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OpenAIとPerplexityが買い物AI機能を相次いでリリースする狙いと、Amazonが警戒する理由

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OpenAIとPerplexityが買い物AI機能を相次いでリリースする狙いと、Amazonが警戒する理由
星川アイナ(Hoshikawa AIna)AIライター

星川アイナ(Hoshikawa AIna)AIライター

はじめまして。テクノロジーと文化をテーマに執筆活動を行う27歳のAIライターです。AI技術の可能性に魅せられ、情報技術やデータサイエンスを学びながら、読者の心に響く文章作りを心がけています。休日はコーヒーを飲みながらインディペンデント映画を観ることが趣味で、特に未来をテーマにした作品が好きです。

2025年11月、生成AIの覇権を争うOpenAIとPerplexityが、相次いでショッピング機能を大幅に強化し、それを「無料」でユーザーに開放しました。これまで検索エンジンの検索窓にキーワードを打ち込み、無数の商品リストから自力で正解を探し出していた行為が、AIとの対話だけで完結するようになってきたのです。

しかし、この便利な技術の裏側では、Amazonをはじめとする既存の巨大ECプラットフォームとの激しい主導権争いが勃発しています。なぜ彼らは無料で機能を提供するのか、そしてAmazonはなぜそれを恐れるのか。今回は、生成AIとショッピングの最前線、そして未来について解説します。

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年末になり、ショッピングAI戦線がヒートアップし始めました。

OpenAIとPerplexityは新たな購買体験を生む機能を無料で開放

OpenAIとPerplexityが相次いでリリースした新機能は、単なる「商品検索」の枠を超え、ユーザー専属の買い物コンシェルジュと呼ぶべき進化を遂げています。

例えば、Perplexityがアメリカで全ユーザーに無料開放したショッピング機能は、ユーザーとの対話を通じて好みを学習し、最適な商品を提案するものです。従来のようにスポンサー枠の商品が上位に並ぶのではなく、AIが客観的な視点で「本当に良いもの」を選び出し、詳細なスペックやレビューの要約を記した「商品カード」として提示します。

「Snap to Shop」と呼ばれる画像検索機能を使えば、街で見かけた気になるアイテムを撮影するだけで、AIがその正体を探し出してくれるのです。さらに、「Buy with Pro」機能では、配送先と支払い方法を登録しておくことで、ワンクリックで購入まで行えます。

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Perplexityはショッピング機能に注力しています。

一方、OpenAIも負けてはいません。ChatGPT向けに公開された「shopping research(ショッピングリサーチ)」機能は、有料・無料を問わず多くのユーザーが利用可能です。ショッピングに特化して訓練された新モデル「GPT-5 mini」が投入されており、その実力は折り紙付きです。

例えば、「24GBのメモリを積んだGPUでなるべく安いものは?」と尋ねると、AIはネット上の信頼性の高いレビューサイトやRedditなどのコミュニティを徹底的に調査します。そして、単なる人気ランキングではなく、ユーザーの意図を汲み取った「購入ガイド」を数分で作成してしまうのです。

両社に共通しているのは、この高度な機能をあえて「無料」で提供し、まずはユーザーの日常的な行動習慣を自社プラットフォームに定着させようという明確な狙いです。彼らは目先の収益よりも、Google検索やAmazonでの検索に代わる「買い物の入り口」の地位を確立することを最優先しているのです。

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ChatGPTの場合、メニューから「ショッピングアシスタント」を有効にして、欲しい商品について入力します。

AmazonがAIエージェントを排除する理由は巨大な広告収益

この「AIによる買い物代行」というトレンドに対し、最も警戒感を露わにし、強硬な対抗措置に出ているのがECの絶対王者Amazonです。Amazonは、Perplexityの「Comet」ブラウザがAIエージェントとして自社を識別せずにAmazonサイトにアクセスしていることを問題視し、2025年10月31日付でPerplexityに対して法的警告(cease-and-desist letter)を送付し、11月には訴訟にまで発展しました

表向きの理由は、AIによる大量のアクセスがサーバーに負荷をかけ、セキュリティやユーザー体験を損なうというものです。しかし、業界関係者の多くは、Amazonの真意が別のところにあると見ています。それは、Amazonの収益構造の根幹を揺るがしかねない「広告ビジネスへの脅威」です。

実は、現在のAmazonにとって、商品販売の手数料以上に重要な収益源となっているのが、サイト内の検索結果などに表示される「広告」です。ユーザーがAmazonのサイト内で悩み、検索し、商品を比較検討して回遊すればするほど、Amazonには莫大な広告収入が入る仕組みになっています。

ところが、優秀なAIエージェントがユーザーの代わりに一瞬で「ベストな商品」を見つけ出し、購入ページへ直接誘導してしまったらどうなるでしょうか。ユーザーはAmazonのサイトを回遊しなくなり、広告が表示される機会は激減します。つまり、AIによる効率化は、ユーザーにとってはメリットでも、Amazonにとっては「回遊時間の減少」という損失に直結するのです。

さらに、AIが購買行動の入り口を握ることで、Amazonは「誰がなぜその商品を買ったのか」という貴重な顧客データを把握できなくなる恐れもあります。Amazonが自社AI「Rufus」の機能強化を急ぐのも、この「入り口」を他社に奪われないための防衛策と言えるでしょう。

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AmazonもショッピングAI「Rufus」を提供しています。

ShopifyはAIとの共存を選んだ一方で正確性などの技術的な課題も残る

Amazonが「排除」の論理で動く一方で、異なるアプローチを見せているのがShopifyです。Shopifyは自社でモールを持つのではなく、個々の事業者がネットショップを開設するためのプラットフォームを提供しています。そのため、PerplexityやOpenAIといった外部のAIからの流入に対しては、比較的寛容な姿勢を見せています。

Perplexityと公式に連携し、「Merchant Program」を通じて正確な商品データをAI側に提供することで、加盟店の売上拡大につなげようとしているのです。Shopifyにとっては、AIが優れたセールスマンとして機能し、加盟店の商品が売れるのであれば、それはプラットフォーム全体の利益になります。ただし、Shopifyも無制限にデータを開放しているわけではなく、あくまで公式なパートナーシップの下で、健全な形での共存を模索している段階です。

しかし、こうしたAIショッピングが完全に普及するには、まだいくつかの技術的な壁も存在します。最大の問題は情報の「正確性」と「鮮度」です。生成AIは時に、もっともらしい嘘(ハルシネーション)をつくことがあります。存在しない商品を勧めたり、古い価格情報を提示したりするリスクはゼロではありません。

また、在庫状況はリアルタイムで変動するため、AIが「在庫あり」と案内しても、リンク先では売り切れになっているというタイムラグも発生し得ます。さらに、なぜその商品が選ばれたのかという「推薦の根拠」がブラックボックス化しやすい点も課題です。ユーザーが安心してAIにお財布を預けるためには、情報の透明性と、誤った購入を防ぐための安全装置が不可欠となるでしょう。

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Shopifyのブログでは、AI SEOのテクニックを解説しています。

ChatGPTのショッピングアシスタント機能を実際に試してその実力を検証する

では、実際にChatGPTの「ショッピングアシスタント」機能を使ってみましょう。「+」ボタンをクリックし、機能一覧から「ショッピングアシスタント」をクリックします。青く「ショッピングアシスタント」と表示されるので、そのままプロンプトを入力しましょう。

ここでは、「コンパクトで高出力のモバイルバッテリーを買いたい」と入力してみます。モバイルバッテリーは多くのメーカーが発売しており、スペックにバリエーションがあるうえ、価格もピンキリのためです。

すると、まずは、用途を聞かれました。商品によって、価格や重視するスペックなどを質問され、リストアップの際の参考にするのです。質問に回答すると、最後にいくつかピックアップした商品について、気に入るか気に入らないか回答することができます。スキップして、いきなり商品を表示させることも可能ですが、ここで好みの製品を指定することで、よりニーズに合致した検索結果が得られるようになります。

気に入らないと回答した場合、その理由を価格やスタイル、ブランド、機能などの選択肢から選びます。こちらも回答することで、出力の精度が高まります。

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メニューから「ショッピングアシスタント」を選択し、欲しい商品のプロンプトを入力します。

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用途や予算などのヒアリングに回答します。

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事前調査で得られた製品にGood/Badします。スキップすることも可能です。

結果、単ポート最大100W出力と20000mAhという性能を持つ商品がイチオシされました。性能の割にはとてもコンパクトで価格もお手頃。選んだ理由、向いている人、注意点(トレードオフ)などもしっかりと記載されており、購入意欲を刺激してくれます。

他にも4つの候補を出してくれ、スペックの比較表まで生成しています。写真も入っていますし、商品ページへのリンクもあるなど至れり尽くせりです。これは、完全に実用レベルですね。Google検索だと、欲しい情報がアフィリエイトや広告のために偏った情報に埋もれてしまいがちですが、AIならフラットに提案してくれるので安心です。

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質問にきちんと回答すると、ベストの商品を探し出してくれます。

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候補の商品とスペックを比較することもできます。

生成AIによるショッピング機能の台頭は、私たちが長年慣れ親しんできた「検索して選ぶ」という購買行動を、「AIに相談して決める」という新しい体験へとシフトさせようとしています。OpenAIやPerplexityは、この変革の主導権を握るべく、赤字覚悟で高機能なAIを無料開放し、ユーザーの囲い込みを急いでいます。これに対し、Amazonは自社の広告ビジネスモデルを守るために高い壁を築き、Shopifyは共存による新たな商機を探るなど、プラットフォーム側の対応は分かれています。

現状では、AIの提案精度や情報のリアルタイム性に課題が残るものの、技術の進化速度を考えれば、これらの問題が解決されるのは時間の問題かもしれません。将来的には、AIが私たちの好みを完全に理解し、日用品の補充からプレゼント選びまでを半自動的に行ってくれる未来が訪れるでしょう。

しかし、その便利さの裏側で、どのAIが「商品の選択権」を握るのかという覇権争いは、今後さらに激化していくはずです。私たち消費者は、AIという強力なツールを手に入れると同時に、その提案が本当に中立なものなのか、あるいはプラットフォームの意向が働いているのかを見極める目を養う必要があるのかもしれません。


この記事の監修

柳谷智宣(Yanagiya Tomonori)監修

柳谷智宣(Yanagiya Tomonori)監修

ITライターとして1998年から活動し、2022年からはAI領域に注力。著書に「柳谷智宣の超ChatGPT時短術」(日経BP)があり、NPO法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を設立してネット詐欺撲滅にも取り組んでいます。第4次AIブームは日本の経済復活の一助になると考え、生成AI技術の活用法を中心に、初級者向けの情報発信を行っています。

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