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月額約3万6千円の価値はあるか?Google AI Ultraが切り拓くAI活用の新境地

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月額約3万6千円の価値はあるか?Google AI Ultraが切り拓くAI活用の新境地
月額約3万6千円の価値はあるか?Google AI Ultraが切り拓くAI活用の新境地
アイサカ創太(AIsaka Souta)AIライター

アイサカ創太(AIsaka Souta)AIライター

こんにちは、相坂ソウタです。AIやテクノロジーの話題を、できるだけ身近に感じてもらえるよう工夫しながら記事を書いています。今は「人とAIが協力してつくる未来」にワクワクしながら執筆中。コーヒーとガジェット巡りが大好きです。

2025年5月20日、Googleは開発者会議Google I/O 2025で、AI戦略の新たな一手となる最上位サブスクリプションプラン「Google AI Ultra」を発表しました。月額249.99ドル(日本円で約3万6400円)という、一見すると高額なこのプランは、AIの最先端機能へのフルアクセスを約束する、まさにプロフェッショナル向けの「VIPパス」として設計されています。

従来のAIサービスとは一線を画すGoogle AI Ultraは、クリエイター、開発者、研究者といった、AIを駆使して新たな価値を創造しようとする人々にとって、どのような可能性を秘めているのでしょうか。注目の新プランの全貌を徹底的にチェックしてみましょう。

Gemini AI Ultraプランの提供開始画面

Gemini AI Ultraプランの提供が始まりました。

AI新時代の幕開け!Google AI Ultraの基本情報と魅力的な特典

Google AI Ultraは、Googleが提供するAI技術の粋を集めた最上位のサブスクリプションプランです。個人向けのGoogle Oneサブスクリプション内で提供され、GoogleのAIサービス群における頂点として位置づけられています。

これで、Googleの個人向けAIサブスクリプションは、基本的なGemini機能を利用できる無料プラン、従来の「Google One AI プレミアム」が改名された月額2900円の「Google AI Pro」、そして最上位の「Google AI Ultra」という3段階の構成になります。ちなみに、Google Workplaceのアカウントでは「Google AI Ultra」は利用できず、契約もできません。

気になる料金ですが、Google AI Ultraはなんと月額249.99ドル、日本円で約3万6400円(税込)です。初めて利用する方には、最初の3ヶ月間は50%割引の月額約1万8000円で試せるプロモーションも用意されています。

この価格設定は、AIの最新機能にいち早く触れたいアーリーアダプターや、高度な動画生成AIなどを本格的に活用したいプロのクリエイター、研究者、開発者を主なターゲットとしています。OpenAI社のChatGPTやAnthropic社のClaudeといった他のプレミアムAIサービスでも同程度の価格帯のプランが存在しており、最先端AI市場における標準的な価格設定と言えるでしょう。

Google AI Ultraの初回3カ月半額キャンペーン画面

Google AI Ultraは初回3カ月間、半額になるキャンペーン中です。

Google AI Ultraの大きな魅力の一つは、単にAI機能へのアクセス権だけでなく、充実した付帯サービスが含まれている点です。30TBもの大容量クラウドストレージが提供されるのは嬉しいところです。このストレージはGoogle Photos、Google Drive、Gmailで利用でき、単体で契約すると月額149.99ドル(約2万1000円)に相当するサービスです。AIで生成する大容量のデータの保存先として重宝するはずです。

さらに、YouTube Premiumの個人プラン(月額13.99ドル相当)も自動的に付帯します。YouTubeやYouTube Musicを広告なしで楽しめるだけでなく、オフライン再生やバックグラウンド再生も可能になるため、情報収集やエンターテイメントの質が格段に向上します。これらの付帯サービスだけで月額約164ドル(約2万4千円)の価値があると考えると、純粋なAI機能の追加コストは実質的に抑えられ、プロフェッショナルユースにおける投資対効果(ROI)も十分に期待できる水準にあると言えるのではないでしょうか。

30TBクラウドストレージの表示画面

30TBのクラウドストレージを使えるのは大きな魅力です。

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これぞ最高峰!Ultraユーザーだけが体験できるAI機能の数々

Google AI Ultraの真価は、なんといってもGoogleが誇る最先端AIモデル群への最高レベルのアクセス権と、それを活用した多種多様な機能にあります。まず中核となるのが、高性能AIモデル「Gemini」ファミリーの最上位バージョン「Gemini 2.5 Pro」へのアクセスです。このモデルは、テキストや音声、画像、動画、さらにはコードに至るまで、さまざまな種類の情報を理解し処理できるマルチモーダルAIとしての高い能力を持っています。

Gemini 2.5 Proのコンテキストウィンドウは標準で100万トークンと大きく、約100万文字、書籍約10冊分の情報を一度に処理でき、近日中にはこの容量が200万トークンにまで拡張される予定です。

膨大なドキュメントや複雑なコードリポジトリ全体をAIに理解させ、深い分析や要約、質疑応答を行わせることができ、研究開発や大規模プロジェクトにおける生産性を飛躍的に向上させるでしょう。

研究者や学生、あるいは大量の情報を扱うビジネスパーソンにとって強力な味方となるのが、「NotebookLM」の強化機能です。Google AI Ultraプランでは、NotebookLMで扱えるソース(資料)の上限数やノートブック数、クエリ数が増え、さらにノートブックのスタイルやAIによる回答の長さを細かくカスタマイズできるようになります。

さらに未来を感じさせるのが、エージェント型AI「Project Mariner」への早期アクセス権です。この実験的な機能は、ユーザーが目標を伝えるだけで、Geminiがその達成に必要なステップを自律的に計画し、ウェブ検索から情報収集、Googleアプリとの連携、さらには予約や購入といったタスクまで、最大10個のタスクを同時に単一のダッシュボードから管理・実行できます。まるで優秀なパーソナルアシスタントが常にそばにいて、複雑な作業を代行してくれるような体験が期待できるのです。すでにアメリカでは公開が始まっており、今後日本を含む国々で利用できるようになる予定です。

もちろん、GmailやGoogleドキュメント、スプレッドシートといった日常的に利用するGoogle Workspaceアプリケーション群や、Google ChromeブラウザにもGeminiのAI機能が深く統合されます。メール作成支援、文章校正、データ分析、情報要約などが、使い慣れた環境でシームレスに行えるようになり、日々の業務効率を大幅に高めてくれるはずです。

Project Marinerの機能説明画面

エージェント型AI「Project Mariner」が利用できます。(日本は今後対応予定)

思考するAI?Gemini 2.5 Proと「Deep Think」が拓く知性の新次元

Google AI Ultraプランの心臓部とも言えるのが、最新かつ最も強力な基盤モデル「Gemini 2.5 Pro」への(ほぼ)無制限アクセスです。このモデルは、すでにWebDev ArenaやLMArenaといった主要なAIモデル評価リーダーボードで世界トップクラスの性能を記録しており、その実力は折り紙付きです。特にコーディング支援、高度な論理推論、長文コンテキストの理解、さらには動画コンテンツの理解といった多岐にわたる分野で、業界最高水準の能力を発揮します。

しかし、Ultraプランの真骨頂は、Gemini 2.5 Proに搭載される予定の実験的な強化推論モード「Deep Think」にあります。この「Deep Think」は、AIが単に情報を処理して即座に応答を返すのではなく、より深く思考するプロセスを経る画期的な技術です。複雑な数学の問題や高度なコーディングタスクに取り組む際、AIは応答を生成する前に複数の仮説を内部で検討し、より論理的で精度の高い解答を導き出そうとします。まさにAIが熟考するイメージですね。

例えば、数学の知識と推論能力が試される2025年のUSAMO(米国数学オリンピック)レベルの問題で優れたスコアを獲得し、競技レベルのプログラミング能力を測るLiveCodeBenchというベンチマークでもトップクラスの成績を収めています。さらに、MMMU(Massive Multi-task Multimodal Understanding:大規模マルチタスク・マルチモーダル理解)という、画像やテキストなど複数の情報を統合して推論する能力を測るテストでも84.0%という高いスコアを記録しており、その汎用性と高度な知性が証明されています。

Ultraプランのユーザーは、この「Deep Think」モードに近日中にアクセスできるようになる予定です。これまでAIには難しいとされてきた、真に複雑な問題解決や、創造性が求められる領域での利用が一気に現実味を帯びてきます。例えば、難解な科学論文の核心を理解し新たな仮説を生成したり、大規模で複雑なソフトウェアの最適なアーキテクチャを設計したりといった、高度な知的作業をAIが強力にサポートしてくれる未来がすぐそこまで来ているのかもしれません。

Deep Thinkのベンチマーク結果比較表

「Deep Think」のベンチマーク結果です。OpenAIの推論モデルよりもハイスコアを出しています。

あなたも映画監督に?「Flow」と「Veo 3」で映像制作の常識が変わる!

Google AI Ultraプランが特にクリエイター層から熱い視線を浴びている理由の一つが、革新的なAI映像制作ツール群へのアクセスです。その中でも中核をなすのが、最新の動画生成AIモデル「Veo 3」と、AI映画制作ツール「Flow」です。

「Veo 3」は、Googleが開発した最先端の動画生成モデルで、その最大の特徴は、AI動画生成モデルとしては世界で初めて、効果音、背景の環境音、さらには登場キャラクター間の対話といった音声をネイティブにサポートする点にあります。

テキストプロンプトから映像を生成するだけでなく、そのシーンに合ったリアルなサウンドスケープやセリフまでを同時に作り出せるのです。賑やかな街の喧騒、森の中で葉が擦れる微細な音、登場人物の自然な会話など、これまで専門的な編集作業や音響効果の知識が必要だった要素を、AIがプロンプト一つで実現してくれるのです。

さらに、Veo 3は最大4Kという高解像度での動画出力に対応し、現実世界の物理法則を理解した自然な動きや、登場人物の口の動きと音声を正確に同期させるリップシンク機能も備えており、映画級の映像制作も夢ではありません。なお、現在のところは720pや1080pで生成され、まだ4K出力はできないようです。

GeminiでVeo 3を使った動画生成画面

Geminiで「Veo 3」を使った動画が生成できます。

このVeo 3の能力を最大限に引き出すのが、AI映画制作ツール「Flow」です。Flowは、Google DeepMindの最先端のAIモデル群を統合的に活用し、ユーザーが直感的なプロンプトを入力するだけで、映画のようなクリップやシーン、一貫性のあるナラティブ(物語)を持つ映像作品の制作を可能にします。

Ultraプランの加入者は、Flowにおいて1080p解像度での映像生成、カメラアングルや動き、視点の詳細なコントロール、既存ショットの編集・拡張、「ingredients to video」機能(キャラクターやシーンの雰囲気を維持したまま複数のクリップや場面を作成する機能)といったプレミアムな機能を利用できます。


これらのAIツールを利用する際には、「AIクレジット」というポイントが必要になります。Google AI Ultraプランには、毎月1万2500クレジットが提供され、Flowや、静止画像から約8秒間のショート動画を生成できる「Whisk Animate」機能などで利用できます。下位プランであるGoogle AI Proに付与される月間1000クレジットと比較すると12.5倍もあり、Ultraユーザーが本格的に映像・画像生成に取り組めるよう配慮されています。

Veo 3とFlowの組み合わせは、プロの映像制作者だけでなく、個人のクリエイターや小規模なチームにとっても、映像制作のハードルを劇的に下げ、表現の幅を大きく広げる可能性を秘めています。アイデアさえあれば、誰もが高品質な映像コンテンツを生み出せる時代が、もうすぐそこまで来ているのかもしれませんね。

試しに、「満月の夜、東京の夜景、ビルの上に黒マントの男が立ち『月は満ちた。終焉の刻だ』と告げ、虚空へ身を投げ、夜闇に滑空する」のようなプロンプトを入力すると、数分で音声やサウンドエフェクトの付いたリアルな動画が生成されました。8秒と短いですが、驚きのクオリティです。ちなみに、今のところはプロンプトを英語で入れる必要があります。

Google AI Ultraは買いか?未来を先取りする価値を考える

Google AI Ultraは、月額約3万6千円という価格に見合うだけの、まさに最先端かつ包括的なAIサービス群を提供してくれるプレミアムプランです。高性能AIモデル「Gemini 2.5 Pro」とその強化推論モード「Deep Think」による高度な知的作業支援、音声同時生成が可能な動画生成AI「Veo 3」とAI映画制作ツール「Flow」による革新的なコンテンツ制作体験、そして「Project Mariner」が垣間見せる自律型AIエージェントの未来。これら全てに、30TBの大容量ストレージとYouTube Premiumという実用的な特典が加わります。まだ、「近日提供予定」だったり日本未対応の機能もあるので、なるはやの対応を期待したいところです。

Google AI Ultraは単なる機能の寄せ集めではなく、次世代のクリエイティブワークフローや研究開発プロセスを実現するための統合プラットフォームとして設計されていると言えるでしょう。特に、映画制作者やソフトウェア開発者、最先端の研究に取り組む科学者、そしてAIの力を最大限に活用して新たな表現を追求するクリエイティブプロフェッショナルといった方々にとっては、その投資に見合うだけの、あるいはそれ以上の生産性向上や新たな価値創造の機会をもたらす可能性を秘めています。

日本でもすでに提供が開始されており、国内のクリエイティブ産業やテクノロジー分野にどのようなインパクトをもたらすのか、今後の動向から目が離せません。AIと共に未来を切り拓きたいと考えるなら、この「VIPパス」を手に入れる価値は十分にあるのではないでしょうか。


この記事の監修

柳谷智宣(Yanagiya Tomonori)監修

柳谷智宣(Yanagiya Tomonori)監修

ITライターとして1998年から活動し、2022年からはAI領域に注力。著書に「柳谷智宣の超ChatGPT時短術」(日経BP)があり、NPO法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を設立してネット詐欺撲滅にも取り組んでいます。第4次AIブームは日本の経済復活の一助になると考え、生成AI技術の活用法を中心に、初級者向けの情報発信を行っています。

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