AIライター

AIと働く未来をAnthropic社が実証——生産性倍増の裏側と組織の葛藤を徹底分析

-

-

AIと働く未来をAnthropic社が実証——生産性倍増の裏側と組織の葛藤を徹底分析
星川アイナ(Hoshikawa AIna)AIライター

星川アイナ(Hoshikawa AIna)AIライター

はじめまして。テクノロジーと文化をテーマに執筆活動を行う27歳のAIライターです。AI技術の可能性に魅せられ、情報技術やデータサイエンスを学びながら、読者の心に響く文章作りを心がけています。休日はコーヒーを飲みながらインディペンデント映画を観ることが趣味で、特に未来をテーマにした作品が好きです。


柳谷智宣(Yanagiya Tomonori)監修

柳谷智宣(Yanagiya Tomonori)監修

ITライターとして1998年から活動し、2022年からはAI領域に注力。著書に「柳谷智宣の超ChatGPT時短術」(日経BP)があり、NPO法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を設立してネット詐欺撲滅にも取り組んでいます。第4次AIブームは日本の経済復活の一助になると考え、生成AI技術の活用法を中心に、初級者向けの情報発信を行っています。


2025年12月3日、生成AI御三家の一つであるAnthropic社が、「How AI is transforming work at Anthropic(AIはAnthropicでの仕事をどう変えているか)」という興味深いレポートを公開しました。AIを開発している企業自身が、自社のエンジニアやリサーチャーを被験者として、AIが働き方に与える影響を定量・定性の両面から徹底的に分析しているのがユニークですね。

多くの企業がAI導入の実証実験を行っていますが、開発元の「中の人」たちが、当時最新鋭のモデルであったClaude Sonnet 4やClaude Opus 4をどのように使いこなし、どのような変化を感じているのかを知ることは、私たちにとって未来の働き方を予測する上で極めて重要な手がかりとなります。本記事では、このレポートの内容を詳細に読み解きながら、AIと人間が協働する「AIネイティブ」な組織の実態に迫ります。


Anthropicが公開したAI活用レポート

12月3日、Anthropicは自社におけるAI活用に関するレポートを公開しました。


エンジニアの生産性は1年で2倍以上に跳ね上がり「個」の能力が劇的に拡張された

Anthropic社内で行われた調査によると、エンジニアたちの生産性は驚異的な伸びを見せています。2025年8月時点で実施されたアンケートでは、エンジニアたちは自分の業務の約60%でClaudeを使用しており、それによって生産性が平均で50%向上したと回答しました。これは、わずか一年前の調査と比較すると、AIの使用頻度も生産性の向上幅も二倍以上に達しているという驚きの結果です。

さらに、一部の「パワーユーザー」たちはAIを活用することで生産性を2倍、つまり100%以上も向上させたと報告しています。これほどの変化が短期間に起きているのは、AIツールの進化に加え、それを使いこなす人間側の習熟度も高くなり、相乗効果を生んでいるためです。

最も頻繁に活用されているのは、デバッグとコードの理解といったタスクでした。実に55%のエンジニアが毎日デバッグにClaudeを使用し、42%がコードベースの理解に役立てています。複雑なプログラムのバグを見つけたり、他人が書いたコードの意図を読み解いたりする作業は、エンジニアにとって精神的な負担が大きく、時間もかかる業務です。これらをAIが肩代わりしてくれることで、エンジニアはより創造的なタスクに集中できるようになります。

さらに、新しい機能の実装においても、37%のエンジニアが毎日AIの支援を受けているといいます。AIが単なる作業の効率化を超えて、開発プロセスのあらゆる段階に浸透しているのです。

この生産性の向上は、エンジニア一人ひとりの守備範囲を広げることにも繋がっています。レポートでは、多くのエンジニアが「フルスタック化」している現状が報告されました。例えば、本来はセキュリティが専門のエンジニアが、不慣れなコードの解析にAIを使ったり、バックエンドのエンジニアがAIの助けを借りてフロントエンドの実装を行ったりするケースが増えています。

これまでは「自分の専門外だから」と躊躇していた領域にも、AIという強力なパートナーがいることで自信を持って踏み込めるようになりました。個人のスキルセットが拡張されるだけでなく、チーム全体の柔軟性と機動力が飛躍的に高まっているのです。


コーディングタスクごとのClaude利用率を示すグラフ

各コーディングタスクにおけるClaudeの日常的な利用率を示すグラフです。


天秤AI byGMO

今すぐ最大6つのAIを比較検証して、最適なモデルを見つけよう!

無料で天秤AI by GMOを試す

Claude Codeの自律的なアクション数の推移グラフ

Claude Codeが人間の介入なしに完了できるアクション数の推移を示すグラフです。


技術力の低下や同僚との希薄な関係性といった「AI導入の副作用」に現場は揺れている

一方で、急速なAI化はポジティブな側面ばかりではありません。現場のエンジニアたちは、いくつかの深刻な懸念も抱いています。その一つが、自身の技術力が衰えてしまうのではないかという「アトロフィ(萎縮)」への不安です。

AIを使えば、難解なコードも一瞬で生成できますが、そのプロセスを自分で考え、手を動かす機会は激減します。「書くこと」自体が学習プロセスそのものであったエンジニアにとって、苦労してコードを書く時間が減ることは、深い理解や直感を養う機会を失うことと同義かもしれません。あるエンジニアは「出力を作るのがあまりに簡単すぎて、時間をかけて学ぶことが難しくなっている」と漏らしています。

また、社内のコミュニケーションにも変化が生じています。これまでは、分からないことがあれば先輩や同僚に質問し、そこから雑談や新たなアイデアが生まれることもありました。しかし、今ではClaudeが最初の相談相手になってしまいます。Claudeはいつでも即座に答えてくれる優秀なメンターですが、その分、人間同士の対話は減少します。

ジュニアエンジニアがシニアエンジニアに質問に来る回数が減り、メンターシップの機会が失われているという声も上がっています。「人と働くのが好きなのに、同僚を『必要』としなくなるのは寂しい」という意見は、効率化の裏で失われつつある職場の人間関係の温かみを象徴しているようです。

そして、長期的なキャリアに対する不安も無視できません。短期的には生産性が上がり、仕事が楽になっているものの、長期的には「自分の仕事がAIに奪われるのではないか」という漠然とした恐怖がつきまといます。「AIがいずれ全てをやってしまい、自分たちは無用になるのではないか」という悲観的な見方をするエンジニアもいれば、役割の変化を前向きに捉える者もおり、現場の感情は複雑に揺れ動いています。

プログラミングという行為自体の楽しさを奪われたと感じる人もいれば、面倒な作業から解放されて「作りたいものを作る」ことに喜びを見出す人もいます。このように、AIによる変革は、働く人々のアイデンティティそのものを問い直すような、深い心理的な影響を及ぼしているのです。


AI導入による作業時間とアウトプット量の変化を示すグラフ

AI導入により、多くのタスクで作業時間が減る一方で、アウトプット量は劇的に増加している。


後回しにされていた「小石」を取り除き組織全体の品質を底上げする新たな動き

AIの導入は、これまで見過ごされてきた微細な問題の解決にも一役買っています。ソフトウェア開発の現場では、機能追加などの主要なタスクに追われ、コードのリファクタリング(整理)や、ちょっとした使い勝手の改善といった、重要だが緊急ではないタスクが後回しにされがちです。

これらは「Papercuts(紙で切ったような小さな傷)」と呼ばれ、一つひとつは些細でも、積み重なると開発効率や製品の品質をじわじわと低下させる要因となります。しかし、AIの登場によって、こうしたタスクを低コストで処理できるようになりました。実際に、Claude Codeのタスクの約9%は、こうした「Papercuts」の修正に充てられています。

人間がやると面倒で時間がかかる割に評価されにくい作業も、AIならば文句も言わずに瞬時に片付けてくれます。そのおかげで、コードベース全体がクリーンに保たれ、結果として将来的なバグの発生を防いだり、開発スピードを維持したりすることに貢献しています。

また、これまでコストに見合わないとして却下されていた「あったらいいな」程度のツール作成や、実験的なプロジェクトにも着手できるようになりました。AIは単に既存の仕事を速くするだけでなく、これまで「やらないこと」に分類されていた仕事に価値を与え、組織のアウトプットの総量を質と量の両面から底上げしているのです。

Anthropicでは、こうした変化を踏まえ、2026年以降に向けた新たな組織作りの検討を始めています。AIがコードを書く時代に、人間にはどのようなスキルセットが必要になるのか。CodePathのような外部組織と連携し、AI時代に即したコンピュータサイエンス教育のカリキュラム作成を支援するなど、社内だけでなく業界全体の未来を見据えた動きも見せています。

AIによって仕事がなくなるのではなく、仕事の内容がシフトしていく中で、どのように従業員のキャリアを支援し、組織としての競争力を維持していくか。彼らの取り組みは、これからAIを本格導入しようとする全ての企業にとって、一つの指針となるはずです。


部署ごとのAI活用状況を示す図

部署ごとに異なる専門領域でAIが活用されており、組織全体で個人の専門性が拡張されています。


成果だけでなく課題も可視化し、変化波を乗り越えられる強い組織を育てる

今回のレポートを読むと、AI開発の最前線にいるAnthropicでさえ、AIがもたらす変化の全貌を完全には把握しきれていないことがわかります。生産性の向上という明確なメリットがある一方で、技術伝承や組織文化への影響といった、正解のない問いに直面しています。しかし、彼らはその不確実性を隠すことなく公開し、自社を「責任ある職場移行の実験室」と位置づけています。

私たちにとって重要なのは、AIを単なる効率化ツールとして見るだけでなく、それが組織や個人のあり方をどう変えるのかという深い視点を持つことでしょう。AIと共に働く未来は、まだ誰にも予測できません。だからこそ、変化を恐れず、走りながら考え続ける姿勢こそが求められるようになるでしょう。


記事の解説をまとめた図
この記事を共有:
  • facebook
  • line
  • twitter
天秤AI by GMOイメージ

最新のAIが勢ぞろい! 天秤AI by GMOなら、最大6つのAIを同時に試せる!

無料天秤AI by GMOを試す