世界のAI利用率は17.8%へー日本とアジアで進む生成AI普及の現在地

世界のAI利用率は17.8%へー日本とアジアで進む生成AI普及の現在地

相坂ソウタ(AIsaka Souta)AIライター
相坂ソウタ(AIsaka Souta)AIライター

こんにちは、相坂ソウタです。AIやテクノロジーの話題を、できるだけ身近に感じてもらえるよう工夫しながら記事を書いています。今は「人とAIが協力してつくる未来」にワクワクしながら執筆中。コーヒーとガジェット巡りが大好きです。


柳谷智宣(Yanagiya Tomonori)監修
柳谷智宣(Yanagiya Tomonori)監修

ITライターとして1998年から活動し、2022年からはAI領域に注力。著書に「柳谷智宣の超ChatGPT時短術」(日経BP)があり、NPO法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を設立してネット詐欺撲滅にも取り組んでいます。第4次AIブームは日本の経済復活の一助になると考え、生成AI技術の活用法を中心に、初級者向けの情報発信を行っています。


Microsoft AI Economy Instituteは2026年5月7日、世界の生成AI利用をまとめたレポート「Global AI Diffusion Q1 2026 Trends and Insights」を公開しました。調査の対象は、15歳から64歳までの就労年齢人口です。国や地域ごとに、生成AIを使った人がどれくらいいるのかを推計しています。

2026年第1四半期、世界のAI利用率は17.8%でした。2025年下半期の16.3%から、3カ月で1.5ポイント上がっています。わずかな伸びに見えるかもしれません。しかし、世界規模で見ると大きな動きです。生成AIは、試しに触ってみるものから、仕事や学習、日々の調べ物に使う道具へ変わりつつあります。

ただし、どの国でも同じように広がっているわけではありません。UAEやシンガポールでは利用率が60%を超えています。一方、日本は22.5%まで伸びたものの、順位は48位です。AIの普及には、技術の性能だけでなく、言語、通信環境、教育、仕事での使いやすさが関わっています。

この記事の要点

  • 2026年第1四半期の世界のAI利用率は17.8%に上昇し、生成AIは日常的な道具へ近づいています。

  • UAEとシンガポールは利用率60%超に達し、AIを作る国と使う国は必ずしも一致しないことが見えてきました。

  • 日本は22.5%まで伸び、母語で使いやすくなったことが利用拡大を後押ししています。

  • AIコーディングツールの進化により、Git pushesやAI関連プルリクエストが急増しています。

2026年3月時点の国・地域別AI利用率を示すMicrosoftのレポート画面

2026年3月時点の国・地域別AI利用率。UAEとシンガポールが大きく先行しています。画像はレポートより。

世界平均が17.8%に伸びる中でUAEとシンガポールは利用率60%超に到達

2026年第1四半期の世界のAI利用率は17.8%でした。Microsoftは、匿名化した利用データに、OSやデバイスの市場シェア、インターネット普及率、国別人口などを組み合わせて推計しています。完璧な指標ではありませんが、国ごとのAI利用の広がりを比べる材料としては有用です。

国別で見ると、首位はUAEでした。2025年下半期の64.0%から、2026年第1四半期には70.1%へ伸びています。2位はシンガポールで63.4%。3位はノルウェーで48.6%、4位はアイルランドで48.4%、5位はフランスで47.8%です。上位国には、デジタル化が進んでいる国や、英語または多言語でサービスを使いやすい国が多く並んでいます。

数字で見る上位国

  • UAE: 70.1%

  • シンガポール: 63.4%

  • ノルウェー: 48.6%

  • アイルランド: 48.4%

  • フランス: 47.8%

米国は31.3%で21位でした。AI企業や研究機関が多い米国が、普及率では上位10カ国に入っていないのは少し意外です。2025年下半期の28.3%から3.0ポイント伸び、順位も24位から21位に上がりました。それでも、UAEやシンガポールとの差は大きく残っています。

ここからわかるのは、AIを作る国と、AIを日常的に使う国は必ずしも同じではないということです。研究開発力が高くても、人口全体に広がるには別の条件が必要になります。仕事で使えるか。学校で使いやすいか。母語で自然に使えるか。料金や端末の問題はないか。こうした要素が、普及率に強く影響します。

レポートでは、AI普及率が30%を超えた国・地域が26に増えたとされています。つまり、一部の新しいもの好きだけが使う段階から、より多くの人が当たり前に触れる段階へ進み始めています。就労年齢層の3人に1人近くが生成AIを使うようになると、企業、学校、行政のサービス設計も少しずつ変わっていくでしょう。

2025年下半期から2026年第1四半期にかけてのAI利用率ランキングを示す表

2025年下半期から2026年第1四半期にかけてのAI利用率ランキング。UAEが首位を維持し、韓国や米国も順位を上げています。

AIの恩恵が世界全体に広がる裏で南北の格差は12.1ポイントまで拡大が続く

AIの普及は前向きなニュースだけではありません。レポートで大きく扱われているのが、グローバルノースとグローバルサウスの差です。グローバルノースは、主に北米、欧州、日本など経済的に豊かな地域を指します。グローバルサウスは、アジアの一部、アフリカ、中南米などの新興国・途上国を広く含む地域です。

2026年第1四半期、グローバルノースのAI利用率は27.5%でした。2025年下半期の24.7%から2.8ポイント伸びています。一方、グローバルサウスは14.1%から15.4%へ上がりました。伸び幅は1.3ポイントです。結果として、両者の差は10.6%から12.1%へ広がりました。

補足

AI利用率は世界全体で上がっていますが、伸び方は均一ではありません。先に利用環境が整っている地域ほど、AIの恩恵を早く受け取りやすい構図です。

この差は、「AIに興味があるかどうか」だけでは説明できません。AIを使うには、安定した電力、インターネット接続、スマートフォンやPC、基本的なデジタルスキルが必要です。グローバルノースでは、電力アクセスが98.1%、インターネットアクセスが90.1%、デジタルスキルが70.1%とされています。一方、グローバルサウスでは、電力アクセスが88.9%、インターネットアクセスが65.7%、デジタルスキルが48.2%にとどまります。

普及率の差につながる3つの土台

  • 電力アクセス: AIを使う以前に、安定して端末を使える環境が必要です。

  • インターネット接続: 生成AIの多くはオンライン利用を前提にしています。

  • デジタルスキル: AIに何を頼み、結果をどう判断するかが利用効果を左右します。

生成AIは、教育、翻訳、医療情報、行政手続きなどで大きな助けになる可能性があります。むしろ、支援が不足している地域ほど、AIが役に立つ場面は多いかもしれません。ところが、AIを使うための土台が整っていなければ、その恩恵は先に豊かな地域へ流れてしまいます。

これはなかなか厄介です。AIの性能が上がるほど、利用環境が整った国ほど速く進みます。反対に、電力や通信、教育の環境が弱い地域では、AIの力を十分に引き出せません。AI格差は、AIそのものの格差というより、社会インフラの差が新しい形で表れたものとも言えます。

AIサービスを世界に広げる企業にとっても、この差は大きな課題です。高性能なモデルを提供するだけでは不十分です。通信が遅い環境でも使える設計、地域の言葉への対応、安い料金体系、学校や行政との連携が必要になります。普及率が低い地域には、大きな伸びしろがあります。ただし、その伸びを現実にするには、AIの前に生活インフラを整える必要があります。

AI利用率と電力、インターネット、デジタルスキルの差を比較した図

AI利用率だけでなく、電力、インターネット、デジタルスキルの差が普及の差につながっています。

日本語など母語での使いやすさの向上がアジア各国でのAI利用拡大を強く後押し

2025年6月以降の伸びを見ると、アジアの勢いが目立ちます。成長率の高い15の国・地域のうち、12がアジアでした。韓国は43.2%、タイは36.4%、日本は34.1%増えています。モンゴル、イラン、ラオス、トルコも30%を超える伸びを記録しました。

アジアで伸びが目立つ国・地域

  • 韓国: 43.2%増

  • タイ: 36.4%増

  • 日本: 34.1%増

  • モンゴル、イラン、ラオス、トルコも30%超の伸び

この背景にあるのが、英語以外の言語への対応強化です。生成AIは登場したばかりのころ、英語で使うと高い性能を発揮する一方、日本語や韓国語、インドネシア語などでは、回答の精度や自然さに差がありました。日本語でも、専門用語や敬語、長い文脈の理解では不安が残る場面がありました。

しかし、多言語性能は急速に改善しています。レポートでは、MMMLUという多言語ベンチマークに触れています。これは、同じ知識問題を複数の言語で解かせ、AIの能力を比較するための指標です。対象には、日本語、韓国語、中国語、ヒンディー語、インドネシア語などが含まれます。英語との差が縮まるほど、AIはより多くの人にとって使いやすい道具になります。

日本の数字にも、その変化が表れています。日本のAI利用率は、2025年上半期の16.7%から、同年下半期に19.1%、2026年第1四半期には22.5%へ伸びました。順位も56位から48位へ上がっています。直近3カ月の伸びは3.4ポイントで、世界平均の1.5ポイントを大きく上回りました。

日本語で安心して使えるかどうかは、日本でAIが広がるうえで大きな条件です。レポートでは、日本語のベンチマークや専門試験での性能向上も紹介されています。MMLUでは、GPT-3.5 Turboの日本語正答率が約50%だったのに対し、GPT-4oでは約80%まで上がりました。英語との差も20ポイントから9ポイントに縮まりました。さらに難しいMMLU-Proでは、GPT-5の日本語スコアが87%となり、英語の85%を上回っています。

「日本語で頼んでも、ちゃんと返ってくる」という感覚は、普及を強く後押ししてくれます。英語が得意な人だけの道具ではなく、ふだんの言葉で使える道具になるからです。文章の下書き、メール作成、資料づくり、調べ物、プログラミング支援など、利用場面も自然に広がります。

開発の現場でも変化が出ています。日本の開発者によるGitHubへのコード変更アップロードは、前年比129%増でした。世界全体の78%増を大きく上回っています。日本語で仕様を説明し、AIにコードを書かせ、人間が確認して直すという作業が広がっていると考えると、この伸びは納得できます。

日本のAI利用率が2025年上半期から2026年第1四半期まで伸びたことを示す図

日本のAI利用率は2025年上半期から伸びを強め、世界平均を上回るペースで上昇しています。

日本語でのAI性能向上と開発現場での活用増加を示す図

日本語でのAI性能向上が、日本の利用拡大や開発現場での活用増加につながっています。

Claude CodeなどAIコーディングツールの進化でコードの生産量が急増

今回のレポートで、産業への影響が最もわかりやすいのはソフトウェア開発です。2026年第1四半期、GitHubでのGit pushesは世界で3億8000万件に達しました。前年同期の2億1300万件から78%増えています。Git pushesとは、開発者がコードの変更をオンライン上のリポジトリにアップロードすることです。

新しいリポジトリの数も増えています。2026年第1四半期には2130万件となり、前年同期比で45%増でした。AIがコード作成や修正を支援することで、開発の量そのものが増えている様子が数字に出ています。

開発現場で見える変化

  • Git pushesは前年同期比78%増

  • 新規リポジトリは前年同期比45%増

  • AI関連のマージ済みプルリクエストは10カ月で28倍

背景には、AIコーディングツールの進化があります。AnthropicのClaude Code、OpenAIのCodex、MicrosoftのGitHub Copilotなどは、単なるコード補完ツールから、開発作業全体を支えるツールへ変わってきました。いまでは、コードを書く、バグを直す、テストする、画面を調整する、プルリクエストを作るといった作業まで支援します。

開発者が自然な言葉で「こういう機能を作りたい」と伝え、AIがコードを書き、人間が確認して修正するという作業スタイルは「vibe coding」と呼ばれます。少し軽い響きの言葉ですが、現場ではかなり実用的です。アイデアをすばやく形にし、動かしてみて、また直す。このサイクルが短くなるのです。

AIコーディングエージェントに関連するGitHubのマージ済みプルリクエストも急増しています。2025年5月には8万3000件でしたが、2026年3月には230万件まで増えました。10カ月で28倍です。もちろん、これはAIを使った開発全体の一部を捉えた数字です。それでも、AIが開発の周辺ツールではなく、作業の中心に近づいていることは読み取れます。

仕事が減るというより、作れるものが増える可能性

では、AIがコードを書くようになると、ソフトウェア開発者の仕事は減るのでしょうか。レポートでは、少なくとも現時点では慎重な見方を示しています。開発者の生産性が上がると、ソフトウェアを作るコストは下がります。コストが下がれば、企業はより多くのシステムや社内ツール、アプリを作ろうとします。つまり、人を減らすだけでなく、作るものを増やす方向に動く可能性があります。

実際、2025年の米国のソフトウェア開発者の雇用は約220万人で、前年比8.5%増で過去最高水準です。2026年3月の初期データでも、前年同月比で約4%高い水準とされています。

もちろん、仕事の中身は変わります。コードを一から書く時間は減るかもしれません。その代わり、何を作るのかを正確に言語化する力、AIが出したコードを検証する力、セキュリティや品質を守る力が重要になります。AIに任せる範囲が広がるほど、人間の判断力が問われる。少し逆説的ですが、開発現場ではすでにその変化が始まっています。

Git pushesが2026年第1四半期に3億8000万件へ増えたことを示す図

2026年第1四半期のGit pushesは3億8000万件に達し、前年同期比で78%増加しました。

AIの普及にはモデルの高性能化と同じくらい誰もが使える普及環境づくりが重要

2026年第1四半期のデータを見ると、生成AIは一時的な流行ではなく、社会の中に入り始めていることがわかります。世界平均の利用率は17.8%に上がり、UAEやシンガポールでは60%を超えました。日本も22.5%まで伸び、世界平均を上回るペースで利用が広がっています。

背景には、AIの性能向上があります。特に、英語以外の言語で使いやすくなったことは大きな変化です。日本語で自然に頼めるようになれば、AIは一部の専門家だけの道具ではなくなります。文章作成、調べ物、学習、開発支援など、日常の作業に入りやすくなります。

一方で、地域差は広がっています。グローバルノースとグローバルサウスの差は12.1%まで拡大しました。AIの性能を高めるだけでは、この差は埋まりません。電力、通信、教育、端末、料金、ローカル言語対応。こうした地味な土台が、AIを本当に使えるかどうかを左右します。

普及の焦点

  • 高性能なモデルを作ること

  • 母語で自然に使えるようにすること

  • 通信、端末、教育、料金の壁を下げること

  • 仕事や学習の現場で使いやすい形に落とし込むこと

これからの焦点は、誰が最も高性能なAIを持つかだけではありません。誰が、どの言葉で、どんな環境から、どれだけ自然に使えるのか。そこが重要になります。生成AIを社会に広げるには、モデルの進化と同じくらい、使える人を増やす設計が必要です。AIの普及はもう始まっています。次に問われるのは、その恩恵をどこまで広げられるか、ということになるでしょう。

2026年の世界AI利用の現在地をまとめた解説画像

2026年の世界AI利用の現在地をまとめた解説画像です。