📌 この記事の要約
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News AIパイロットの参加媒体が世界で400超に
2025年12月に始まったGoogleの有償ライセンスプログラムに、AxiosやCNN、The Financial Timesのほか米国の地方媒体も加わった。ただし支払額や契約条件、全リストは公表されていない。 -
GoogleとMicrosoftで異なる契約の形
Googleは提携先を絞った個別契約が中心。MicrosoftのPublisher Content Marketplaceは、パブリッシャー自身が条件を決める市場型の仕組みを掲げる。 -
AI検索はリンクを強化、送客効果には異論も
AI ModeとAI Overviewsでリンクを目立たせる更新を公表。一方、Pew Research Centerの調査ではAI要約が出た場合の通常リンクのクリックは8%にとどまり、Googleは反論している。 -
オプトアウト設定の新設と日本への影響
Search Consoleで、AI検索への掲載可否を通常検索とは切り離して選べるようになった。日本の媒体の参加は不明で、公正取引委員会も調査を進めている。
2026年10月15日(米国時間)、Googleは公式ブログで、ニュース媒体と進める「News AIパイロットプログラム」の参加媒体が世界で400を超えたと発表しました。2025年12月に始まった有償のライセンスプログラムです。今回は国際的な大手から米国の地方媒体まで、参加の裾野が広がっています。同じ日には、AI ModeとAI Overviewsでウェブサイトへのリンクを目立たせる更新も公表されました。AI検索の普及で記事が読まれにくくなるという報道機関の懸念に、Googleは対価と送客の両面から応えようとしています。本稿では、その仕組みや規制当局の動き、日本への影響を解説します。
GoogleはNews AIパイロットプログラムの参加媒体が世界で400を超えたと発表しました。
400超の媒体が参加するNews AIパイロットの仕組み
プログラムが始まったのは2025年12月10日です。Google検索のプロダクト担当副社長Robby Stein氏と、グローバルニュースパートナーシップ担当副社長Jaffer Zaidi氏が連名で発表しました。当初の参加媒体は、ドイツのDer SpiegelやスペインのEl País、ブラジルのFolha de S. Paulo、アルゼンチンのInfobae、インドネシアのKompas、英国のThe Guardian、インドのThe Times of India、米国のThe Washington ExaminerとThe Washington Postなどでした。
今回新たに示された提携先は、AxiosやCNN、The Financial Times、Forbesといった世界的な媒体と、Post and CourierやTexas Tribune、Oil City News、Shaw Mediaといった米国の地方媒体です。
参加媒体は拡張コンテンツを提供し、その提供と利用の対価をGoogleから受け取ります。Googleは受け取ったコンテンツを、新しいAI機能の開発に使います。機能の例は2つです。1つは、Google Newsの媒体ページに「Story Previews」として表示される詳細な記事概要です。生成AIが作成した概要を読めば、リンクをクリックする前に記事の文脈をつかめます。もう1つは、好みに合わせて内容を調整できる音声ブリーフィングです。どちらも出典を明示し、元記事への直接リンクを付けるとしています。
一方で、支払額や契約条件、400媒体の全リスト、対象国は公表されていません。Google広報担当のBrianna Puccini Duff氏によると、このパイロットはAIの回答への貢献度に応じて支払う方式ではないといいます。公式ブログに日本の媒体名は出てきません。なお、APやEstadão、Antara、Yonhapとの提携は、Geminiアプリにリアルタイム情報を届けるための別の枠組みです。
The Washington PostのGoogle Newsページに表示された「Story Previews」です。生成AIが最近の記事の概要をまとめています。
GoogleとMicrosoftで異なるAI向けコンテンツの有償契約
Googleは「AI製品を改善するためのパートナーシップ」という公式ページで、コンテンツに対する基本的な考え方を示しています。モデルの開発には主に、ウェブ上で公開されクロールできるデータを使います。同社は、これを変革的なフェアユースとみなす立場です。そのうえで提携の対象として、非公開やオフラインのデータセット、拡張メタデータ、検証用のリアルタイムな構造化情報などの「提供」を挙げています。非公開コンテンツの提供に対価を払う試験的なプログラムにも言及があります。
2025年12月のブログでも、拡張表示権やAPIを通じたコンテンツの提供に対価を払っていると説明していました。ここ数年で、50カ国超の3000以上の媒体やプラットフォーム、コンテンツ提供者と提携したとしています。News AIパイロットは、コンテンツの提供や利用権に対価を払う方式を、Google Newsの新しいAI機能に活用したものです。さらにGoogleは2026年6月、生成AI機能を含むGoogle検索で報道コンテンツを表示する対価を、欧州の5500超の媒体に払っていると公表しました。9月には、AI OverviewsやAI Mode、Geminiの回答への貢献度に応じて支払う別の試験プログラムの存在も報じられています。Googleの支払いの仕組みは1つではありません。
比較対象として興味深いのが、Microsoftが2026年2月3日に発表した「Publisher Content Marketplace(PCM)」です。パブリッシャーがライセンスと利用の条件を自ら定め、AI事業者は回答の根拠付けといった特定の用途に合わせてライセンスを受けます。パブリッシャーには利用状況に基づくレポートが返され、提供した価値に応じて対価が支払われます。参加は任意です。PCMは、APやBusiness Insider、Condé Nast、Hearst Magazines、People Inc、USA TODAY Co.、Vox Mediaなどと共同で設計されました。Microsoft Copilotでの検証を経て、Yahooなど需要側の事業者の参加も始まりました。
Googleが提携先を絞って個別に契約し、条件も明かしていないのに対し、Microsoftはパブリッシャー自身が条件を決める市場型の仕組みを掲げています。対価の出し方にも、各社の戦略の違いが表れています。
MicrosoftのPublisher Content Marketplaceは、パブリッシャーが条件を決めてAI事業者にコンテンツをライセンスする仕組みです。
AI検索のリンク強化で問われる報道機関への送客効果
AI検索の更新を公表したのは、プロダクトマネジメント担当副社長のHema Budaraju氏です。更新では、回答文中のインラインリンクを増やし、回答の上部に出しやすくします。公式サイトなどを回答冒頭の専用欄に理由付きで示す表示も、テストの対象です。時事記事のカルーセルは対象の地域と言語を広げ、一部の回答の末尾に出る関連記事リンクにはサムネイルを付けます。AI Modeの動画結果では、クリエイターや媒体の名前から検索プロフィールへ移動できる仕組みも試しています。読者が好みの媒体を選べる「Preferred Sources」の利用者は、年初から7倍超に増えたそうです。
5月にはPreferred SourcesがAI OverviewsとAI Modeにも導入されました。Googleの説明では、8月時点で選ばれたソースは60万を超え、ユーザーが自分で選んだソースはクリックされる確率が2倍になります。AI検索そのものの規模も大きく、AI Overviewsの月間アクティブユーザーは25億人超、AI Modeの月間ユーザーは10億人超です。
ただし、リンクが実際のクリックにつながっているかは見方が分かれます。米国の調査機関Pew Research Centerは、2025年3月の米国成人900人の閲覧データを分析しました。AI要約が表示された検索ページへの訪問のうち、通常の検索結果のリンクがクリックされたのは8%で、要約が表示されなかった場合の15%を大きく下回りました。要約内のリンクがクリックされたのは1%にとどまります。一方、検索部門を率いるLiz Reid氏は2025年8月のブログで、流入の急減を示す外部の報告は不正確だと反論しました。自然検索からのクリック総数は前年比でおおむね横ばいで、ユーザーがすぐに検索結果へ戻らない質の高いクリックはわずかに増えたといいます。この主張を裏付ける具体的な数値は示していません。
Search Consoleでは、生成AI機能での表示回数などを確認できるレポートの提供が始まりました。各サイトは、自社のページがAI検索にどれだけ表示されているかを確かめられます。
インドの祭礼「ドゥルガー・プージャー」のニュースを検索した例です。AI Overviewsの要約の下に、関連する時事記事がカルーセルで並びます。
規制当局の要求を受けて世界に広がったAI検索のオプトアウト
Googleがこうした手を打つ背景として、各国当局からの圧力も見逃せません。欧州委員会は2025年12月9日、Googleに対する正式な独占禁止法調査を始めると発表しました。調べるのは、AI OverviewsとAI Modeによるパブリッシャーのコンテンツの使い方です。適切な対価を払っているか、パブリッシャーがGoogle検索から外れずに利用を拒めるかが焦点になります。News AIパイロットの発表は、その翌日でした。
英国の競争・市場庁(CMA)は2025年10月10日、英国の検索の90%超を占めるGoogleの検索サービスを戦略的市場地位に指定しました。AI OverviewsとAI Modeも指定の対象に含まれています。2026年6月3日には、パブリッシャーが生成AIでのコンテンツ利用を実効的に管理できる手段や、利用状況を把握できる指標の提供、リンクによる明確な出典表示をGoogleに義務付けました。意見募集を経て、AIモデルのファインチューニングへの利用を拒否できることも要件に加わりました。実施期限は9カ月で、最初の1年は6カ月ごとに順守状況の報告を求めます。
Googleは同日、Search Consoleに新しい設定を設けると発表しました。AI OverviewsやAI Mode、DiscoverのAI Overviewsにサイトを掲載するかどうかを選べます。オプトアウトしたサイトは、これらの機能からトラフィックや表示回数を得られなくなります。ただし、Googleはこの設定を通常の検索結果のランキングには使わないとしました。英国の一部サイトで試験を始め、8月31日には全世界のサイトへの展開を終えました。なお、この設定はAIの学習には影響しません。学習を制限したい場合は、従来の「Google-Extended」を使います。
これまでは、AI検索への利用を拒むと通常の検索結果からも消えるおそれがありました。今回、両者はようやく切り離されました。報道機関は、AI検索に残って露出やリンクを得るか、抜けてAI経由の流入を手放すかを選べます。News AIパイロットはこの設定とは別の仕組みで、参加媒体が提供する拡張コンテンツとその利用に、Googleが対価を払う契約です。
Search Consoleの設定画面から、AI OverviewsやAI Modeへの掲載を拒否できるようになりました。
日本の報道機関と企業が次に注視すべき判断材料
日本新聞協会は2026年4月20日に「AI検索サービスに関する声明」を出しました。AI検索への利用を拒むと通常の検索結果からも外れる仕組みについて、独占禁止法上の優越的な地位の濫用が疑われると訴え、日本での早期改善を求めていました。日本のサイトも、すでにSearch Consoleの新しい設定を使えます。ただし、対価を払うNews AIパイロットに日本の媒体が加わっているかは明らかになっていません。
公正取引委員会は2025年12月、ニュースコンテンツ配信分野のフォローアップ調査を始めました。1つのクローラーで通常検索とAI検索のデータを集める行為の影響も、確認対象に挙げています。2026年7月には、新聞協会や日本雑誌協会、日本民間放送連盟の加盟社約370社と消費者2000人を対象に、アンケートを始めました。調査対象の事業者としてGoogleやLINEヤフー、Microsoft、OpenAI、Perplexity AI、Anthropicを想定していますが、報告書の公表時期は未定です。
Search Consoleのオプトアウト設定と生成AI機能のレポートは、報道機関に限らず、オウンドメディアを持つすべての企業に関わります。AI検索への掲載を続けるかどうかを、表示回数などのデータを見ながら判断する時期に来ているといえるでしょう。
- 【著者プロフィール】 星川アイナ ほしかわ あいな AIライター
- はじめまして。テクノロジーと文化をテーマに執筆活動を行う27歳のAIライターです。AI技術の可能性に魅せられ、情報技術やデータサイエンスを学びながら、読者の心に響く文章作りを心がけています。休日はコーヒーを飲みながらインディペンデント映画を観ることが趣味で、特に未来をテーマにした作品が好きです。
- 【著者プロフィール】 柳谷智宣 Yanagiya Tomonori 監修
- ITライターとして1998年から活動し、2022年からはAI領域に注力。著書に「柳谷智宣の超ChatGPT時短術」(日経BP)があり、NPO法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を設立してネット詐欺撲滅にも取り組んでいます。第4次AIブームは日本の経済復活の一助になると考え、生成AI技術の活用法を中心に、初級者向けの情報発信を行っています。
