生成AI
Lyria 3 Proの使い方|音楽知識ゼロでもフル楽曲が作れる!プロンプトの書き方も解説
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アイサカ創太(AIsaka Souta)AIライター
こんにちは、相坂ソウタです。AIやテクノロジーの話題を、できるだけ身近に感じてもらえるよう工夫しながら記事を書いています。今は「人とAIが協力してつくる未来」にワクワクしながら執筆中。コーヒーとガジェット巡りが大好きです。
柳谷智宣(Yanagiya Tomonori)監修
ITライターとして1998年から活動し、2022年からはAI領域に注力。著書に「柳谷智宣の超ChatGPT時短術」(日経BP)があり、NPO法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を設立してネット詐欺撲滅にも取り組んでいます。第4次AIブームは日本の経済復活の一助になると考え、生成AI技術の活用法を中心に、初級者向けの情報発信を行っています。
📌 この記事の要約
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30秒の壁を突破、最大3分のフル楽曲へ
2026年3月25日にGoogleが発表した「Lyria 3 Pro」は、従来の30秒制限を撤廃。イントロからアウトロまで楽曲構造をプロンプトで指定でき、ほぼ「1曲まるごと」を生成できるようになった。
プロンプトの解像度が出力品質を左右する
シンプルな指示でも2分超の楽曲が生成されるが、BPMや楽曲構成・歌詞キーワードを明示すると出力が大きく変わる。チャットAIにプロンプトを考えさせる活用法も有効。
歌詞は「おまかせ」か「別AIで作る」かを用途で使い分ける
自動生成の歌詞はAIっぽさが残りがちで誤読も起こる。こだわりたい場合はChatGPTやClaudeで歌詞を先に作成してからLyria 3 Proに渡すワークフローが有効。
YouTube・ポッドキャスト・ビジネス動画など用途が一気に拡大
Google Vids、Vertex AI、Gemini APIなど提供プラットフォームも大幅拡張。専門知識なしで「1曲まるごと」を形にできるツールとして実用レベルに近づいている。
2026年3月25日、GoogleはGeminiに統合された音楽生成モデルの上位版「Lyria 3 Pro」を発表しました。2月にリリースされたLyria 3は30秒限定でしたが、Proでは最大3分のフル楽曲が生成可能になっています。イントロ、ヴァース、コーラス、ブリッジといった楽曲構造をプロンプトで指定できるようになり、「ちょっとしたジングル」から「1曲まるごと」へと用途が一気に広がりました。
ただし利用にはGeminiの有料プランが必要で、Google AI Plusユーザーは1日10曲、Proユーザーは20曲、Ultraユーザーは50曲という制限があります。前回の記事ではLyria 3の基本機能と著作権対策を解説しましたが、今回はPro版で何が変わったのか、そしてどう使いこなせばいいのかを、実際に楽曲を生成しながら検証していきます。
「Lyria 3 Pro」で天秤AIの楽曲を生成してもらいました。
30秒の制限がなくなったLyria 3 Proは楽曲の「設計図」まで描ける
前回紹介したLyria 3は、テキストや画像から30秒の楽曲を瞬時に生成できる手軽さが魅力でした。SNSに投稿するショート動画のBGMや、ちょっとしたお祝いソングには十分。しかし30秒では、イントロが終わったあたりでフェードアウトしてしまいます。Aメロ、Bメロ、サビという展開を味わう前に曲が終わってしまうわけで、「もう少し聴きたいのに」というもどかしさは否めませんでした。
Lyria 3 Proは、この制約を取り払っていました。生成できる楽曲は最大約3分。ポップスやロックの一般的な楽曲が3分半から4分程度であることを考えると、ほぼ「1曲」と呼べる長さです。しかも単に長くなっただけではありません。
プロンプトの中で「イントロ→Aメロ→サビ→ブリッジ→ラストサビ→アウトロ」のように楽曲構造を指示すると、モデルがその流れを理解して組み立ててくれます。30秒版では「サビだけ」「イントロだけ」というパーツ単位の生成でしたが、Pro版は楽曲全体の設計図を渡せるイメージです。
提供されるプラットフォームも大幅に拡大しました。Geminiアプリに加えて、動画作成ツールのGoogle Vids、開発者向けのVertex AI・Google AI Studio・Gemini API、そして楽曲制作に特化したProducerAIでも利用できます。
ビジネスユーザーはGoogle Vidsでプレゼン動画にオリジナルBGMをつけられますし、開発者はAPIを通じて自社アプリに音楽生成機能を組み込むことも可能です。著作権保護の仕組みは前回解説したLyria 3と同じで、全出力にSynthIDの電子透かしが埋め込まれ、特定アーティストの模倣を避けるガードレールも引き続き機能しています。
3月25日、唐突にLyria 3 Proがお目見えしました。
プロンプトの書き方ひとつで仕上がりが激変する構造指定のコツ
では実際にLyria 3 Proで楽曲を作ってみましょう。前回のLyria 3レビューでは「天秤AIの歌を作って」というシンプルなプロンプトから始めましたが、Proではどこまで細かく指示できるのかが気になるところです。今回は段階的にプロンプトの解像度を上げながら、出力がどう変わるかを試してみます。
まずはレベル1、最もシンプルなプロンプトです。
Geminiで「音楽を作成」をクリックしてプロンプトを入力します。
これだけでも、Lyria 3 Proは2分38秒の楽曲を生成してくれました。ジャンルは自動判定でポップス寄り、テンポも中程度。歌詞は桜や光といったベタなモチーフが並びますが、Aメロからサビへの展開はきちんとあり、30秒版では味わえなかった「曲としてのまとまり」を感じます。ただ、ブリッジがなく、サビの繰り返しでやや単調な印象も残りました。
シンプルなプロンプトで生成した春の東京の楽曲(構造指定なし)
次に、構造を明示してみます。
春の東京を散歩する気分のシティポップ。BPM110。構成はイントロ(8小節)→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→Aメロ→サビ→アウトロ。男性ボーカルで、歌詞には「代々木公園」「夕暮れ」「コーヒー」を入れて。
出力は明らかに変わりました。イントロにシンセとベースのリフが入り、シティポップらしい雰囲気がちゃんと出ています。BPMの指定も効いていて、ゆったりした歩調にフィットするテンポ感。指定した3つのワードも歌詞に織り込まれています。間奏パートも入っていて、楽曲としての起伏が格段に増しました。男性ボーカルもやや甘めの声質で、シティポップとの相性は悪くありません。
楽曲構造を明示したプロンプトで生成したシティポップ風の楽曲
ChatGPTやGemini、ClaudeなどのチャットAIにプロンプトを考えてもらうこともできます。たとえば、「ケルト音楽風のEDM」が聞きたいが、どんなふうに指示すればわからない場合、AIに膨らませてもらいましょう。パラメータが言語化されるので、出力を聞いて修正する際に、どの単語を調整するのかが見える化できます。
チャットAIにプロンプトを膨らませてもらいます。
「ケルト音楽風のEDM」 を生成するプロンプトを考えてください。幻想的、かつテンションが上がるような感じに、具体的に指示してください。曲の長さは最大3分です。
出力(AIが生成したプロンプト)
「ケルト音楽風のEDM」。全体は幻想的で神秘的、しかし同時に高揚感があり、聴くほどにテンションが上がるダンサブルな楽曲。長さは最大3分。
BPMは128前後。4つ打ちのEDMビートを基盤にしつつ、ケルトらしい民族的な旋律を強く打ち出す。使用楽器は、ティンホイッスル、アイリッシュフルート、フィドル、バグパイプ、ハープ、ボーラン、アコースティックパーカッションを中心に、現代的なシンセベース、サイドチェインの効いたパッド、広がりのあるスーパーソウ系シンセ、透明感のあるアルペジオを組み合わせる。
冒頭は霧の立ちこめる異世界の草原や古代遺跡を思わせるアンビエントな空気感で始める。
~略
ケルト音楽風EDMの生成楽曲
他にもいろいろなプロンプトを試してみました。
ホラーゲームのBGM。ボーカルなし、インストのみ。不協和音とアンビエント。途中で突然テンポが上がり、金属的なパーカッションが入る展開。3分
ホラーゲームBGM風の生成楽曲
英語と日本語が交互に出てくるバイリンガルポップ。サビは英語、Aメロは日本語。K-POP風のダンストラック。アニメの主題歌、キーワードは「塔を登る」
バイリンガルポップの生成楽曲
ちなみに、画像をアップロードし、Geminiにぴったりの歌詞付き楽曲を生成してもらうこともできます。画像をドラッグ&ドロップし、ぴったりの曲を作って、と頼むだけでOKです。試しに、柴犬の写真を渡していたところ、意外といい曲が出て驚きました。
庭でくつろぐ柴犬の写真を入れて、楽曲を作ってもらいました。
柴犬の写真から生成した楽曲
また、従来通り、様々なテンプレートも利用できます。プロンプトを作り込むのが面倒なら、簡単な要望とともに好みのテンプレートを選びましょう。音楽に詳しくないなら、自分で細かく指示を出すのもありです。
テンプレを選択するだけで、曲の特徴を自動的に反映させてくれます。
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歌詞は「おまかせ」と「自分で書く」のどちらが正解か
Lyria 3 Proに「日本語で春の曲を作って」と投げれば、歌詞も自動的に生成されます。手軽さでは圧倒的です。ただ、自動生成の歌詞にはどうしても「AIっぽさ」が残ります。「風が吹く」「空を見上げて」「新しい明日へ」のような定番フレーズが頻出し、個性に欠ける印象は拭えません。また、先ほど作った春の曲も、「代々木公園」を「たんどここうえん」のように誤読することもあります。
サビの歌詞に特定のフレーズを入れるよう指示したり、ひらがなにひらいたりすればある程度コントロールできますが、1番と2番で歌詞の世界観に一貫性を持たせたり、韻を踏ませたりといった細やかな作詞は、現状のLyria 3 Proだけでは難しいのが正直なところです。
そこで選択肢になるのが、歌詞だけ別のAIで作るというワークフローです。ChatGPTやClaude、Geminiのテキスト生成機能を使って歌詞を先に仕上げ、それをLyria 3 Proのプロンプトに貼り付けて楽曲を生成する方法です。実際に試してみました。
天秤AIの魅力を伝える3分の曲の歌詞をください、などと希望を伝えてみます。コツは、読みを間違えそうなものはひらがなにひらくことです。今回は全部ひらがなにしました。また、助詞の「は」と「へ」も「わ」と「え」に変えて万全を期しました。
ChatGPTに歌詞のたたき台を考えてもらい、プロンプトに入力します。
天秤AIの歌
結果は、歌詞をほぼそのまま歌ってくれました。多少の変化はありましたが、おおむね忠実です。歌詞の質が上がった分、楽曲全体の完成度もワンランク上がった印象を受けます。
ただし、この方法にもデメリットはあります。まず手間が増えます。2つのAIを行き来する必要があるので、「パッと作ってすぐ共有」というLyria 3 Proの手軽さはやや損なわれます。また、外部で書いた歌詞とLyria 3 Proが生成するメロディの相性が合わないケースもあります。字余りや字足らずが発生して、歌い回しが不自然になることがあるのです。歌詞の文字数やリズム感をメロディ側に合わせる調整が必要で、何度か歌詞を修正して再生成する試行錯誤が発生します。
まとめると、SNSでサクッと共有したい場合や、歌詞の内容にこだわらないBGM的な用途なら「おまかせ」で十分です。一方、しっかりと作って長く楽しみたいという時や、歌詞にメッセージ性を込めたい場合は、別のAIで歌詞を練ってからLyria 3 Proに渡すほうが満足度は高くなるでしょう。どちらが正解というよりも、用途に応じて使い分けるのがおすすめです。
3分の楽曲が作れるようになったことで、ユースケースは一気に広がりました。YouTube動画やvlogのBGMはもちろん、ポッドキャストのオープニングジングルやアウトロも狙い目です。毎回同じ曲を使うのではなく、エピソードのテーマに合わせて毎回異なるジングルを自動生成する、という運用も現実味を帯びてきました。
Lyria 3 Proは、音楽制作の専門知識がなくても「1曲まるごと」を形にできるツールとして、着実に実用レベルに近づいています。プロンプトの工夫次第で出力品質が大きく変わることは今回の検証で実感しましたし、歌詞を別のAIで仕上げてから渡すといったワークフローの柔軟性も魅力です。
プロのミュージシャンにとって代わるものではありませんが、「頭の中にある曲のイメージを、とりあえず形にしてみる」という体験は、音楽との付き合い方そのものを変えていく可能性を秘めています。まずは1曲、自分だけのオリジナルソングを作ってみてはいかがでしょうか。
