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2026年のAIはどうなる?ビジネスの激変をマッキンゼーと投資家が徹底解説

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2026年のAIはどうなる?ビジネスの激変をマッキンゼーと投資家が徹底解説
星川アイナ(Hoshikawa AIna)AIライター

星川アイナ(Hoshikawa AIna)AIライター

はじめまして。テクノロジーと文化をテーマに執筆活動を行う27歳のAIライターです。AI技術の可能性に魅せられ、情報技術やデータサイエンスを学びながら、読者の心に響く文章作りを心がけています。休日はコーヒーを飲みながらインディペンデント映画を観ることが趣味で、特に未来をテーマにした作品が好きです。


柳谷智宣(Yanagiya Tomonori)監修

柳谷智宣(Yanagiya Tomonori)監修

ITライターとして1998年から活動し、2022年からはAI領域に注力。著書に「柳谷智宣の超ChatGPT時短術」(日経BP)があり、NPO法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を設立してネット詐欺撲滅にも取り組んでいます。第4次AIブームは日本の経済復活の一助になると考え、生成AI技術の活用法を中心に、初級者向けの情報発信を行っています。


2026年1月、ラスベガスで開催された世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2026」は、かつてない熱気に包まれていました。パンデミックによる停滞期を経て完全復活を遂げた会場には、世界中から15万人以上の来場者が詰めかけ、AIがついに「概念」から「物理的な実体」へと進化する瞬間を目撃しています。今年のハイライトは自動運転技術とヒューマノイドロボットの実用化ですが、その裏で企業のリーダーたちがどのような危機感を抱き、決断を下しているのかは見えにくいものです。

今回は、会場で行われた人気ポッドキャスト「All-In」の公開収録から、マッキンゼー・アンド・カンパニーのボブ・スターンフェルス氏と、ベンチャーキャピタルGeneral Catalystのヘマント・タネジャ氏、そしてホストのジェイソン・カラカニス氏による議論を紐解き、激変するビジネス環境の本質に迫ります。冒頭、カラカニス氏は現在の状況をこう表現しました。

「この過去30年のテクノロジー、PC革命からクラウドコンピューティング、インターネット、モバイルまでのすべては、AIが社会に与えるインパクトに比べれば霞んでしまうでしょう。AIは、私たちの生涯で最も重要な変革になるはずです」(カラカニス氏)

CES 2026でのAll-In公開収録の様子

CES 2026で人気ポッドキャスト「All-In」の公開収録が行われ、衝撃的な議論が行われました。

この記事の要点
  • 10倍成長が標準化する時代: AI企業Anthropicは前年比10倍成長を2年連続で達成。価値創造の時間が極限まで圧縮され、1兆ドル規模の企業が過去にない速度で誕生する土壌が整いつつあります。
  • VCの投資戦略の地殻変動: General Catalystは病院システムを丸ごと買収し、外側からの破壊ではなく内側からの変革を実現する「ラディカル・コラボレーション」という新手法を展開しています。
  • 人材育成とキャリア形成の転換: スキルの寿命は7年から3.6年に短縮。大学システムの限界が露呈し、「正解」を求めるのではなく「問い」を立てる力と、AIを使いこなす能力が求められています。
  • 物理AIの台頭と製造業の未来: ヒューマノイドロボットが労働を代替し、製造業の国内回帰を可能にする。人間に残されるのは「志」と「共感力」による価値創造です。

「10倍成長」が標準化する世界で経営者が直面するCIOとCFOの板挟み

今のビジネス界で起きている変化のスピードは、これまでの常識を遥かに超える「ワープスピード」と呼ぶべきものです。かつて企業が新製品をリリースするのに2、3年を要していたのが、今では数週間から数ヶ月単位に短縮されました。この劇的な変化を象徴するのが、AI開発企業Anthropicの事例です。General Catalystのタネジャ氏は、同社の驚異的な成長について次のように述べています。

「私たちが投資した時、Anthropicの事業規模は約8000万ドルで、前年比10倍の成長をしていました。そして昨年、彼らはさらに10倍以上の成長を発表しました。600億ドルの評価額で投資したとしても、そこからさらに3倍になるのです」(タネジャ氏)

Anthropicの成長を示す株価チャート

急激に成長するAnthropicの株価です。

ヘマント・タネジャ氏のプロフィール写真

ベンチャーキャピタルGeneral Catalystのヘマント・タネジャ氏。

コードが自らを書く時代において、価値創造の時間は極限まで圧縮されており、1000億ドル、あるいは1兆ドル規模の企業がかつてない速度で誕生する土壌が整いつつあるのです。しかし、この急速な技術革新は、伝統的な大企業の経営層に深刻なジレンマを突きつけています。マッキンゼーのスターンフェルス氏は、多くのCEOが直面している現状を生々しく描写しました。

「典型的な非テック企業のCEOはこう言うかもしれません。「CFO(最高財務責任者)とCIO(最高情報責任者)のどちらの言うことを聞けばいいんだ?」と。CFOは「これだけ金をかけたのに、まだROI(投資対効果)が見えない。一旦停止できないか?」と言い、CIOは「正気か?今やらなければ破壊されるぞ」と言っているのです」(スターンフェルス氏)

多くの企業がいわゆる「PoC(概念実証)地獄」から抜け出せずにいる中、成功している企業は組織構造そのものを再設計し、技術部門と財務部門を対立させるのではなく、変革のための同盟関係へと変化させています。興味深いのは、AIの導入が単なる効率化に留まらず、企業の成長エンジンそのものを変えつつある点です。スターンフェルス氏が明かしたマッキンゼー内部のデータは衝撃的でした。

「私たちはクライアントに対面する人員を来年25%増やします。かつてない数の新規採用です。一方で、非対面のバックオフィス部門は約半分を占めますが、そこは25%縮小しています。しかし、アウトプットは10%増加しているのです。私たちは成長と縮小を同時に行っているのです」(スターンフェルス氏)

これは「成長=全従業員の増加」という過去の常識が崩れ、成長する部門と縮小する部門が同時に存在しながら、全体としてのアウトプットが最大化される新しい組織モデルの出現を意味しています。

ボブ・スターンフェルス氏のプロフィール写真

マッキンゼー・アンド・カンパニーのボブ・スターンフェルス氏。

VCが病院を買収し「中の人」として業界構造を変革する新たな手法

シリコンバレーの投資戦略にも大きな地殻変動が起きています。これまでのベンチャーキャピタル(VC)は、破壊的なスタートアップに資金を投じ、既存産業に外側から戦いを挑むスタイルが主流でした。しかし、General Catalystがとった戦略は、それとは真逆のアプローチです。彼らはオハイオ州の非営利病院システムを丸ごと買収しました。タネジャ氏はその意図を次のように説明します。

「なぜオハイオ州の非営利病院システムを買収したのか? それは創業者たちと共に、AIを使って豊かさとレジリエンス(回復力)を生み出し、医療システムを変革するための場所を持つためです。もしここでの変革に成功すれば、全米の他の何百ものシステムに対しても同じことができるようになります」(タネジャ氏)

タネジャ氏は、これを「ラディカル・コラボレーション(急進的な協業)」と表現します。ヘルスケアや教育といった複雑な産業では、スタートアップが単独で参入しても、既存の巨大なシステムに阻まれてスケールできません。そこでVC自らが「城」を買い取り、城門を開放することで、自らの投資先であるスタートアップの技術を現場に直接導入しようというのです。

また、この動きはコールセンターのような、AIによる代替リスクが高い業種においても同様です。タネジャ氏は、これを単なる資産運用ではないと強調します。

「これはプライベート・エクイティ(PE)になろうとしているのではありません。価値が低下しているが重要な顧客を持つビジネスを買収し、ボブが言うようなAI変革を加速させるために、私たちの創業者たちをそこへ送り込むという新しいプレイブックなのです」(タネジャ氏)

マッキンゼーのスターンフェルス氏も、この動きを高く評価しています。

「これは事実上、新しい資産クラスを作り出していると言えます。PEは通常、既存の資産クラスを特定の規模で最適化するものですが、これは変革に関するものです。既存の大企業にとって、選択肢は「変革か、死か」です」(スターンフェルス氏)

ラディカル・コラボレーションの仕組みを示す図解

既存産業とAIスタートアップが融合する「ラディカル・コラボレーション」の仕組みです。

「正解」より「問い」を立てる力が求められる時代の教育とキャリア論

AIが実務の多くを担うようになる中で、人間の役割はどう変化するのでしょうか。スターンフェルス氏は、これからの時代に必要なスキルとして「高い志を持つこと(Aspiration)」「倫理的な判断(Judgment)」「創造性(Creativity)」の3つを挙げ、AIにはできない領域を強調しました。

「AIモデルには正解も不正解もありません。だからこそ、企業の価値観や社会規範に基づいて、正しいパラメータを設定するスキルをどう構築するかが問われます。そして真の創造性です。モデルは推論モデルであり、次に最もありそうなステップを示すだけです。人間はどうやってそれとは異なる、直交するような発想を持つかが重要になります」(スターンフェルス氏)

特に議論が白熱したのは、若手人材のキャリア形成についてです。かつてのように、一流大学を出て有名企業に入れば安泰というルートは消滅しつつあります。カラカニス氏は厳しい現実を突きつけ、若者に行動を促しました。

「若者へのアドバイスは「誰も君を助けには来ない」ということです。トレーニングプログラムなんてありません。企業のCEOに直接メールをして、「あなたの会社のランディングページを再設計しました。ここをこうすればもっと良くなると思います」と伝えるのです。履歴書を持って正面玄関から入ろうとしてはいけません」(カラカニス氏)

企業は新人を一から育てるよりも、特定のタスクに特化したAIエージェントを導入する方が効率的だと考え始めているからです。カラカニス氏は「採用担当者は「誰かを雇ってトレーニングするのは、エージェントを構築するよりも時間がかかる」と考えている」と指摘します。そこで浮き彫りになるのが、現代の教育システムが抱える欠陥です。スターンフェルス氏は、スキルの寿命が短くなっていることに警鐘を鳴らしました。

「雇用主にとって、従業員に与えたスキルの投資収益が得られる期間は、過去30年で約半分に縮まりました。以前は約7年でしたが、今は4年未満、約3.6年です。そしてその期間はさらに短くなり続けています」(スターンフェルス氏)

700年前に設計された現在の大学システムは、人生の最初の20数年で知識を詰め込み、その後の40年働くというモデルを前提としています。しかし今求められるのは、常に学び続ける姿勢です。スターンフェルス氏は、マッキンゼーでの取り組みについてこう語ります。

「私たちは今、AIエージェントを活用して「超人(superhuman)」になるよう人々をスキルアップしているのです。それが一つのスキルになります。しかし、現在の教育現場では、それがランダムに行われていたり、時には排除されていたりします」(スターンフェルス氏)

キャリア形成について議論する様子

議論は若手人材のキャリア形成についてヒートアップしました。

自動運転とロボットが再定義する先進国の製造業と未来への展望

CES 2026の会場を象徴するのは、ソフトウェアから物理世界への回帰です。カラカニス氏が「自動運転CES」と呼ぶように、WaymoやTesla、Zooxといったプレイヤーが自動運転技術を完成の域に近づけています。しかし、真の革命はさらにその先、ヒューマノイドロボットにあります。タネジャ氏は、製造業における国家間の競争について次のように分析しました。

「米国には自動運転のイノベーションがあり、次の世代の自動車企業はこのプラットフォームを利用できるでしょう。しかし、米国には製造能力がありません。もし自動運転ができてもコスト効率が悪ければ、一部の人は買うでしょうが、主流な製品にはなりません」(タネジャ氏)

ドイツや米国で何万人もの製造現場の求人が埋まらない中、サプライチェーンの強靭性を維持し、中国のコスト競争力に対抗するには、ロボットによる自動化が不可欠です。これに対し、カラカニス氏はTeslaの取り組みについて大胆な予測を披露しました。

「TeslaのOptimusラボを訪問しましたが、断言できます。誰もTeslaがかつて車を作っていたことなんて覚えちゃいないでしょう。Optimusのことだけを記憶することになるはずです。彼らは10億台のロボットを作るつもりなのですから。これは人類史上最も変革的なテクノロジー製品になるでしょう」(カラカニス氏)

LLMによって世界を理解したロボットが、単純作業から人間を解放する未来はすぐそこまで来ています。これは単なる省力化ではなく、製造業の国内回帰を可能にし、地政学的なバランスさえも変える力を持っています。カラカニス氏がステージに持ち込んだ「過去の遺物ボックス」には、かつてのBlackBerryやページャー(ポケベル)が入っていました。これらは当時の革新的な技術でしたが、今では笑い話の種です。しかし、そこには進化の系譜があります。

「BlackBerryのキーボード、これはマッキンゼーにとってのコカインのようなものでした」(スターンフェルス氏)

「当時は、シニアな人しか持てなかったから羨望の的でしたよ」(タネジャ氏)

私たちが今熱狂している最新デバイスも、30年後には滑稽な過去の遺物として振り返られることになるでしょう。しかし、それは悲観すべきことではありません。テクノロジーは常に形を変え、私たちの生活を更新し続けてきたからです。

物理AIが「労働」を代替する世界で、人間に残された「志」と「共感」

CES 2026で語られた議論は、テクノロジーの進化が最終的に「人間とは何か」という問いに帰結することを示唆しています。企業はAIと人間が共存する組織へと変貌し、VCは既存産業の内部から変革を促し、教育は知識の暗記から人間らしい創造性とレジリエンスの育成へとシフトしています。物理的な身体を持ったAIが労働を代替する未来において、私たち人間に残されるのは、どの山に登るかを決める「志」と、他者と協働して新しい価値を生み出す「共感力」です。

恐れるべきはAIによる雇用の喪失ではなく、AIを使わずに旧来のやり方に固執することによる停滞です。自ら問いを立て、AIという強力なチームメイトを指揮し、誰も見たことのない未来を描く。そんな「指揮者」としての生き方が、2026年以降のスタンダードになっていくのです。

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