも注意が必要です。Museが覚えた情報は、特定の内容を忘れるよう指示したり、Museをリセットしたりして管理できます。

データコントロール設定で「AIモデルトレーニングをオフにしますか?」と確認するダイアログが表示された画面AIモデルの学習への利用は、データコントロールからオフにできます。

Museには買い物を代行する機能もあります。米国ではStripeの「Link」と連携し、対応する店舗では登録済みの決済方法を利用可能です。Link非対応の店舗では、承認した金額に限定した使い捨て仮想カードで支払う仕組みを採用しています。ただし、Amazonは9月、利用規約に反するとしてMuseによる代理購入をブロックしました。AIに任せられる作業の範囲は、相手のサービスが受け入れるかどうかにも左右されます。

Metaは日本でメルカリやマネーフォワード ME、チケットぴあとの連携を進めると発表しており、高度な音声モードや専用メールアドレス、AIグラスへの対応も予告しています。提供時期は機能によって異なりますが、Museが担える仕事はさらに広がりそうです。

今回の検証では、複数のサービスを横断して情報を集め、次の作業まで進めてくれる便利さを実感できました。一方で、本人が決めていない約束を返信文に盛り込むなど、注意が必要な場面もあります。まずはメールの整理や予定の確認といった定型業務から使い始め、重要な判断は自分で行うのがよさそうです。

相坂ソウタ
【著者プロフィール】 相坂ソウタ あいさか そうた AIライター
こんにちは、相坂ソウタです。AIやテクノロジーの話題を、できるだけ身近に感じてもらえるよう工夫しながら記事を書いています。今は「人とAIが協力してつくる未来」にワクワクしながら執筆中。コーヒーとガジェット巡りが大好きです。
柳谷智宣
【著者プロフィール】 柳谷智宣 Yanagiya Tomonori 監修
ITライターとして1998年から活動し、2022年からはAI領域に注力。著書に「柳谷智宣の超ChatGPT時短術」(日経BP)があり、NPO法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を設立してネット詐欺撲滅にも取り組んでいます。第4次AIブームは日本の経済復活の一助になると考え、生成AI技術の活用法を中心に、初級者向けの情報発信を行っています。