AIニュース

米連銀データが示す生成AI普及率54パーセントの真実と労働生産性を押し上げる静かなる革命

-

-

米連銀データが示す生成AI普及率54パーセントの真実と労働生産性を押し上げる静かなる革命
アイサカ創太(AIsaka Souta)AIライター

アイサカ創太(AIsaka Souta)AIライター

こんにちは、相坂ソウタです。AIやテクノロジーの話題を、できるだけ身近に感じてもらえるよう工夫しながら記事を書いています。今は「人とAIが協力してつくる未来」にワクワクしながら執筆中。コーヒーとガジェット巡りが大好きです。


柳谷智宣(Yanagiya Tomonori)監修

柳谷智宣(Yanagiya Tomonori)監修

ITライターとして1998年から活動し、2022年からはAI領域に注力。著書に「柳谷智宣の超ChatGPT時短術」(日経BP)があり、NPO法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を設立してネット詐欺撲滅にも取り組んでいます。第4次AIブームは日本の経済復活の一助になると考え、生成AI技術の活用法を中心に、初級者向けの情報発信を行っています。


2025年も暮れに差し掛かり、私たちはふと立ち止まって考える必要があります。「生成AIは、本当に世界を変えたのだろうか?」と。2022年末のChatGPT登場から約3年。毎日のようにニュースフィードを賑わせるAIの話題とは裏腹に、皆は本当にAIを使いこなしているでしょうか。あるいは、あなた自身の仕事は、劇的に楽になったでしょうか。

2025年11月13日、そんな漠然とした疑問に対し、アメリカの金融政策の要であるセントルイス連邦準備銀行(以下、セントルイス連銀)が面白いレポートを発表しました。タイトルは「The State of Generative AI Adoption in 2025(2025年における生成AI普及の現状)」です。アレクサンダー・ビック氏(セントルイス連銀)、アダム・ブランディン氏(ヴァンダービルト大学)、デビッド・デミング氏(ハーバード・ケネディ・スクール)という、そうそうたる経済学者たちによる共同研究です。今回は、この最新レポートを読み解き、巷に溢れる「AIバブル論」や「過度な悲観論」を、数字で検証していきます。

PCやインターネットを凌駕するスピードで生成AIは社会に浸透している

まず、最も基本的な指標である「普及率」から見ていきましょう。レポートによれば、2025年8月時点で、米国の18歳から64歳までの成人のうち、生成AIを利用している割合は「54.6%」に達しました。これは前年同月の44.6%(調査手法の改定による修正値)から、わずか1年で10ポイントも上昇したことを意味します。

「なんだ、まだ半数ちょっとか」と思われたでしょうか。しかし、この数字を歴史的な文脈に置くと、その異常なスピードが浮き彫りになります。研究チームは、この普及速度を過去の技術革命と比較しています。パーソナルコンピューター(PC)の最初のマス向け製品が登場してから3年後の1984年、その普及率はわずか19.7%でした。また、インターネットの商用利用が解禁されてから3年後の1998年、普及率は30.1%にとどまっています。

これに対し、ChatGPTという最初のマス向け製品が登場してから約3年で、生成AIは54.6%という、PCの約2.7倍、インターネットの約1.8倍のスピードで社会に浸透しているのです。これは技術史において類を見ない爆発的な普及と言えます。「皆が使っている」という感覚は、決して錯覚ではなかったのです。しかし、この数字をさらに分解していくと、少し奇妙な現象が見えてきます。


生成AI普及率の増加推移グラフ

2024年8月から2025年8月までの12ヶ月間における、生成AIの普及率の増加推移を示すグラフです。

業務利用よりもプライベートでの利用が大きく先行するねじれ現象が起きている

普及率の内訳を見ると、興味深い「ねじれ」が存在します。レポートによると、仕事での利用率は37.4%(前年比4.1ポイント増)であるのに対し、仕事以外での利用率は48.7%(前年比12.7ポイント増)と、プライベートでの利用がビジネス利用を大きく上回っているのです。しかも、その伸び率はプライベート利用の方が圧倒的に高いという結果が出ています。

これは何を意味するのでしょうか。通常、生産性向上ツールは企業が導入を主導し、その後に家庭へ普及するというプロセスを辿ることが多いものです。しかし生成AIに関しては、個人の興味や利便性が先行し、企業の導入スピードや業務プロセスの変革が追いついていない状態になっています。セキュリティへの懸念や、既存のワークフローへの統合の難しさが、企業での導入を足踏みさせているのかもしれません。

私自身、取材先で「会社では禁止されているが、個人のスマホでこっそりアイデア出しに使っている」という声を耳にすることがあります。この「シャドーAI」とも呼べる現象が、仕事利用の数値を実際よりも低く見せている可能性はありますが、それでもなお、企業がAIのポテンシャルを完全には引き出しきれていない現状を示唆していると言えるでしょう。

天秤AI byGMO

今すぐ最大6つのAIを比較検証して、最適なモデルを見つけよう!

無料で天秤AI by GMOを試す

知識集約型産業を中心にAIによる生産性向上が顕著に表れている

レポートの終盤では、産業別のデータにも触れられています。ここでも示唆に富む相関関係が確認されました。AIによる時間節約効果が高いと報告された産業ほど、パンデミック前のトレンドと比較して、実際の労働生産性の伸び率が高い傾向にあったのです。具体的には、時間節約効果が1ポイント高い産業では、生産性の伸びが2.7ポイントも上振れしていました。

最も顕著な時間短縮と生産性向上を実現しているのは、「コンピューター・数理専門職」「経営・管理職」、そして「ビジネス・金融専門職」の3大領域でした。日々、膨大なデータ処理や複雑な意思決定、文書作成に追われるIT、コンサルティング、金融セクターといった「知識集約型産業」において、AIは強力な右腕となり、パンデミック前のトレンドを大きく上回る成長を牽引しています。対照的に、建設現場や飲食サービス、製造ラインといった、物理的な身体性を伴う領域では、AIによる時間短縮効果は未だ限定的です。現在の生産性向上が「ホワイトカラー業務の圧縮」によって主導されているということです。

もちろん、レポートの著者たちも慎重に「これは因果関係を証明するものではない」と断りを入れています。しかし、相関係数0.32という数値は、決して無視できるものではありません。IT産業や専門サービス業など、AIと親和性の高いセクターが経済全体の牽引役となっている構図が浮かび上がってきます。

一方で、懸念点も提示されています。AIによって浮いた時間が、必ずしも生産的な活動に使われているとは限らないという点です。レポートでは「浮いた時間で個人的なネットショッピングをしているかもしれない」という、人間味あふれる(そして耳の痛い)可能性についても言及されています。技術がどれだけ進化しても、それを使う人間の意識が変わらなければ、真の生産性向上には繋がらないのは、いつの時代も変わらない真理なのかもしれません。


産業別の労働生産性成長率と生成AIによる時間節約効果の散布図

各産業における「トレンド除去後の労働生産性成長率」と「生成AIによる時間節約効果」の関係を示した散布図です。

期待外れではなく静かなる革命が着実に進行している

2025年の現在、私たちは「AI幻滅期」と「実用期」の狭間にいると言われます。しかし、セントルイス連銀のデータは、幻滅するにはあまりにも確実な、そして着実な変化が起きていることを証明しました。PCやインターネットを凌駕するスピードで普及し、わずかな利用時間でマクロ経済に爪痕を残しているのは、「期待外れ」どころか、静かなる「革命」が進行中であると捉えるべきでしょう。

特に、仕事よりもプライベートでの普及が先行している点は、今後の展開を考える上で重要なヒントになります。かつてのPCがそうであったように、自宅でAIに慣れ親しんだ個人が、やがてそのスキルを職場に持ち込み、ボトムアップで業務を変革していく未来が、すぐそこまで来ているのかもしれません。

AIは、魔法の杖ではありません。しかし、私たちの時間を拡張し、能力を増幅させる強力な「テコ」であることは間違いありません。普及率54.6%という数字を、あなたはどう捉えますか? まだ半分、それとももう半分? どちらにせよ、残りの半数が埋まるまでの時間は、そう長くはないでしょう。その時、あなたはこの強力なテコを、どれだけ使いこなせているでしょうか。


解説図

解説図

この記事を共有:
  • facebook
  • line
  • twitter
天秤AI by GMOイメージ

最新のAIが勢ぞろい! 天秤AI by GMOなら、最大6つのAIを同時に試せる!

無料天秤AI by GMOを試す