📌 この記事の要約
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ゲーム制作を無料チャットとAPIで検証 DeepSeek-V4.1-Flash-1017に、3Dレースゲームとタワーディフェンスゲームの制作を任せました。
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APIでの制作は約28分、費用は0.51ドル 今回の検証では、Claude Codeと組み合わせて41件のテストを通過。無料チャットでは追加指示で不具合を修正しました。
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性能と料金は条件を見て判断 公表ベンチマークでは前版から向上していますが、すべての指標で他社モデルを上回るわけではありません。API料金は時間帯やキャッシュ利用で変わります。
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まずは趣味や学習の題材から 入力内容の保存先にも注意しながら、アイデアを形にする使い方を紹介します。
中国のAI企業『DeepSeek』は2026年10月17日、AIモデル『『DeepSeek-V4.1-Flash』-1017』を公開しました。9月10日に登場した「DeepSeek-V4.1-Flash」の改良版で、公式のWebサイトやアプリ、APIで使われるモデルはすでに新版へ切り替わっています。モデルの重みもMITライセンスのもと、『Hugging Face』と『ModelScope』で配布が始まりました。
AIエージェントに長い作業を任せると、AIが処理するトークン(文章を扱う単位)が増え、費用も時間もかさみます。DeepSeekは今回、ベンチマークの成績を伸ばしながら出力を短くし、作業時間も縮めたと説明しています。新モデルの特徴を、無料のチャットとAPIで実際に試した結果も交えて解説します。
ゲームや3Dモデルをゼロから作る能力が向上
モデル名の末尾にある「1017」は、公開日の10月17日を表しています。位置付けはV4.1-Flashのマイナーアップデートで、APIで指定するモデル名も従来の「deepseek-flash」のままです。旧名の「deepseek-v4-flash」や「deepseek-v4-flash-vision-exp」を指定したリクエストも新モデルが処理し、Flashの料金で課金されます。
DeepSeekは今回の発表に「Wish-Driven Programming Made Real」(願望駆動型プログラミングの実現)というタイトルを付けました。1017は自己フィードバックを用いた強化学習によって、ゲームや3Dモデルなどのプロジェクトを最初から最後まで作り上げる能力を高めたといいます。公開された作例には、故宮の3Dモデルや、Webブラウザーで遊べるレースゲーム、ゲームエンジン『Godot』で再現した『Portal 2』、先史時代から現代までの変遷を3Dで描いた『Valley of Ages』が含まれます。中国語版の発表によると、少ない指示と参考素材だけを与え、ごく短いやり取りで完成させたそうです。
作例の制作には、同社が8月に公開したオープンソースのエージェント実行環境『DeepSeek Harness』が使われました。1017には、同環境や『Tencent』の『CodeBuddy』、『WorkBuddy』に向けた最適化も施されています。
発表ページでは、故宮の3Dモデルやブラウザーで遊べるレースゲームなど、1017が少ない指示から作り上げた作例を紹介しています。
11項目すべてで前版を上回ったベンチマーク結果
DeepSeekが公開したベンチマーク表では、推論やコーディング、エージェント、画像理解にまたがる11項目のすべてで、1017が9月公開のV4.1-Flashを上回りました。比較対象には『Moonshot AI』の『Kimi K3』や『Z.ai』の『GLM-5.3』、『OpenAI』の『GPT-5.6 Sol』、『Anthropic』の『Claude Opus 5』が並んでいます。『Datacurve』が開発したソフトウェア開発ベンチマーク「DeepSWE v1.1」を使ったDeepSeekの評価では、1017が77.0を記録し、比較表に掲載されたClaude Opus 5の74.0を超えました。Automation-Bench v1.0.6やAgents' Last Exam、Apex Bench v1.1でも首位です。
一方、知識と推論を問う「Humanity's Last Exam」(ツールなし)は42.6で、Claude Opus 5の56.3に大きく及びません。画像理解の3項目でもトップには届いておらず、すべての能力で他社モデルを圧倒しているわけではありません。
DeepSeekは今回の更新を、性能とコストの両面で前進した「パレート改善」と呼んでいます。DeepSWEの成績とタスクあたりの費用を並べたグラフでは、1017は1タスクあたり約0.2ドルで77.0に達しました。前版は74.2で約0.5ドルかかっており、他社の高性能モデルには1タスクで2ドルから10ドル超の費用がかかるものもあります。
ベンチマーク表や費用のグラフはDeepSeekが公表した比較結果ですが、第三者の評価機関『Artificial Analysis』でも性能の向上が確認されています。総合指標「Intelligence Index」は9月版の39から45に上昇しました。同機関の比較ページによると、評価全体の出力トークン数は約2億5000万から約2億1000万に減り、1タスクあたりの費用も0.49ドルから0.26ドルへ約47%減少しています。ただし、1017の出力トークン数は同規模のオープンウェイトモデルの中央値である1億4000万より多く、費用対効果はタスクの種類や使い方によって変わります。
DeepSeekが公開したベンチマーク比較表。エージェント系の指標では、他社モデルを上回る項目が目立ちます。
無料チャットとAPIでゲーム制作の実力を検証
まずは手軽に、無料で使えるWebチャット(chat.deepseek.com)で試しました。作例にならい、3Dのレースゲームを1つのHTMLファイルで作るよう依頼してみます。起伏のある周回コースやCPUが操る3台のライバル車、ドリフトとブースト、順位とミニマップの表示、効果音の合成、スマートフォンのタッチ操作まで、条件を細かく指定しています。数分で約1000行のコードが生成され、ファイルに保存してブラウザーで開くと、タイトル画面での難易度選択からカウントダウン、リザルト画面まで一通り動きました。
ただし、細部には粗さが残っていました。スタート地点がゴールラインの直前に置かれていたため、走り出してすぐに1周と数えられ、ベストラップが約3秒と記録されます。ミニマップもコースの大きさと縮尺が合わず、一部しか描かれません。ドリフトも曲がりやすくなるだけで、車体が滑る動きはありませんでした。これらの問題点を伝えて修正を頼むと、すぐに改良版が返ってきて、そのまま遊べる仕上がりになりました。大枠を一度で作り、やり取りを重ねて仕上げていく使い方には十分使えそうです。
無料のDeepSeekチャットで3Dレースゲームの制作を依頼しました。ライバル車やドリフト、ブーストなどの機能も指定しています。
生成されたレースゲームの画面。追加指示で不具合を修正し、レースを楽しめるようになりました。
チャット画面では1回の作業で使ったトークンの量や費用まではわからないため、次はAPIで確認しました。APIは、ソフトウェアからAIを呼び出すための窓口で、使った量に応じて料金がかかります。DeepSeekの開発者向けサイトで2ドルをチャージし、APIキーを発行しました。
呼び出し役には、Anthropicのコーディング支援ツール『Claude Code』を使いました。DeepSeekのAPIはAnthropicのAPIと同じ形式にも対応しており、公式の手順どおりに接続先とAPIキーを設定すれば、Claude CodeからDeepSeekのモデルを呼び出せます。Claude Codeでは、AIが自分でファイルを作り、プログラムを実行して不具合を直しながら作業を進めます。
ここでは、チャットより長い作業を任せてみました。ステージが3つあるタワーディフェンスゲームを複数のファイルに分けて作り、ダメージ計算や敵の移動を確かめるテストがすべて通るまで修正させる課題です。
Claude Code×DeepSeekは約28分で作業を終え、41件のテストはすべて通りました。完成した「TOWER GATE」には、「風渡る草原」「空からの影」といったステージやウェーブの名前まで付いており、空を飛ぶワイバーンはアロータワーとサンダータワーでしか迎撃できないなど、指定した仕様も守られています。ポーズや2倍速、効果音といった頼んでいない機能まで盛り込まれ、最初の指示以降は一切手を加えずに完成しました。
Claude CodeからDeepSeekのAPIを呼び出し、タワーディフェンスゲームの制作とテストを任せました。
完成した「TOWER GATE」。4種類のタワーを設置し、敵の進撃を防ぐゲームが動作しました。
管理画面の記録では、APIの呼び出しは120回、使ったトークンは2292万934トークン、費用は0.51ドルでした。トークン数は大きく見えますが、大半はAIが作業のたびに読み直す過去のやり取りで、割安なキャッシュ料金で処理されています。今回はピーク料金が適用される平日昼の時間帯に実施したため、半額の時間帯なら約0.26ドルで済む計算です。DeepSWEの課題とは規模が違うので単純には比べられませんが、ゲーム1本を丸ごと作らせて約50セントという費用からは、DeepSeekが掲げる安さを実感できます。
DeepSeekのAPI利用状況を確認しました。120回の呼び出しで約2290万トークンを処理し、費用は0.51ドルでした。
低価格を支えるモデル設計と、新たに公開された検索API
1017の土台となるV4.1-Flashは、DeepSeekの新しいアーキテクチャーによるモデル群で最も小さいモデルです。本体のパラメーター数が5520億の専門家混合(MoE)モデルで、画像の理解にも標準で対応します。入力の処理では80億、出力の生成では160億のパラメーターだけを動かす構造を採用し、計算に必要な資源を抑えています。
設計上の大きな特徴は、KVキャッシュ(文章生成中に過去の計算結果を保持するデータ)の削減です。DeepSeekによると、前世代と比べてKVキャッシュに必要なGPUの高帯域メモリー(HBM)は4分の1、SSDの保存容量は8分の1で済みます。メモリーの負担が減れば、同じ計算資源で処理できる量を増やせるため、AIサービスの運用コストを抑えられます。なお、KVキャッシュの圧縮は9月に公開されたV4.1-Flashで実現した技術です。
APIの料金は100万トークンあたり入力0.3ドル、出力1.2ドルで、過去の入力を再利用できたトークンには50分の1の0.006ドルというキャッシュ割引が適用されます。これらはピーク時間帯の料金で、平日の日本時間10時から13時と15時から19時以外は半額になります。1017への更新でトークン単価は変更されていません。
あわせて、自社開発の検索エンジンを使う『Search API』と『Fetch API』も一般公開されました。Search APIは検索結果を構造化したデータで返し、Fetch APIは指定したWebページの内容を取り出します。この検索エンジンは1日に数億件のリクエストを処理し、低品質なAI生成コンテンツなどを除外する仕組みも備えるといいます。料金はどちらも成功したリクエスト1000件あたり0.75ドルです。DeepSeek HarnessやClaude Code、CodexからDeepSeek APIのサーバー側機能として呼び出すSearch/Fetchの利用料は現在無料ですが、日本時間2026年11月1日1時から課金されます。なお、検索結果の要約などに使うモデルのトークン料金は別途必要です。
V4.1-Flashでは、1トークンあたりのKVキャッシュが前世代のV4-Flashの3514バイトから890バイトへ減少しています。
まずは趣味の開発で実力を確かめてみよう
今回の検証では、無料のチャットで遊べるレースゲームの土台が数分で完成し、APIではタワーディフェンスゲーム1本を約50セントで作り上げました。性能が上がってもトークン単価は据え置かれており、AIエージェントに長い作業を任せるハードルは大きく下がっています。
なお、公式のWebチャットやアプリ、APIに入力した内容はDeepSeekのサーバーに送られ、同社のプライバシーポリシーによると中国国内で保存されます。いきなりビジネスで使うのに抵抗があるなら、まずは個人の趣味や学習など、入力する内容を気にせずに済む題材から使ってみるのがおすすめです。
趣味の記録を付けるWebアプリや、写真やファイルを整理する小さなツール、自分専用のホームページなど、思い付いたアイデアを形にしてもらう使い方が手軽です。Claude Codeと組み合わせれば、AIエージェントがファイルを作り、テストを直していく様子を眺めるのも楽しめます。APIなら2ドルのチャージでも今回のような規模の作業を数回任せられるので、うまくいかなくても気軽にやり直せます。
「こんなものがあったら便利なのに」という願望を伝え、AIがどこまで形にしてくれるのかを見届けると、DeepSeekが掲げる「願望駆動型プログラミング」を体感できるはずです。週末のちょっとした時間に、DeepSeekとのものづくりを試してみてはいかがでしょうか。
DeepSeek新モデルのゲーム制作検証とAPI利用結果のまとめ
- 【著者プロフィール】 星川アイナ ほしかわ あいな AIライター
- はじめまして。テクノロジーと文化をテーマに執筆活動を行う27歳のAIライターです。AI技術の可能性に魅せられ、情報技術やデータサイエンスを学びながら、読者の心に響く文章作りを心がけています。休日はコーヒーを飲みながらインディペンデント映画を観ることが趣味で、特に未来をテーマにした作品が好きです。
- 【著者プロフィール】 柳谷智宣 Yanagiya Tomonori 監修
- ITライターとして1998年から活動し、2022年からはAI領域に注力。著書に「柳谷智宣の超ChatGPT時短術」(日経BP)があり、NPO法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を設立してネット詐欺撲滅にも取り組んでいます。第4次AIブームは日本の経済復活の一助になると考え、生成AI技術の活用法を中心に、初級者向けの情報発信を行っています。
