- 【著者プロフィール】 山城 博規 / GMO天秤AI株式会社 やましろ ひろき 筆者
- GMO天秤AI株式会社 代表取締役社長。GMOあおぞらネット銀行でAI・DX推進、金融インフラエンジニアを経て現職。「特定のAIに依存しない」をコンセプトに、複数AIを同時比較できるプラットフォーム「GMO天秤AI」を運営。個人向けのFree・Lite、ビジネス向けのStandard・Bizの4プランを提供するほか、AIリスキリング事業も展開中。
📌 この記事の要約
Microsoft Copilotに「モデル会議」機能が登場
GPTとClaudeという異なるAIモデルに同一クエリを並列実行させ、結果を比較・統合して提示する革新的機能。2026年3月30日にFrontierプログラムで提供開始。
2カラム並列処理で「AIが同時に考えている」体験
画面を左右に分割し、GPT(青)とClaude(紫)のリサーチ進捗をリアルタイム表示。待ち時間の心理的負担を軽減し、各モデルのブランドアイデンティティも維持。
統合サマリーで「何が確実か」を構造化
ジャッジモデルが両レポートを分析し、一致点・相違点をテーブル形式で提示。AIの出力を鵜呑みにせず、意思決定者が判断しやすい設計。
天秤AIの方向性とエンタープライズ市場の潮流が一致
複数モデル比較、リアルタイム並列処理、構造化された比較分析。マルチモデルAIオーケストレーションがエンタープライズ市場で主流になりつつあることを示す強いシグナル。
1. 概要
Microsoft 365 Copilot の「リサーチツール」に搭載された「モデル会議(Model Council)」は、GPTとClaudeという異なるAIモデルに同一のクエリを並行して実行させ、その結果を比較・統合して提示する機能です。2026年3月30日にFrontierプログラムで提供開始されました。
本記事では、この革新的な機能のUI/UXを詳細に分析し、マルチモデルAI活用の最前線をお伝えします。
2. アクセスまでの導線
Step 1: Copilot Chat トップ画面

Copilot Chatトップ画面。左メニューに各種エージェントが並ぶ
左メニューに「リサーチ ツール」「アナリスト」「Word」「Excel」等のエージェントが並ぶ
中央に通常のCopilotチャット入力エリア
設計意図: リサーチツールは通常チャットとは別エージェントとして分離されている。「深い調査」が必要な場面を明確に区別するUX
Step 2: リサーチツール選択

リサーチツール選択後の専用UI。提案トピックカードが表示される
リサーチツールを選択すると、専用UIに切り替わる
ヘッダーに「モデル会議」の表示が出る(右上)
提案トピックカード(プロジェクトの概要、モニタリングレポート、高速調査等)が6枚並ぶ
「コンピューターの使用」「ソース」ボタンでデータソースを指定可能
設計意図: 通常チャットよりも「調査・分析」に特化したインターフェース。カード提案で利用シーンを想起させる
Step 3: モデル選択ドロップダウン

右上の「自動」ボタンから4つのモード選択肢が表示される
右上の「自動」ボタンをクリックすると、4つのモード選択肢が表示されます。
モード | 説明 | 使用モデル |
自動 | GPTが応答し、Claudeが改善 | GPT→Claude(逐次) |
モデル 会議 | GPTとClaudeの詳細な推論 | GPT+Claude(並列) |
GPT | OpenAIの詳細な推論 | GPT単体 |
Claude | Anthropicの詳細な推論 | Claude単体 |
設計意図: ユーザーが「精度」と「コスト/速度」のトレードオフを明示的に選択できる。デフォルトは「自動」(Critique: GPT生成→Claudeレビュー)
Step 4: モデル会議を選択

「モデル 会議」選択後、右上の表示が切り替わる
右上の表示が「モデル 会議」に変わり、選択状態が視覚的にフィードバックされます。
3. クエリ送信からリサーチ完了までのフロー
Phase 1: 明確化質問(Clarification)

クエリ送信後、リサーチツールが追加質問を返す
クエリ送信後、即座にリサーチを開始するのではなく、リサーチツールが追加質問を返します。
「特に注目している業界やユースケースはありますか?」
「主要プレイヤーとして、特定の地域に焦点を当てたいですか?」
「競合分析や市場シェア、技術トレンドなど、重視したい観点はありますか?」
「おまかせでOKです」でスキップも可能
さらにレポート長さの選択UIも表示されます。
「短い」(1〜5ページ)
「長い」(5ページ以上)
UXのポイント: ユーザーの意図を正確に汲み取るための対話的フロー。「おまかせ」の選択肢を用意することで、面倒に感じるユーザーへの配慮。レポート長さの2択はシンプルで迷わない設計です。
Phase 2: 2カラム並列処理

GPT(左)とClaude(右)が同時にリサーチを進行
画面が左右2カラムに分割される
左: GPT(青アイコン)のリサーチ進捗
右: Claude(紫アイコン)のリサーチ進捗
各カラム内にリアルタイムで進捗テキストが表示される
上部に「処理しています。応答は準備が整い次第、下に表示され、その後に要約が続きます。」のステータスメッセージ
UXのポイント: 2つのAIが「同時に考えている」ことが視覚的に伝わる。待ち時間の体感を軽減する効果(何も表示されない待ちよりも圧倒的に良い)。各モデルのブランドカラー(GPT=青/緑、Claude=紫/オレンジ)でアイデンティティを維持しています。
Phase 3: 完成レポート

処理完了後、各モデルのレポートが表示される
処理完了後の表示は以下のとおりです。
1. 2カラムのレポートタイトル表示
GPT側: 英語タイトル(例: "Japan's Water Shortage Risks Amid Record Drought and Recent Rains")
Claude側: 日本語タイトル(例: "本日2026年4月1日、日本列島は低気圧の接近により...")
各レポートに「レポートが完了しました」バッジ
2. レポート本文は折りたたみ式(クリックで展開)

各レポートのタイトルが2カラムで並ぶ
4. 統合サマリー(カバーレター)の構造
モデル会議の最大の特徴は、2つの独立レポートの下に表示される統合サマリー(カバーレター)です。ジャッジモデルが両レポートを分析し、構造化された比較を提示します。
4-1. 総括(Executive Summary)

統合サマリー(カバーレター)の総括セクション
「Having done extensive research, both Claude and GPT models underscore that:...」という形式で、両モデルが一致した主要ファクトを箇条書きで提示します。
4-2. 各モデルの独自貢献(What each model brought to the table)
Claude: 日本語での構造化分析、政府対応のカテゴリ分類、市民向け実用的提言
GPT: 英語での包括的ドキュメント、地域別詳細データ、インタラクティブHTML
4-3. 一致点テーブル(Top Areas of Agreement)

トピックごとにGPTとClaudeの見解を並列比較
Topic | GPT | Claude |
Drought severity | "once-in-30-years" event by JMA | 「30年に一度程度の顕著な少雨」 |
Miyazaki rainfall | 0mm in January 2026 | 1月の降水量が0mm |
テーブル形式で、トピックごとにGPTとClaudeの見解を並列比較しています。
4-4. 相違点テーブル(Top Areas of Disagreement)

各モデルの見解が異なるトピックを明示
Topic | GPT | Claude |
Recovery timeline | weeks to months | 1か月以上 |
Fukuoka desalination | 50,000人/日のデータ記載 | 記載なし |
Sakuma Dam transfer | 記載なし | 41年ぶりの緊急水移送を指摘 |
UXのポイント: 一致点と相違点を明確に分離することで、「何が確実な情報か」「何が解釈の余地がある情報か」が一目で分かります。テーブル形式は比較に最適なフォーマット。各モデルの「得意分野」が浮き彫りになります(GPT=データ網羅性、Claude=構造化・文脈分析)。
5. UI/UXの設計分析
5-1. 情報アーキテクチャ
モデル会議の情報構造は以下のようになっています。
クエリ入力
↓
明確化質問 + レポート長さ選択(対話的リファインメント)
↓
2カラム並列処理(GPT | Claude)← リアルタイムプログレス
↓
完成レポート(GPTレポート | Claudeレポート)← 折りたたみ式
↓
統合サマリー(カバーレター)
├── 総括(両モデル一致のファクト)
├── 各モデルの独自貢献
├── 一致点テーブル
└── 相違点テーブル
5-2. 優れている点
透明性: どのモデルが何を言ったかが完全に可視化されている。ブラックボックス感がない
比較構造: テーブル形式の一致/相違比較は、意思決定者が「何を信じていいか」を判断しやすい
プログレッシブ・ディスクロージャー: 結果を段階的に開示(タイトル→本文→統合分析)し、情報過多を防ぐ
モデル選択の自由度: 4モードの選択肢で、精度とコスト/速度のバランスをユーザーが制御できる
明確化フロー: いきなりリサーチせず、意図を確認する対話ステップが精度向上に寄与
5-3. 改善の余地
処理時間: モデル会議は通常の2.5倍のコストがかかり、処理時間も長い(数分〜)。進捗バーや推定残り時間の表示がない
言語の不統一: GPTが英語、Claudeが日本語で回答する場合がある。統一するオプションがあると良い
レポート展開操作: 折りたたまれたレポート本文の展開が分かりにくい
モバイル対応: 2カラム表示はモバイルでは厳しい可能性がある
5-4. 天秤AIへの示唆
Copilotの設計 | 天秤AIでの応用可能性 |
モデル選択ドロップダウン | 天秤AIの複数モデル比較UIのリファレンス |
2カラム並列処理表示 | リアルタイム比較体験のベンチマーク |
統合サマリー(カバーレター) | ジャッジモデルによる比較分析の自動生成 |
一致/相違テーブル | ファクトチェック結果の構造化表示 |
明確化質問フロー | 調査クエリの精度向上UX |
6. まとめ
Microsoft Copilotの「モデル会議」は、マルチモデルAIオーケストレーションのエンタープライズ実装として注目すべき事例です。特に以下の3点がUI/UXとして秀逸です。
「何が確実か」を構造化して伝える: 一致点/相違点の分離は、AIの出力を「鵜呑みにしない」ための設計
並列処理の可視化: 2つのAIが同時に動いている体験は、単一AIの「待ち」より心理的に優れる
段階的な情報開示: 明確化質問→並列処理→タイトル→本文→統合分析と、情報を段階的に提示
天秤AIの「複数モデル比較」コンセプトと方向性が一致しており、エンタープライズ市場でこの方向性が主流になりつつあることを示す強いシグナルといえるでしょう。
