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NotebookLMがアップデート!AIが徹底的に調べ分析するDeep Researchの威力
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アイサカ創太(AIsaka Souta)AIライター
こんにちは、相坂ソウタです。AIやテクノロジーの話題を、できるだけ身近に感じてもらえるよう工夫しながら記事を書いています。今は「人とAIが協力してつくる未来」にワクワクしながら執筆中。コーヒーとガジェット巡りが大好きです。
Googleは2025年11月13日、AIを活用したリサーチ・執筆支援ツール「NotebookLM」の大型アップデートを発表しました。主な変更点は、AIが能動的にインターネットリサーチを行う新機能「Deep Research(ディープリサーチ)」の導入と、分析可能なファイル形式を大幅に拡大した点の2つです。

11月13日、NotebookLMがDeep Researchを搭載しました。
Deep Researchとは
今回のアップデートで最も注目される新機能が「Deep Research」です。従来のようにユーザーがアップロードしたソースにAIが応答するだけでなく、AI自らがユーザーの質問やテーマに基づいてリサーチプランを作成し、Web上を広範囲に閲覧・分析する機能です。
AIは収集した情報から信頼できるソースに基づいた詳細なレポートを自動生成し、そのレポートと根拠となったソースはNotebookLMに直接追加できます。そのため、ユーザーはリサーチの初期段階にかかる膨大な時間と労力を削減できます。
では、実際に使ってみましょう。「ソースを追加」する際の入力フォームで、リサーチ方法を選べるようになっています。従来の「Fast Research(ファストリサーチ)」に加えて、「Deep Research」が追加されています。ちなみにWebではなくファイルをソースにする場合、「Deep Research」は選べません。
今回は「生成AIを使うことによって、人間の能力が低下する、といった切り口での研究について」というプロンプトを使ってみます。私はAI推進派ですが、ネガティブな影響があるなら知っておきたいため、日ごろからチェックしています。毎回検索するのは手間がかかるので、NotebookLMに最新情報を蓄積できれば便利そうです。
まずは、「Fast Research」を使ったところ、10個のWebサイトを検索して追加できました。うち、8つが海外の論文、1つが日本語の情報でした。1つは有料媒体の記事なので内容を取得できませんでした。
まずは、通常の「Fast Research」を使ってみます。
Fast ResearchとDeep Researchの比較
続いて、「Deep Research」を使ったところ、12のソースが見つかりました。そのうちの一つは、「Deep Research」による詳細なレポートです。そもそも、この中に複数の研究についての情報が入っています。ちなみに、このレポートだけで1万文字オーバーです。その他、海外の研究論文は5つ、日本語の解説記事が6つ、無効なWebサイトが1つ追加されました。
メニューから「Deep Research」を選択して、プロンプトを入力します。
12件のソースが追加されました。
Fastは30秒程度、Deepは3分程度で回答を出力してくれます。Deepでもそれほど時間がかからないのはありがたいところですね。
その後、チャットで質問をしたり、解説してもらったのですが、私にはFastとDeepの結果の差がわかりませんでした。何となく、Deepの方が幅広い情報を持っているようなイメージはあるのですが、言語化できなかったのです。
そこで、Geminiに両方の出力を渡し、分析してもらうことにしました。すると、1. 根本的な原因(脳活動)への言及、2. 中核となる概念の明確さ、3. 対策の具体性と普遍性の観点で、「Deep.txt の方がクオリティが高い」と判定されました。
■プロンプト
添付の、FastとDeepのテキストファイルは、NotebookLMに「生成AIを使うことによって、人間の能力が低下する、といった切り口での研究」についてまとめてもらったあと、「AIに頼るとどんな悪影響が出ますか?」と「対応策は?」という2つの質問をしたときの回答です。両方を分析し、どちらの回答のクオリティが高いか判定してください。
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市場調査での検証
研究論文の場合、Fastのように論文そのものを集めてきてもクオリティの高い返答がしやすいのかもしれません。そこで、次は、「Deep Research」お得意の市場調査を元にした分析をさせてみます。
例えば、国内でニッチな成功を収めた企業が、日本だけをターゲットにしていると成長が鈍化するので、海外に打って出たいが、その際のハードルはどこにあるか?といった調査をしてもらいましょう。従来であれば、海外展開の経験者にコンサルタントとして入ってもらうような内容です。
■プロンプト
国内の狭い市場でD2C(直販)で成功した中小企業が、その成功体験を活かして、次は『越境EC』という手法でアジア市場に進出できる可能性と、その際の課題(言葉の壁、配送、法律など)は何か?
すると、Fastは9個のWebサイトを見つけたのですが、Deepはなんと2つだけでした。1つは約1万3000文字の「Deep Research」のレポートで、もう一つがD2Cブランド成功の鍵となる越境ECにおけるUGCの役割について解説しているブログ記事でした。
その上で、「海外展開で中小企業が注意すべき点を箇条書きにして」という質問をしました。どちらも、きちんと回答していましたが、Fastの方が文字数も、注意すべき点の数も多かったので驚きました。そこで、今回もGeminiに判定してもらいました。
驚くべきことに、「「Deep.txt」の方が圧倒的にクオリティが高いと判定」とのことでした。理由は「どちらも「海外展開(越境EC)の注意点」という問いには答えていますが、情報の深度、具体性、そして元の質問の背景(国内D2C成功企業がアジア市場へ)への適合度が全く異なります」とのことです。
ソースが2個しかないのに、Deepの方がクオリティが高いと判定されました。
Deep Researchの真骨頂
数日ですが、使い込んで明らかになったのは、「Deep Research」は、ソースの「数」ではなく「質」で勝負する機能だということです。Fastが9件集めたのに対し、Deepがたった2件(うち1件はレポート)しか集めなかった越境ECの調査でも、GeminiはDeepの回答を「圧倒的にクオリティが高い」と判定しました。
Geminiが指摘した「情報の深度、具体性、そして元の質問の背景への適合度」こそが、Deep Researchの真骨頂なのでしょう。単に情報を集めるだけでなく、AIがリサーチプランを立て、分析し、1万文字を超えるような「初期レポート」まで仕上げてくれるのです。これは、従来のリサーチ作業を根底から変えるポテンシャルを秘めています。
今回のアップデートでは、GoogleスライドやWeb URLなど、分析できるソースの種類が大幅に増えた点も見逃せません。Deep Researchという能動的な「外部リサーチ」と、手持ちの資料を分析する「内部リサーチ」の両方が強化されたことで、NotebookLMはリサーチと執筆の「強力な相棒」へと大きな進化を遂げました。この新しい相棒と、どう付き合っていくか、ビジネスパーソンのスキルが試されることになりそうです。
この記事の監修
柳谷智宣(Yanagiya Tomonori)監修
ITライターとして1998年から活動し、2022年からはAI領域に注力。著書に「柳谷智宣の超ChatGPT時短術」(日経BP)があり、NPO法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を設立してネット詐欺撲滅にも取り組んでいます。第4次AIブームは日本の経済復活の一助になると考え、生成AI技術の活用法を中心に、初級者向けの情報発信を行っています。
