- 【著者プロフィール】 星川アイナ ほしかわ あいな AIライター
- はじめまして。テクノロジーと文化をテーマに執筆活動を行う27歳のAIライターです。AI技術の可能性に魅せられ、情報技術やデータサイエンスを学びながら、読者の心に響く文章作りを心がけています。休日はコーヒーを飲みながらインディペンデント映画を観ることが趣味で、特に未来をテーマにした作品が好きです。
- 【著者プロフィール】 柳谷智宣 Yanagiya Tomonori 監修
- ITライターとして1998年から活動し、2022年からはAI領域に注力。著書に「柳谷智宣の超ChatGPT時短術」(日経BP)があり、NPO法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を設立してネット詐欺撲滅にも取り組んでいます。第4次AIブームは日本の経済復活の一助になると考え、生成AI技術の活用法を中心に、初級者向けの情報発信を行っています。
📌 この記事の要約
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AI利用料の高騰が企業の最大級の悩みに
OpenAIのサム・アルトマンCEOは2026年6月、コストへの懸念が企業顧客の苦情で第2位に浮上したと明かした。半年でAI利用コストへの関心が急速に高まっている。 -
Uber・Amazon・Microsoftが相次いで利用制限
Uberは1人あたり月1500ドルの上限を設定、Amazonは利用量ランキングを停止、MicrosoftはClaude CodeからGitHub Copilot CLIへの移行を進めるなど、無自覚な使い過ぎを止める動きが広がっている。 -
リクエストあたりのトークン消費量は1年で倍増
Datadogの調査では、リクエストあたりのトークン使用量が中央値の組織で1年で2倍以上に、ヘビーユーザー企業では4倍に増加した。 -
プロンプトの工夫・モデル選定・可視化が有効な対策
チャットを話題ごとに区切る、条件を最初にまとめて伝える、作業に応じてモデルを使い分ける、コネクタを絞る、使用量を見える化するといった工夫で、個人・組織ともにトークン消費を抑えられる。
OpenAIのサム・アルトマンCEOは2026年6月2日の企業向けイベント「Intelligence at Work」で、コストへの懸念が企業顧客からの苦情の第2位に浮上したと明かしました。「うちの会社は2026年の年間予算を第1四半期で使い切った。もっと効率化できないか」という言い回しが顧客のあいだで流行しているとも、アルトマン氏は語ります。2026年の初めには誰もコストを気にしていなかったのに、状況は半年で変わりました。
やり取りする文章はトークンという単位で数えられ、入力と出力のそれぞれに単価が設定されています。この数え方は、APIを組み込んだ社内システムでも、ブラウザやアプリのチャット画面でも変わりません。会社の請求書を見る立場にない人でも、長いチャットを続けるほど余計なトークンを送り続けているので、節約の考え方を知っておいて損はありません。
今回は、今日から試せるトークン節約術をまとめました。
社員が何も考えずに生成AIを使いまくると想定以上の請求金額になることがあります。
2026年前半に相次いだ企業のAI利用制限
Uberは2026年6月、Claude CodeやCursorといったAIコーディングエージェントについて、従業員1人あたりツールごとに月1500ドルという利用上限を設けていることを明らかにしました。Amazonは社内のトークン消費量ランキングを5月下旬に止め、Microsoftは、WindowsやMicrosoft 365、Teams、Surfaceを担当するExperiences and Devices部門で、社内のClaude Codeライセンスの大半を2026年6月30日までに自社のGitHub Copilot CLIへ切り替える方針を示しました。
いずれも生成AIの無自覚な使い過ぎを止める施策です。この一連の動きは社員のAI使い過ぎで年間予算が数カ月で枯渇、UberやMicrosoftなど米大手が相次いで利用制限に動き出したで詳しく取り上げているので、あわせて読んでみてください。
システム監視サービス大手のDatadogが2026年4月21日に公開したAIエンジニアリングのレポートは、グローバル1000社以上の本番環境データをもとに、リクエストあたりのトークン使用量が中央値の組織で1年で2倍以上へ増え、上位10%のヘビーユーザー企業では4倍に膨らんだと報告しました。3つ以上のモデルを使い分ける組織は70%を超え、6つ以上を併用する組織の割合は1年でほぼ2倍になりました。
1トークンあたりの単価は年々下がっていますが、安くなったぶんだけ長い資料を読ませたり、何度も試行錯誤させたりするようになるため、月々の請求額はかえって増えます。IT分野の調査会社であるGartnerは、この現象をInference Paradox(推論のパラドックス)と呼んでいます。値下げを待っても支払いは減らないので、使う側で量と回数を減らすしかありません。
1リクエストあたりの消費量は1年で2倍以上に増えました。
プロンプトの書き方で送るトークンを減らす
チャット画面のやり取りは、送信のたびに過去の会話をまとめて送り直しています。20往復目の質問には、それまでの19往復分が毎回添えられている計算です。体感では何も変わらないのに、従量課金なら請求額が伸び、定額プランなら利用の上限に早く達してしまいます。
例えば、企画の相談から議事録の整形へ話題が移った時点で新しいチャットを立てれば、この積み上がりがいったん消えます。前の話を引き継ぎたいときは、チャットを閉じる前に「ここまでの決定事項と前提条件を200文字以内でまとめて。次の作業に必要なものだけでいい」と頼みます。返ってきた文章をコピーして新しいチャットの最初のメッセージの冒頭に貼り、その下に次にやってほしいことを書きます。何を決めたのかと、守ってほしい条件さえ渡してあれば話は通じるので、数十往復分の履歴を丸ごと入力する必要はないのです。
Chroma Researchが2025年7月に公開した「Context Rot(コンテキストの劣化)」というレポートは、18のLLMを対象に、入力するコンテキストが長くなるほど同じタスクの成績が落ちることを実証しました。会話履歴を全部入れた約11万3000トークンの入力と、関連する部分だけに絞った約300トークンの入力を比べると、前者では有意な性能低下が見られました。長く詰め込むほど答えが鈍るので、チャットを切る作業は品質を守る作業でもあります。
入力が長くなるほど同じタスクの成績は落ちていきます。
「詳しく分析して」とだけ頼めば、モデルは必要な情報量を自分で判断して長く書きます。そのあとで「要するに?」と聞き直したときには、長い出力と短い出力の両方に料金がかかっています。最初から「決定事項を3件まで、それぞれ80文字以内で。前置きと挨拶は不要」と書いておけば、1回のやり取りで用が足ります。項目数と1件あたりの文字数を指定する書き方は、そのまま社内の定型プロンプトにできます。
また、修正を頼むときは「3段落目だけ直して」と指定すると対応範囲を絞ることができます。全文を出し直させると、直す必要のない部分まで毎回課金されてしまいます。毎回全文を出させた場合と該当箇所だけ直させた場合で、出力量は大きく変わります。
例えば、「新製品の紹介文を書いて」とだけ頼むと、モデルは読む人も長さも自分で決めて書き始めます。出てきた文章を見てから「初心者向けにして」「800文字で」「箇条書きはやめて」と条件を足していくと、そのたびに全文を書き直させることになり、使わなかった原稿の分だけ料金を払っています。誰に読ませるのか、何のために使うのか、どんな形式で何文字必要なのかを最初の1回でまとめて渡せば、この書き直しが起きません。トークンを大きく無駄にするのは、方向が違ったまま進んだ意味のない往復です。
毎回書いている前提条件は、ChatGPTのカスタム指示やClaudeのプロジェクト機能に登録しておきます。指示のばらつきが減るぶん、意図と違う回答が返ってきてやり直す回数も減ります。ただし登録した内容は毎回送られるので、長い自己紹介や使わない条件まで詰め込むと逆効果になります。
ちなみに、英語と比べると日本語のトークン消費量は多くなります。OpenAIのTokenizerで同じ内容の文章を比べると、日本語は300文字で228トークン、英語は875文字で161トークンになりました。文字数では日本語が3分の1程度なのに、トークンでは1.4倍かかっています。英語の資料があるならわざわざ和訳してから渡す必要はありません。何度も使い回す定型の指示文を英語で用意しておくと、送信のたびにトークン数の差が積み重なります。とはいえ、気にしすぎるとかえって業務効率が落ちるので、日本語のほうが燃費が悪いということだけ覚えておくとよいでしょう。
*同じ内容でも日本語は300文字で228トークン、英語は875文字で161トークンでした。*
モデルと添付ファイルの選び方で単価を下げる
要約や翻訳、下書きのような作業には軽量モデルを使いましょう。作業によっては最上位モデルとの品質差がほとんど出ない一方で、単価には数倍の開きがあります。込み入った分析や調査に入るときだけ、推論モデルや高性能モデルへ切り替えるのが効率的です。
上位モデルだと、画面に表示された回答が200トークン程度でも、その裏で1万から3万トークンの思考が動いていることがあります。同じ作業でもチャットボットの5倍から30倍のトークンを使うという分析もあり、Epoch AIによれば推論モデルの出力長は年間およそ5倍のペースで伸びています。日程の調整や短い文面の作成に推論モデルを充てると、見えないところで消費だけが増えます。
天秤AIのように複数のモデルを一画面で使える環境なら、同じ指示を軽いモデルと重いモデルへ同時に投げて、回答を左右に並べて読み比べられます。議事録の要約やメールの下書きのように毎日発生する作業を1つ選び、実際の資料を使って軽いモデルと最上位モデルの答えを見比べてみてください。手直しの量が変わらないなら、その作業は軽いモデルで足ります。答えの抜けが多くて結局書き直すなら、その作業だけ上位モデルに任せます。一度この確認をして「この作業はこのモデル」と決めておけば、毎日の作業でモデル選びに迷う時間もなくなります。
資料は、読ませたいページだけを切り出して渡せばトークン量を大きく節約できます。100ページの資料をそのまま添付すれば、必要な3ページ以外の97ページ分も入力として消費してしまうからです。画像やスクリーンショットも枚数と大きさに応じてトークンに換算されるため、画面全体ではなく必要な範囲だけを切り取って貼ると入力が軽くなります。
GmailやSlack、Googleドライブのような外部サービスをつなぐと、そのサービスで何ができるかを説明する定義が、質問を送る前から会話に読み込まれます。GitHubやSlackなど5つをつないだ構成では、作業を始める前の時点で定義だけに約5万5000トークンを使う場合があると、Anthropicの開発者向け資料には書かれています。つなぐサービスが増えるほど、毎回の入力にこの固定分が上乗せされます。
接続そのものを解除すれば固定分は消えますが、必要になったときにつなぎ直す手間がかかります。Claudeでは入力欄の「+」から「コネクタ」を開くと、つないでいるサービスが一覧で並び、右側のスイッチで1つずつオンとオフを切り替えられます。この切り替えは開いているチャットにだけ適用されるので、接続は残したまま、その会話で使わないサービスだけをオフにできます。
その会話で使わないコネクタは、スイッチでオフにできます。画面はClaudeです。
文章を書くだけのチャットではコネクタをすべてオフにし、資料を横断するチャットでは必要なものだけをオンにすれば、固定分を最小限に抑えられます。会話ごとの切り替えが用意されていない生成AIサービスでは、しばらく触っていない接続を設定画面から外しておくとよいでしょう。
Deep ResearchやResearchと呼ばれる調査モードは、裏側で何十回も検索と読み込みを繰り返すため、通常の質問の何十倍もトークンを消費します。複数の情報源を突き合わせる調べ物だけに使い、答えの見当がついている質問では通常のウェブ検索を使いましょう。
チームで使うならまず使用量を見えるようにする
世界4大会計事務所のひとつであるKPMGの調査では、AIの運用にかかっている費用をリアルタイムで完全に把握できている企業は26%にとどまりました。残りの企業は、どの部署の誰が何にいくら使ったのかを答えられないまま、月末に請求書を受け取っています。使い過ぎている人がいても、総額を見るまで誰も気づけません。
Uberは月ごとの上限を決めるだけでなく、全従業員が自分の利用額をいつでも確認できるダッシュボードを用意しました。上限を超えるときは申請してもらう形にしていますが、上限に達する前から自分の使用量を確認できる点に意味があります。上限だけを通知された人は、上限に近づいてから慌てて使用を控えるか、申請を出すかしかできません。今月いくら使ったのかをいつでも確認できると、使い過ぎている人が自分で気づき、長い履歴を抱えたまま質問を重ねる使い方を見直せます。使用量を各自に見せる仕組みは、上限を決める前に用意しておくべきものです。
Gartnerは、定型的で件数の多い作業に軽量で安価なモデルを割り当て、複雑な検討が必要な場面だけ高性能なモデルへ切り替えるインファレンスティアリング(推論のティアリング)を、有効な戦略として挙げています。要約や下書きは軽いモデル、企画の検討や込み入った調査は高性能モデルという振り分けを一覧にして共有しておけば、入社したばかりの人も迷いません。各自の感覚に任せると、数行の返信メールを作るだけでも最上位のモデルが使われます。
社内システムにAPIを組み込んでいる場合、商品リストや業務マニュアルのように中身が変わらない資料を、問い合わせのたびに先頭で送っていることがあります。この変わらない部分をAI側に覚えさせておき、2回目以降は覚えた内容を呼び出して使うのがプロンプトキャッシュです。
Claudeを開発するAnthropicの場合、キャッシュから読み込む分の単価は通常の入力の10%で済みます。送る内容も回答の質も変えないまま、繰り返し送っていた資料の料金だけが10分の1になります。同じ資料を1日に何百回も読ませているシステムほど、差が大きくなります。
経路検索サービスを提供するナビタイムジャパンは、約100万件のスポット情報を翻訳する作業で、すぐに結果が要らない処理をまとめて流すバッチAPIを使いました。通常のAPIなら約10万円かかる作業を、約5万円で終えています。翌日までに結果が出れば足りる仕事をバッチにまとめるだけで、支払いは半分になるのです。
単価の安いモデルで下書きを作らせても、結果が使えずに高性能モデルでやり直せば、最初から高性能モデルに任せた場合より総額は増えます。100万トークンあたり何円という一覧を眺めているだけでは、このやり直しの分は見えてきません。社内でモデルを比べるときは、単価ではなく、請求書の作成や問い合わせへの返信といった業務1件を、実際に使える品質で終わらせるまでにいくらかかったかを数えます。やり直しにかかった分もその金額に含めれば、単価の高いモデルのほうが安く済む業務が見つかります。
まずは自分がよく使う業務を1つ選び、1週間分の使用量を測ってみてください。長い履歴を抱えたまま質問を重ねた場合と、要点だけを渡して新しいチャットで聞いた場合を比べると、利用コストが下がり、答えの精度まで上がることは珍しくありません。自分の数字で効果が確かめられたら、同じやり方をチームに広げていけばいいでしょう。

