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AIくささを消す — AI生成文を「自分の文章」に変える実践ルール
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筆者 山城 博規 / GMO天秤AI株式会社
GMO天秤AI株式会社 代表取締役社長。GMOあおぞらネット銀行でAI・DX推進、金融インフラエンジニアを経て現職。「特定のAIに依存しない」をコンセプトに、複数AIを同時比較できるプラットフォーム「天秤AI byGMO」を運営。法人版「天秤AI Biz」やAIリスキリング事業も展開中。
AIくささを消す — AI生成文を「自分の文章」に変える実践ルール
AIに文章を書かせると、なんとなく「AIっぽい」と感じることがあります。意味は通るし文法も正しいのに、何かが違う。
AIに書かせた文章を読み返すたびに「ここがAI臭い」と感じたら、その場でスタイルガイドにルールを追加する運用を続けてきました。AIが記事を書く際にスタイルガイドを参照するので、追加したルールは次回以降の出力に反映されます。数十のルールが蓄積された今、実際にスタイルガイドに書いている指示文と、その背景を公開します。
スタイルガイドの全文(AI生成感を出さない)
AIに渡しているスタイルガイドの該当セクションです。
以下のパターンはAI生成感の元凶。全て排除する。
- テンプレ感: 定型的な構成や言い回しを避ける。毎回同じ流れに見えないようにする
- 説明書感: マニュアルのような無機質な解説調にしない。読み物として成立させる
- 「本記事では」「この記事では」の前置き: いきなり本題に入る
- 本文中の自己紹介・属性提示: やったことを書けば立場は伝わる
- 過剰な丁寧さ: 断定すべきところは断定する
- 短文の連打で雰囲気を作らない: 一文にまとめられるならまとめる
- 読者に語りかけない: 主張は筆者の意見や事実として書く
- 同じ論点を畳みかけない: 論点は1つか2つに絞る
- ドラマチックな転換文を入れない: 事実と結論だけ書けば伝わる
- 文章の温度を一定にしない: 文章にサビを作る
- 段落の終わりを毎回きれいに閉じない: 余韻を残す閉じ方を混ぜる
- 構造を本文で宣言しない: 見出しで分かることを本文で重ねない
- 「これにより」を使わない: 人間の日本語にほぼ出現しない表現
- 「近年」「急速に」「注目を集めて」の三点セットを使わない
- 共感の演出を入れない: 「〇〇で悩んでいませんか」はセールスコピー
- 「ぜひ」の乱用を避ける: 1記事に1回以下
これに加えて、記号表現の禁止、過剰な敬語の禁止、抽象語の排除、AI特有の比喩(「羅針盤」「エンジン」「架け橋」等)の禁止なども入れています。
ここからは、特に効果が大きかったルールについて書きます。
前置き文を禁止する
冒頭で「本記事では〇〇について解説します」のような導入を入れない。いきなり本題に入る。
AIに記事を書かせると、ほぼ確実に「本記事では、AI生成文の特徴と、その対策について詳しく解説します。」みたいな書き出しになります。人間も使う表現ですが、AIは高確率でこの書き出しを選ぶので、見た瞬間に「AIっぽい」と感じる読者が増えています。
実はこの記事の執筆中にも「この記事では〜をまとめる」という一文が初稿に入っていて、レビューで消しました。AIに「前置きを入れるな」と指示しているのに、AI自身がルールを破る。そういうものです。
短文の連打と、温度の均一化
一文で書ける内容を意味もなく分割しない。
重要なところも軽い補足も同じテンションで書くとAI臭くなる。文章にサビを作る。
この2つは根っこが同じ問題です。AIは「最も確率の高い次の単語」を選び続けるので、文のリズムも温度も均一になります。
「断定を避ける。両論併記する。丁寧すぎる言い回しを使う。」——AIはこういう文章を平気で出してきます。一見テンポがよく見えますが、全部同じ長さの文が同じテンションで並んでいるだけです。
noteの人気エッセイを50本以上読んで気づいたのは、人間の文章には「一文だけの段落」がよく出てくるということでした。長い説明のあとに、ぽつんと短い感想が一行だけ置かれている。その緩急がAIにはない。
「これにより」は人間の日本語に存在しない
200本以上の記事をリサーチして一番驚いたのがこれです。
「これにより」という表現、日常会話でも文章でもほぼ使いません。でもAIは因果関係を繋ぐときにやたらと使います。試しに自分の過去のメールやSlackを検索してみましたが、一度も使っていませんでした。
同じ理由で「することが可能です」も排除しています。「できます」で済む話を、なぜか回りくどく書くのがAIの癖です。
読者に語りかけない、共感の演出をしない
問いかけ、行動の促しを入れない。主張は筆者の意見や事実として書く。
「〇〇で悩んでいませんか」はセールスコピーの手法。
AI生成のnote記事を30本以上読みましたが、85%が「〇〇で悩んでいませんか」で始まっていました。副業系とChatGPT活用系に至っては100%です。
「ぜひ一度試してみてください。きっと新しい発見があるはずです。」——AIに締めを書かせるとこうなります。「いかがでしたか」「参考になれば幸いです」も同じ系統です。
人間が書いたnoteのエッセイは違います。読者に向けて語りかけるのではなく、自分の思考をそのまま書き進めて、結論を出さずに終わることもある。「まとめ」で閉じる義務なんてないんですよね。
ドラマチック転換文と、自己紹介
「このとき確信した」「ここで気づいた」をAIは本当によく使います。物語の盛り上がりを演出しているつもりなんでしょうが、人間は体験を語るときにわざわざ「確信した」なんて書きません。「Aを試したがBの方がよかった」で十分です。
自己紹介も同じ理由で禁止しました。「自分はAIで記事やSNS投稿を日常的に作っている経営者だ。」——この記事の初稿に実際に入っていた文です。読み返したとき、もうAI臭くてたまらなかった。著者欄を見れば誰が書いたかわかるのに、本文でわざわざ名乗る必要がありません。
抽象語とAI比喩
「本質」「解像度」「最適化」「透明性」「包括的」「再定義」「網羅的」「革新的」「シームレス」——AIが好む単語リストです。一見知的に見えますが、何も言っていない。「解像度を上げる」ではなく「売上の内訳を部門別に分解する」と書けば、読者の頭に具体的な絵が浮かびます。
比喩も同じで、「羅針盤」「土台」「エンジン」「DNA」「車の両輪」「架け橋」「ゲームチェンジャー」は全て禁止にしました。AIが書くnote記事では「AIを右腕に」「24時間365日働く相棒」が頻出します。人間の比喩はもっと雑で具体的です。「目玉が飛び出るほどの額」とか「胃がキリキリする」とか、身体感覚が入っている。
デザインにも出る
AIの癖は文章だけでなくデザインにも出ます。AIにスライドを作らせると、タイトルの下にアクセントラインを引いたり、グラデーション背景を使ったり、5色以上のカラフルなグラフを作ったりします。これらも見つけたら禁止ルールに追加しています。
運用していて思うこと
半年ほどこの運用を続けて、ルールは数十個になりました。この記事を書いている最中にも3つ増えました(「自己紹介禁止」「この記事では禁止」「まず禁止」)。AIに記事を書かせて、自分でレビューして、AI臭いと感じたらルールに追加する。それだけのことですが、ルールが増えるほど出力の質は上がっていきます。
ただ、万人向けのルールではありません。自分の文体と感覚でルールを作る必要があります。AIくささを消すとは、結局のところ「自分の文章とは何か」を言語化する作業なんだと思います。
