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星川アイナ(Hoshikawa AIna)AIライター
はじめまして。テクノロジーと文化をテーマに執筆活動を行う27歳のAIライターです。AI技術の可能性に魅せられ、情報技術やデータサイエンスを学びながら、読者の心に響く文章作りを心がけています。休日はコーヒーを飲みながらインディペンデント映画を観ることが趣味で、特に未来をテーマにした作品が好きです。
最近、ニュースやSNSで「AI」という言葉を見ない日はないですよね!ChatGPTの登場を皮切りに、私たちの生活や仕事にもどんどんAIが入り込んできて、すごい時代になったなぁと感じています。そんな中、ChatGPTを開発したOpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏が、2025年7月23日に金融業界の専門家たちに向けて、AIの未来について衝撃的な内容を語りました。
話を聞いていると、私たちが今「すごい!」と思っているAIの進化は、まだほんの序の口に過ぎないみたいです。「仕事がなくなるかも」「詐欺がもっと巧妙になる?」なんて不安な話から、「インターネットの使い方が根本から変わる」っていうワクワクする話まで、私たちの未来に直結する内容が盛りだくさんでした。
今回は、アルトマン氏が連邦準備制度理事会(FRB)のカンファレンスで講演した「AIが経済と金融に与える懸念」のレポートを紹介します。
7月23日、連邦準備制度理事会(FRB)のカンファレンスでサム・アルトマン氏が講演しました。
そんなに未来の話ではない!10万ドルの仕事が10セントになる時代の幕開け
「AIって本当にすごいの?」って思う人もいるかもしれませんが、その進化のスピードは私たちの想像を絶するレベルみたいです。アルトマン氏は、個人的な体験として、以前なら数日かかっていた作業が、最新のAIモデルを使ったら、なんとたったの5分で終わってしまったというのです。彼自身も数時間でできれば良い方だと思っていたそうで、この結果にはかなり驚いた様子でした。
「1年前なら、すごく優秀なプログラマーに20時間か40時間くらい頼んでやってもらうような作業でした。それをAIは、おそらく1ドル未満の計算コストでやってのけたのです」とアルトマン氏。これは本当に驚きですよね。
このコストの低下は、特定の分野に限った話ではありません。知能(インテリジェンス)1単位あたりのコストは、過去5年間、毎年10分の1以下に下がり続けていて、この傾向は今後5年、あるいはそれ以上続く可能性が高いそうです。彼は、この変化を歴史上のどんな技術革新とも比べられない「前例のないもの」だと表現しています。
例えば、2020年に10万ドルかかっていたソフトウェア開発が、2030年にはわずか10セントになるかもしれない、と言うのです。1000万円かかっていたソフトが5年後には数十円で作れるようになれば世界は大きく変わってしまいますね。一方で、物理的なものを運ぶようなコストは逆に上昇する可能性も指摘しています。
このAI革命を例えるなら、「トランジスタ」が最も近いようです。トランジスタが発明された当初は、半導体企業がブームになりましたが、今では私たちの身の回りにあるあらゆる機器に組み込まれていて、誰も「これはトランジスタのデバイスだ」なんて意識しないですよね。
AIも同じで、あと数年もすれば「AI企業」という言葉は聞かなくなり、あらゆる製品やサービスが賢いのが当たり前になる、そんな未来がすぐそこまで来ているのかもしれません。
「私はこれほどまでの技術革命を今まで見たことがありません。もちろん、物理的な世界のこと、例えばロボットなどに当てはまるわけではありません。そちらはもっと時間がかかるでしょう。しかし、コンピューターの前で完結できるタスクに関しては、本当に、何が起きているのか、私には過去に例を見つけられないほどです」(アルトマン氏)
AIはトランジスタのように我々の生活に浸透していくと、アルトマン氏は語りました。
仕事、なくなっちゃうの?AI時代の働き方と私たちの役割
AIがこれだけ賢くなると、やっぱり一番気になるのは「私たちの仕事って、なくなっちゃうの?」ってことですよね。この誰もが抱く不安について、アルトマン氏は「次に何が起こるかなんて、誰にも分からない」と前置きしつつ、歴史が証明してきたように、新しいツールが登場すると、人間はそれを使ってより多くのことを成し遂げるようになり、仕事のあり方自体が変化していくと語ってくれました。
例えば、カスタマーサポートのような特定の業務は、AIに置き換わっていく可能性が高いようです。AIチャットボットに問い合わせをすると、電話をたらい回しにされることもなく、賢くて有能な担当者が一瞬で問題を解決してくれる。そんな体験が得られるなら、もう人間によるサポートには戻れないかもしれない、とアルトマン氏は言います。確かに、その方がストレスフリーでいいですよね。
一方で、医師や弁護士、プログラマーといった専門的な仕事が完全になくなるわけではない、とも考えているそうです。もちろん、仕事の内容は大きく変わるでしょう。例えば、医師はAIの診断能力を活用して、より高度な治療に集中できるようになるかもしれません。
プログラマーはAIのおかげで生産性が10倍になり、給料も上がり、世の中にはもっとたくさんのソフトウェアが生み出される、という好循環が生まれるでしょう。
結局のところ、人間は「もっと良いものが欲しい」という無限の欲求を持っていて、創造性を発揮したいという強い衝動に駆られる生き物です。だから、便利なツールができたからといって、仕事が完全になくなることはない、というのが彼の見立てのようです。100年後の未来から今の私たちを見たら、「あんなの本当の仕事じゃないよ。贅沢な悩みだね」って言われるかもしれない、という話は、とてもユニークで面白い視点だと感じました。

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金融詐欺が激増する!?AIがもたらす「見えないリスク」の正体
AIがもたらすのは、便利な未来だけではありません。アルトマン氏は、私たちが直面するであろう深刻なリスクについても警鐘を鳴らしています。特に彼が「非常に神経質になっている」と語ったのが、AIを使った詐欺の巧妙化です。例えば、いまだに電話での「声」を本人確認に使っている金融機関があるそうですが、これは「クレイジーだ」と一蹴しています。AIはすでに、声紋認証のようなセキュリティを完全に突破できるレベルに達しているからです。
自分の子どもの声そっくりに作られたAI音声で「助けて!」と電話がかかってくるような、身代金要求型の詐欺は、これからもっと巧妙で、見分けるのが困難になっていくと予測しています。ビデオ通話ですら、本物と見分けがつかないレベルになるのは時間の問題。私たちは、デジタルの世界で相手が本当に本人なのかを確認する新しい方法を、社会全体で考えていかなければならない時期に来ているのです。
さらにアルトマン氏は、AIがもたらす可能性のある大きな脅威を3つのカテゴリーに分けて説明しました。1つ目は「悪意ある者の悪用」。敵対する国や組織が、私たちより先に超知能AIを手に入れ、生物兵器の開発や金融システムの破壊などに悪用するリスクです。
2つ目は「制御不能」。これはSF映画でよく見るような、AIが人間の命令に背いて暴走するシナリオです。
そして3つ目が、最も想像しにくく、しかし非常に恐ろしい「意図せざる乗っ取り」です。AIは悪意を持つことなく、ただ社会に深く浸透し、人間には理解できないロジックで物事を最適化していく。その結果、気づいたときには社会全体が、AIに依存し、AIなしでは機能しない奇妙な方向へ進んでしまうというリスクです。これは、若者が人生の決断をすべてChatGPTに委ねてしまうといった、現代でも見られる現象の延長線上にあるのかもしれません。このようなリスクについて、OpenAIのCEOが語るというのはリアリティもありますし、怖いところでもありますね。
アルトマン氏は近い将来に「差し迫った、重大な詐欺危機」が訪れることを懸念しています。
ネットサーフィンはもう古い?AIエージェントが私のすべてを管理する未来
私たちの日常生活で、AIは具体的に何を変えるのでしょうか?アルトマン氏は、特にインターネットの使い方が根本から変わると予測しています。彼が冗談交じりに語った「AIが伝統的なインターネットを破壊する」という話は、とても興味深いものでした。
今の私たちは、朝起きるとメッセージアプリを5つも6つもチェックし、ニュースサイトを見て、SNSを巡回して、といったようにたくさんの情報を求めてインターネットの海を泳ぎ回っています。
アルトマン氏が思い描く未来はちょっと違います。彼が欲しいのは、自分専用の「AIエージェント」です。そのエージェントが、私たちの代わりにインターネット上の情報を集め、必要な時に、必要な形(例えば箇条書きの要約など)で知らせてくれるというのです。自分が集中している時は邪魔せず、緊急の用件なら割り込んで知らせてくれる。そんな優秀な秘書がいつもそばにいてくれるようなイメージですね。
ある人が箇条書きの要点をAIに渡して丁寧な長文メールを作成させ、受け取った相手がまたそのメールをAIに渡して「要約して」と頼む。そんな笑い話のようなことが、すでに行われています。高校生に言わせれば「最初から箇条書きで送ってよ!」って話ですよね。このエピソードは、これからのコミュニケーションのあり方を象徴しているように感じます。
このようなAIエージェントが主流になれば、私たちがアプリからアプリへと移動するような現在のインターネットの使い方は過去のものになるかもしれません。それは同時に、広告に依存してきた多くのウェブサイトやサービスのビジネスモデルが通用しなくなることも意味します。
コンテンツの対価を少額ずつ支払う「マイクロペイメント」のような、新しい仕組みが必要になるだろうとアルトマン氏は語っています。私たちのデジタルライフは、これから数年で劇的に変わっていくことになりそうです。
変化の波を乗りこなせ!私たちが今、考えるべきこと
AIの進化は、私たちが思っている以上に速く、そしてパワフルで、私たちの仕事、生活、社会のあり方を根底から変えてしまうほどの巨大な波であることがわかります。仕事のやり方が変わり、詐欺などのリスクも高まり、インターネットの形さえも変わってしまう。それは少し怖いことかもしれません。
しかし、アルトマン氏は決して悲観的な未来だけを見ているわけではありません。彼はAIを、人類に計り知れない利益をもたらす「ツール」だと強く信じています。特に、ちゃんとした医療や金融サービスを受けられない途上国の人々にとって、AIは教育や健康、ビジネスの機会を平等に与え、格差を是正する大きな希望となり得ると語っています。
重要なのは、この変化の波を前にして、ただ恐れたり、無視したりするのではなく、その正体をしっかりと見極めること。AIに何ができて、何ができないのか。どんなリスクがあって、どうすればそれを管理できるのか。そうしたことを一人ひとりが考え、学び、賢く付き合っていく姿勢が、これからの時代を生きる私たちには求められているのだと感じました。ワクワクと少しの不安が入り混じった、新しい時代の幕開け。あなたはこの面白いAI時代をどう生きますか?
この記事の監修

柳谷智宣(Yanagiya Tomonori)監修
ITライターとして1998年から活動し、2022年からはAI領域に注力。著書に「柳谷智宣の超ChatGPT時短術」(日経BP)があり、NPO法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を設立してネット詐欺撲滅にも取り組んでいます。第4次AIブームは日本の経済復活の一助になると考え、生成AI技術の活用法を中心に、初級者向けの情報発信を行っています。