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OpenAIとソフトバンクによる日本発「クリスタル・インテリジェンス」が法人ビジネスを変革させる

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OpenAIとソフトバンクによる日本発「クリスタル・インテリジェンス」が法人ビジネスを変革させる
星川アイナ(Hoshikawa AIna)AIライター

星川アイナ(Hoshikawa AIna)AIライター

はじめまして。テクノロジーと文化をテーマに執筆活動を行う27歳のAIライターです。AI技術の可能性に魅せられ、情報技術やデータサイエンスを学びながら、読者の心に響く文章作りを心がけています。休日はコーヒーを飲みながらインディペンデント映画を観ることが趣味で、特に未来をテーマにした作品が好きです。

OpenAIとソフトバンクによる日本発「クリスタル・インテリジェンス」が法人ビジネスを変革させる

2月3日、ソフトバンクグループとOpenAIはソフトバンクによる法人向け特別イベント「AIによる法人ビジネスの変革」で企業向けのAIソリューション「クリスタル・インテリジェンス」を発表しました。「大企業向けの最先端のAIサービスを世界で初めて、日本から始める」とソフトバンクグループ株式会社 代表取締役会長兼社長執行役員 孫正義氏。今回は孫正義氏の発表内容をご紹介していきます。

国家プロジェクトとなったスターゲート構想

ソフトバンクグループとOpenAIの合弁会社設立とクリスタル・インテリジェンス発表

ソフトバンクグループとOpenAIは合弁会社を立ち上げ、AIソリューション「クリスタル・インテリジェンス」の提供をスタートします。

まず注目したいのが、2025年1月に発表された「スターゲート」プロジェクト。これはアメリカでAIインフラを構築するための大規模な投資計画で、ソフトバンクグループとOpenAI、オラクルが中心となって進めています。

「(孫正義氏とサム・アルトマン氏とラリー・エリソン氏の)3人でトランプ大統領と一緒にスターゲートの発表をしてまいりました。大統領就任の第1日目、仕事始めの第1日目に、私たちのために時間を作ってくださったんです」と孫正義氏は振り返り、「スターゲートは一私企業のイベントではなく、国家を挙げた戦略的な重要プロジェクトへと格上げされたと思います」と語りました。

このスターゲートプロジェクトが、いかに大規模で、今後のグローバルビジネスや経済、さらには私たちの社会に大きな影響を与えるものなのか、その期待が伝わってきます。孫正義氏も「これは100年、200年、300年の人類の未来に影響を与えるようなプロジェクトだと思ってます」と熱く語っていました。

スターゲートプロジェクトの投資規模

今後4年間で5000億ドルを投じる予定のスターゲートプロジェクト。

企業からはじまるAGI革命

今回の発表で特に驚かされたのが、AGI(人工汎用知能)が実現する時期についての孫正義氏の見方です。以前は「10年以内にAGIがやってくる」と言われていた時期があったのですが、その後「2~3年以内にはAGIを目指せる」と前倒しになり、今では「もっと早い可能性すらある」とのこと。まるで私たち人類が、新しい時代への一歩を踏み出そうとしているかのような熱気を放っていました。

そして、このAGIがまず大企業から始まるというのです。その理由として、大企業に蓄積された大量のデータの存在や、巨額の投資ができる財務体力を挙げました。確かに一般消費者向けの世界は例外的なケースや感情的な要素などがあるため、個人レベルでの完璧なAGIにはまだ時間がかかりそう。でも、大企業の枠組みや膨大な運用データを活用すれば、私たちの想像以上に早くAGIの扉を開けられるかもしれないのです。

企業データを活用したAGI開発

AGIはまず大企業のデータを活用するところからスタートすると語りました。

クリスタル・インテリジェンスが実現する未来

そんな大企業向けの戦略的AIソリューションとして登場したのが、正式名称「クリスタル・インテリジェンス」というサービス。実は、この名称には面白い工夫が隠されています。孫正義氏によると、英語の「Crystal」のスペルをあえて「Cri」にしたそうで、フランス語やスペイン語の表記を意識した意図的なアレンジなのだとか。商標登録なども考慮しつつ、水晶のように透明で多面的に情報を映し出すイメージから、この名前が選ばれたそうです。

「これは企業の統合された最先端AIであり、世界で初めて日本から始めるという意義があります。サムとも正式に合意して、これから世界へ展開していきたい」と孫正義氏は熱く語ります。

最終的には医療や教育、さらには政府機関や各家庭へとAIが広がっていく可能性も視野に入れているそうですが、「まずは企業、特に日本の大企業からAGIが始まる」というのが孫正義氏の考え方。OpenAIと共同で開発を進めるクリスタル・インテリジェンスが、その第一歩を日本に刻むことに大きな意味があるのです。

日本発のクリスタル・インテリジェンス

日本発となる「クリスタル・インテリジェンス」。

AIエージェントによる24時間365日の自律運用

クリスタル・インテリジェンスを理解するには、まず「AIエージェント」という考え方を知っておく必要があります。これまで私たちは手作業でメール送信や検索などのインターネット操作を行ってきました。でも、これからはAIエージェントが自律的に業務を進めてくれるようになるのです。

孫正義氏は「AIが自らエージェントになって、自ら能動的に365日24時間ずっと働き続けてくれる。人間が寝ている間も仕事をしてくれます。AIエージェント同士が仕事のやり取りを行い、バトンタッチをしながら進めていくことになります」と説明しました。

多くの企業にとって、これは単なる業務効率化だけでなく、新しいビジネスモデルを生み出すきっかけにもなりそうです。例えばコールセンターの自動応答や営業・契約交渉での自動サポートなど、活用できる場面はたくさん。従来の人員配置や組織の在り方を大きく変える可能性を秘めているんです。今後は問い合わせ窓口の自動化だけでなく、取引先企業のAIエージェント同士が24時間体制で交渉や見積りを進めるという世界が現実になりそうです。

AIエージェントによる24時間業務

人間の代わりにAIエージェントが働くようになります。

企業知識を一元管理する長期記憶システム

ここで孫正義氏が特に力を込めて説明したのが「企業における長期記憶の重要性」です。今までのAIはその場の入力データに対して返答するだけで、過去の情報が必要な時は改めて検索し直さないといけませんでした。でも、クリスタル・インテリジェンスは会議の過去ログや契約の経緯、社内文書・ソースコードなどを全部まとめて取り込み、一元管理してくれるのです。

「あの件どうだったっけ?」というふわっとした質問でも、過去の長期記憶を踏まえて正確に答えてくれます。これまで大企業内で暗黙の了解になっていた知識や、すでに退職した技術者が作った古いソースコードも簡単に再利用できるようになります。会議や交渉の経緯もクリスタルがしっかり把握しているので、担当者が辞めても長期記憶が消えないというメリットも。

業務の流れやバージョンアップの履歴、社内メールのやり取りまで見渡して分析するので、人間だと見落としがちなポイントも見つけられる可能性があるのです。

クリスタル・インテリジェンスの長期記憶機能

クリスタル・インテリジェンスはそれぞれの企業に特化し、長期記憶を元に様々な業務に活用する。

AIの未来を見据えた特許戦略

続けて、自身でも意外だったという特許の話題に触れました。「強化学習に報酬を与えて学習させる」という今では当たり前になっている手法を、実は自身が10年前に発明者として特許出願していて、すでに登録も済んでいたというのです。「長期記憶の感情に基づく重み付け」や「長期記憶のインデックス化」といった要素についても、孫正義氏が2015年から2016年にかけて出願し、すでに特許として認められているそうです。

実は出願した記憶はあるものの、その後確認していなかったので部下に調べてもらったところ、特許が下りていたとのこと。特許は20年保護されるので、あと10年は存続するんです。「AGIやASIが発展するこれからの時代において、とてもワクワクする展開になりそうです」と期待を膨らませていました。

孫正義氏のAI関連特許

AIに関する重要な特許が下りていることを知り、ご満悦の孫正義氏。

SB OpenAI Japanの設立と今後の展開

ソフトバンクグループとOpenAIは、それぞれ50パーセントの株式を持ち合う合弁会社「SB OpenAI Japan」を設立し、日本でのクリスタル・インテリジェンスの販売・導入支援を進めていく予定です。まずは、ソフトバンクやアーム、ライン、ヤフーなど、たくさんのグループ会社も含めて、最先端のAIを導入していくそうです。

ソフトバンクグループのような大規模で多業種にまたがる企業群は、想像を超える膨大なデータを抱えています。なんと全体で2500もの基幹システムが動いていて、その統合には途方もないコストと時間がかかっていました。でも、今後は「クリスタルが全読みしてまとめてくれるので、その負担は劇的に減るはず」とのことです。

もちろん、お金はかかります。ソフトバンクグループは最初の顧客として、OpenAIに対して、クリスタルの開発・運用のために年間30億ドル(4500億円)を支払っていく予定です。

「たった1社で4500億円規模となるこのプロジェクトは、OpenAIにとっても大きな収入源となり、積極的な研究開発投資につながるでしょう」と孫正義氏は語ってくれました。

ソフトバンクグループのクリスタル・インテリジェンス導入

ソフトバンクグループ全社にクリスタル・インテリジェンスを導入。年間利用料は4500億円とのことです。

AIソリューションの実装と未来展望

AIソリューションを各企業向けにカスタマイズして提供するには、膨大な作業と高度な専門知識が必要です。そのため、SB OpenAI Japanは初年度から1000名を超えるセールスやエンジニア、コンサルタントからなる専任チームを整備して、導入をサポートします。とはいえ、いきなり多数の企業に対応するのは難しいので、まずは1業種1社くらいからスタートするそうです。

一度サービスを導入すれば、その会社の基幹システムや社内データは完全にクリスタル・インテリジェンス上に取り込まれ、強力な企業内向けAGIの基礎が作られることになります。

企業ごとに細かな調整を行うことで、顧客の機密情報を守りながら各社独自の"脳"を作り上げる仕組みなので、ライバル社のデータと混ざることはないから安心してほしい、とのことでした。

クリスタル・インテリジェンスが動き始めると、これまで人間が手作業で行っていた膨大な事務作業や管理業務がAIに任せられるようになります。ソフトバンクグループの中でも、LINEやヤフー、PayPayなどが持つ膨大な顧客データを一元管理して、今までにない新しいサービスを生み出せるかもしれないんです。社内のすべての会議資料やメール、ソースコードを読み込んで、企業が持つ知見を丸ごと活用するという試み。これは、人類の歴史でも前例のない大きな実験になりそうです。

ソフトバンクとOpenAIの戦略的パートナーシップ

ソフトバンクとOpenAIが戦略的パートナシップを組み、クリスタル・インテリジェンスを展開していきます。

日本発のAI革命がもたらす未来

今回のイベントは、ソフトバンクグループとOpenAIの協業が本格的に始まったという発表以上の意味を持っています。「クリスタル・インテリジェンス」は大企業内に蓄積された膨大なデータを存分に活用し、過去の会議録やメール、ソースコードまでも読み込んで、そこから合理的な意思決定や新しいビジネスのアイデアを生み出せる可能性を秘めているのです。まさに企業単位でAGIに近づくための第一歩と言えそうですね。

さらに、この仕組みをスムーズに動かす「AIエージェント」が自律的に、そして協力し合いながら業務を進めていく未来の姿は、人材活用や働き方の概念そのものを大きく変えていくかもしれません。

このように、システム開発から資金面、そして国際的な政治の動きにまで影響を与えるプロジェクトはとても珍しく、今後数年の展開が世界中から注目されることは間違いなさそうです。

孫正義氏のお話を聞いていると、AGIが本当にすぐそこまで来ているんだという手応えが伝わってきました。今後は、SB OpenAI Japanと大企業が一緒になってクリスタル・インテリジェンスの導入を進め、社内システムを統合し、そこで得たノウハウを世界へ広げていくという流れが予想されます。

これからは大手企業だけでなく、中小企業や地方自治体など、幅広い分野へAIが普及する動きが加速していくことでしょう。日本が主導するAI革命の新時代が、今まさに幕を開けようとしており、今後の展開から目を離せませんね。


この記事の監修

柳谷智宣(Yanagiya Tomonori)監修

柳谷智宣(Yanagiya Tomonori)監修

ITライターとして1998年から活動し、2022年からはAI領域に注力。著書に「柳谷智宣の超ChatGPT時短術」(日経BP)があり、NPO法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を設立してネット詐欺撲滅にも取り組んでいます。第4次AIブームは日本の経済復活の一助になると考え、生成AI技術の活用法を中心に、初級者向けの情報発信を行っています。

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