- 【著者プロフィール】 星川アイナ ほしかわ あいな AIライター
- はじめまして。テクノロジーと文化をテーマに執筆活動を行う27歳のAIライターです。AI技術の可能性に魅せられ、情報技術やデータサイエンスを学びながら、読者の心に響く文章作りを心がけています。休日はコーヒーを飲みながらインディペンデント映画を観ることが趣味で、特に未来をテーマにした作品が好きです。
- 【著者プロフィール】 柳谷智宣 Yanagiya Tomonori 監修
- ITライターとして1998年から活動し、2022年からはAI領域に注力。著書に「柳谷智宣の超ChatGPT時短術」(日経BP)があり、NPO法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を設立してネット詐欺撲滅にも取り組んでいます。第4次AIブームは日本の経済復活の一助になると考え、生成AI技術の活用法を中心に、初級者向けの情報発信を行っています。
メタは米国時間の2026年7月7日、日本時間の8日、画像生成AI「Muse Image」を発表し、Meta AIへの提供を始めました。開発したのは、研究組織のMeta Superintelligence Labs、通称MSLです。メタ全体では以前から画像生成技術を開発してきましたが、Muse ImageはMSLが初めて手掛けた画像生成モデルになります。
Muse Imageの特徴は、入力された指示をそのまま画像に変換するのではなく、まず何を作るべきか考え、必要に応じてWeb検索やコード実行などの道具を使う点です。4月に発表された言語モデル「Muse Spark」と連携し、画像の構成を計画したうえで生成や編集を進めます。
一方、公開されているInstagramの写真を画像生成に使える機能も搭載されました。便利な機能ではありますが、自分の写真が別の利用者によるAI画像の素材になる可能性があり、公開直後からプライバシーや肖像の扱いが議論になっています。

メタの研究組織MSLが初めて開発した画像生成モデル「Muse Image」が公開されました。
- 「考えてから描く」新方式: Muse Imageは指示を受けてすぐ描かず、Web検索やコード実行を使って構成を計画してから画像を生成する
- 提供範囲: 日本ではMeta AIアプリとWeb版meta.aiから無料で利用可能。広告主向けにも数週間以内に展開予定
- 公開Instagram写真の活用機能に懸念: 成人の公開アカウントの投稿を本人への通知なしに画像生成へ利用でき、フェイク画像作成のリスクが指摘されている
- 実力検証: 実データに基づく正確なグラフ作成や、実際に読み取れる二次元コードの生成など、従来の画像生成AIにはなかった精度を確認
Meta AIアプリとWeb版から無料で利用できる
まず、どこで使えて、いくらかかるのかを整理しておきましょう。日本では、Meta AIアプリとWeb版のmeta.aiからMuse Imageを利用できます。
Muse Imageは、米国のInstagramストーリーズで提供される30種類以上のAIエフェクトや、一部の国のWhatsAppにも導入されています。ただし、InstagramストーリーズとWhatsAppの画像生成機能は、日本では現時点で提供されていません。今後はFacebookやMessengerを含め、Meta AIを利用できる各サービスへ順次広げる予定です。
Muse Imageを搭載したMeta AIは無料で利用できます。さらに多くの画像を生成したい利用者向けには、有料サブスクリプションも用意されます。無料で生成できる具体的な枚数や、国やアカウントごとの上限については公表されていません。
ビジネス用途への展開も予定されています。メタは今後数週間以内に、広告主や広告代理店が「Advantage+クリエイティブ」からMuse Imageを利用できるようにします。広告素材の生成や編集、複数パターンの作成などをMetaの広告管理環境から進められるようになる見込みです。
4月に発表されたMuse Spark、今回のMuse Image、そして現在開発中の動画生成モデル「Muse Video」がそろうことで、Meta AIは文章だけでなく、画像や動画の制作まで担うサービスへと広がっていきます。

Muse Imageは多彩なスタイルに対応しています。
画像を出す前に段取りを考えるエージェント型の仕組み
Muse Imageの一番の個性は、指示を受けてすぐに描き始めるのではなく、まず作業の段取りを考えることです。言語モデルのMuse Sparkと連携し、画像の構成を決め、必要な情報や素材を集めてから生成を始めます。
たとえば、最新の出来事や実在の商品を扱う画像では、Web検索を使って情報や参考画像を探します。正確なグラフや実際に読み取れる二次元コードが必要な場合は、コードを書いて実行し、その結果を画像に組み込みます。複数の写真から人物、服、物、背景などを取り出し、1枚の画像にまとめることも可能です。
部屋の写真を渡して、Web上で販売されている実在の商品を使った模様替え案を作らせることもできます。「写真の後ろに写り込んだ人を消して」「旅行の招待状を作って」といった話し言葉の指示にも対応します。画像に文字を入れる能力も重視されており、ハウツー画像やインフォグラフィックなど、文章を含むビジュアルの作成にも対応しています。
さらに、Muse Imageは生成した画像を内部で見直します。小さな間違いなら該当部分だけを修正し、構成が大きくずれていれば最初から生成し直します。事実関係を正確にするため、途中で検索やコード実行に切り替える場合もあります。
メタによると、この自己修正の動作は、開発者が個別の手順として組み込んだものではありません。強化学習の過程で、生成結果を見直して修正したほうが高い評価を得られると学び、自然に現れた動作だと説明しています。推論に使う計算量を増やすほど、計画や道具の利用、自己修正に多くの処理を割き、生成品質が向上することも確認されています。
Meta AIアプリとmeta.aiでMuse Imageが作った画像には、「Content Seal」という見えない透かしが入ります。この信号は、画像を切り抜いたり、圧縮や縮小を行ったり、スクリーンショットを撮ったりしても残る設計です。画像にContent Sealが含まれているか確認する検出ツールも試験提供されています。

自己修正を使ったほうが、使わない場合より好まれています。テキストから画像、単一画像編集、複数画像編集のいずれも56〜57%台の勝率でした。
公開Instagramアカウントの写真を使えることへの懸念
Muse Imageで議論を呼んでいるのが、Meta AIアプリから公開Instagramアカウントを「@メンション」し、そのアカウントが投稿している写真を画像生成に利用できる機能です。
ユーザーネームを指定すると、Meta AIは公開写真を参照し、画像を生成します。友人同士で画像を作る用途には便利ですが、公開アカウントの写真であれば、生成に使われても本人には通知されません。例えば、有名人のアカウントをメンションし、「僕とデートしている写真」と入力すれば、簡単にフェイク画像が作れてしまうのです。
対象となるのは成人の公開アカウントで、非公開アカウントと18歳未満の利用者のアカウントは除外されます。成人の公開アカウントでも、Instagramの設定から、自分の投稿やリールをAI画像生成の素材として利用できないように変更できます。

メンションすることで、相手の写真を使って画像生成できます。ここでは犬の画像を使いました。
初期状態では利用を許可する設定になっているため、公開アカウントを運用している人は一度確認しておいたほうがよいでしょう。Instagramの「設定とアクティビティ」から「シェアと再利用」を開き、投稿やリールをAI機能で利用できるようにする項目をオフにします。アプリのバージョンによって表記や項目の位置が異なる可能性があるため、実際の画面に表示される説明も確認してください。
設定をオフにしても、それ以前に生成された画像が自動的に削除されるわけではありません。Muse Imageには不適切な画像の生成を防ぐ安全対策が組み込まれていますが、技術的に生成できることと、他人の顔や姿を使ってよいことは別の問題です。公開写真を使って画像を生成する際は注意してください。

Instagramの「シェアと再利用」で「投稿」と「リール動画」をオフにすると、MetaのAI機能での再利用を止められます。現在は説明文が英語のまま表示されています。
実際のプロンプトで確かめるMuse Imageの実力
メタが公表した2026年7月5日時点のArenaランキングでは、Muse Imageは人間の好みによる評価で、テキストからの画像生成、単一画像の編集、複数画像の編集の3部門すべてで2位に入りました。ただ、順位だけでは実際の使い勝手までは見えてきません。日本ではMeta AIアプリとWeb版のmeta.aiから試せるので、どんなプロンプトで強みが出るのかを実際に確かめてみました。
まず差が出やすいのが、検索とコード実行を組み合わせた図表の作成です。実在の調査データを指定してグラフを描かせると、数値が正確に反映されます。
観光庁が発表した2026年第1四半期の『訪日外国人消費動向調査』に基づく、国籍・地域別の旅行消費額を棒グラフにしてください。
生成された棒グラフでは、各国の消費額が実際の調査結果に沿った値で描かれました。従来の画像生成では、グラフはそれらしく描くだけで数値が合わないことも多く、検索で実データを取得してコードで正確な図を組み立てる動きは、大きな違いといえます。

検索で取得した実データを、正確な数値のまま棒グラフに反映できます。
同じくコード実行が生きるのが、実際に機能する二次元コードを絵の中に入れる使い方です。スキャンできる二次元コードをイラストの中に自然に収められます。
家電の発表イベントで、来場者が二次元コードをスキャンしている場面をアニメのイラスト風に。二次元コードは実際に(https://tenbin.ai/media)へアクセスできるものにしてください。
生成された二次元コードは、読み取りに必要な3つの角のマークがそろい、スマートフォンで読み取ると指定したサイトに正しく飛びました。単なる模様ではなく、実際に使えるコードを画像に組み込める点は、告知用のポスターやチラシで役立ちます。

飾りではなく、実際に読み取れる二次元コードを絵の中に入れられます。
写真の人物や構図を残しながら、時間帯や天候を大きく変えるシーン変換も試しました。昼間のカフェの写真を用意し、雨が降る夜のシーンへ作り替えるよう指示します。
添付した昼のカフェの写真を、雨が降る夜のカフェに変えてください。人物の顔、服装、姿勢、テーブル、ノートPC、コーヒーカップの位置は元の写真のまま維持してください。窓の外にはネオンが雨に反射している街並みを描き、室内は暖色の照明にしてください。
生成結果では、窓から差し込んでいた昼間の光が、ネオンと室内照明に照らされた雨の夜へ変わりました。単に画像全体を暗くするのではなく、窓についた雨粒や路面に反射する光なども加えられ、元の写真とは異なる場面として組み直されています。その一方で、人物の姿勢やテーブル上の物の配置は維持されました。

昼のカフェ写真を、人物や構図を保ったまま雨の夜のシーンへ変換しました。
続けて、同じ画像に小物だけを追加する部分編集を試します。新しい画像として作り直すのではなく、直前の生成結果を引き継いだまま、テーブルの横に傘を加えるよう指示しました。
二人組のテーブルに、閉じた傘を立てかけてください。左側の女性は赤い傘、右側の女性は青い傘にしてください。他の構図は変更しないでください。
ここで確認したいのは、傘を描けるかどうかだけではありません。人物の顔や服、テーブル上の小物、窓の外の景色など、変更を頼んでいない部分をどこまで保てるかが重要です。Muse Imageでは、最初の画像を土台に会話を続けながら、追加したい要素や直したい部分を指定できます。
今回の結果では、指示通りに傘を追加しながら、人物や周囲の構図はおおむね維持されました。ただし、画像を見比べると、細かな表情や小物の形、背景の光などがわずかに変化する部分もあります。部分編集を繰り返す場合は、修正箇所以外まで変わっていないか確認する必要があります。

生成した画像に傘を追加し、指定していない部分を維持できるか確認しました。
実写のスナップは自然で、背景に入る日本語も比較的崩れにくい印象です。ただ、人物の顔は広告モデルのように整いすぎることがあり、「スマホで友達が撮ったような」「完璧に整いすぎない」といった注文を足すと日常感が出ます。イラストでは水彩や絵本風、雑誌の挿絵のようなテイストに強く、絵の具のかすれや紙の質感まで出しやすい傾向です。

プロンプトを工夫すると、リアリティのある人物写真も描写できます。
画像生成を「一発勝負」から制作工程へ変えた
Muse Imageの技術的な価値は、きれいな画像を生成できることだけではありません。検索で事実や参考画像を補い、コードでグラフや二次元コードを作り、複数の素材を組み合わせ、生成結果を確認して部分修正や再生成まで行います。メタの内部評価では、同じ計算資源で候補画像を増やして選ぶよりも、推論や道具の利用、自己修正に使うほうが品質の向上が続きました。画像生成を一度きりの出力ではなく、計画、制作、確認、修正からなる工程として扱った点が、Muse Imageの大きな進歩です。
しかも、この仕組みは研究デモではなく、Meta AIに組み込まれ、生成、編集、複数素材の合成までを会話形式で利用できます。公開Instagram写真の再利用については、設定や通知、同意の設計をさらに詰める必要があります。それでも技術面では、Muse Imageは画像生成AIの競争軸を「一度の指示で上手に描くこと」から、「目的に合わせて調べ、組み立て、直し、完成させること」へ押し広げたモデルです。

私の写真をアップロードして、ニューヨークを散歩している写真を生成してもらいました。
