

星川アイナ(Hoshikawa AIna)AIライター
はじめまして。テクノロジーと文化をテーマに執筆活動を行う27歳のAIライターです。AI技術の可能性に魅せられ、情報技術やデータサイエンスを学びながら、読者の心に響く文章作りを心がけています。休日はコーヒーを飲みながらインディペンデント映画を観ることが趣味で、特に未来をテーマにした作品が好きです。
生成AIの時代において、より精度の高い結果を得るために効果的なプロンプト設計が重要になっています。様々なプロンプトエンジニアリングのテクニックがありますが、生成AIの急速な進化により、普通の自然言語で指示しても意図通りに動作してくれることが増えてきました。
とは言え、プロンプトによっては、うまく意図を理解してくれないこともあります。ある時はうまくいったのに、次に試したら異なる挙動をすることもあります。これは、モデルの確率的な性質によるものですが、ビジネスやプロジェクトで活用する場合、一貫性のある結果が求められることも少なくありません。そんな時にお勧めなのが、「YAML」形式を活用したプロンプト作成手法です。
何か新しい言語なのか?そんなものを今から覚える時間はない、などと言う必要はありません。言語ではあるのですが、人間が読み書きしやすいように設計されているのです。書き方を覚えるのが面倒であれば、それもChatGPTに任せてしまうこともできます。
今回は、生成AIの能力をさらに引き出すために、YAMLの使い方を簡単に紹介します。決して難しくはありませんし、ChatGPTに作らせれば細かいことを覚える必要もありません。ぜひチャレンジしてください。

ChatGPTを思い通りに動かすためにYAMLを活用しましょう。
生成AIが誤解しないようにプロンプトを構造化する
YAML(YAML Ain't Markup Language)は、人間が読み書きしやすいように設計されたデータシリアライゼーション言語です。JSONやXMLと比較して、より簡潔で視覚的に理解しやすい構文が特徴です。インデントを使った階層構造、リスト表記、キーと値のペアなどの基本要素で構成されており、設定ファイルやデータ交換形式として広く利用されています。
例えば「山田太郎さんは30歳で、プログラミング、デザイン、プロジェクト管理のスキルを持っています。住所は東京都桜通り123、郵便番号は100-0001です」という人物情報をChatGPTに渡すなら、YAMLで以下のように書きます。
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# YAMLの基本的な例
name: 山田太郎
age: 30
skills:
- プログラミング
- デザイン
- プロジェクト管理
address:
street: 桜通り123
city: 東京
zip: 100-0001
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YAMLを活用することで、プロンプトの構造化が可能になり、ChatGPTに対してより明確な指示を与えることができます。構造化されたデータ形式を使用することで、モデルは各要素を明確に識別でき、より一貫性のある回答を生成できるようになります。
特に、複雑な指示やフォーマットが求められる場合、YAMLの階層構造を活用することで、モデルの理解を助け、意図した通りの出力を得やすくなります。
例えば、「AIの未来と倫理的課題」というタイトルで、約800語の原稿を書いてもらいましょう。ここでは記事作成というタスクに対して、タイトル、文字数、スタイル、言語、対象読者、キーポイントなどのパラメータを明確に定義しています。また、出力形式として、導入・本文・結論というセクション構成や、要約の有無も指定しています。
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task: article_writing
parameters:
title: AIの未来と倫理的課題
word_count: 800
style: academic
language: Japanese
target_audience: 技術者とビジネスリーダー
key_points:
- AI技術の最新動向
- 倫理的問題点
- 規制の現状
- 企業の責任
references_required: true
tone: balanced
output_format:
sections:
- introduction
- main_body
- conclusion
include_summary: true
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指示通りに原稿を書いてくれます。

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自然言語からChatGPTにYAMLを考えてもらう
YAMLの構文に慣れていなくても心配ありません。ChatGPTに自然言語で説明し、適切なYAML形式に変換してもらうことができます。例えば「製品レビュー記事を書きたいです。製品はiPhone 16 Pro、ターゲットは一般消費者、1000字程度で、特に性能とカメラ機能に焦点を当てたいです。このリクエストをYAML形式に変換してください」と質問すれば、ChatGPTは以下のようなYAMLを生成してくれます。このプロンプトを入力すれば、意図通りにChatGPTがタスクを処理してくれる可能性が高まるのです。
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task: product_review
product:
name: iPhone 16 Pro
category: smartphone
content_requirements:
length: 1000_characters
language: Japanese
focus_areas:
- performance
- camera_features
target_audience: general_consumers
style:
tone: informative
format: article
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YAMLの大きな利点の一つは、カスタマイズが簡単なことです。構造化されたフォーマットなので、特定のパラメータだけを手軽に変更できます。例えば、先ほどの製品レビューのYAMLで、製品名だけをiPhone 16 ProからPixel 9 Proに変更するのは、該当する箇所を直接編集するだけで済みます。
Pixel 9 Proに変更して入力すると、同じようにレビューを作成してくれます。
複数のプロジェクトで再利用可能なテンプレートとしてYAMLを保存しておくことも効果的です。プロジェクトごとに必要なパラメータだけを変更することで、効率的にプロンプトを活用できるようになります。
過去にChatGPTへ入力した自然言語の文章をYAML化して、再利用する手もあります。最新のChatGPT、かつYAML入力であれば、以前よりも高品質な出力が得られる可能性が高いです。
画像をプロンプトにすることもできる
最新のChatGPTはマルチモーダル機能を備えており、テキストだけでなく画像も入力として処理できます。今、写真をアップロードして●●調にして、と指示して画像を生成してもらうのが流行っていますが、あまり似ていないことも多いでしょう。
そんな時は、まずは画像を分析してもらい、YAML化してもらいます。その後、画像とYAML、そしてどうして欲しいのかをプロンプトで指示すれば、望んだ出力が得られる可能性が高くなるのです。
例えば今回は、編集担当の男性が映っている写真をアニメ調にしてもらいましょう。単に写真をアップして、「添付の写真を細かい部分も再現してアニメ調画像にしてください」と入力すると、4oイメージ生成がさくっとアニメ化してくれました。しかし、再現度はやや低めです。まず表情が笑っていないですし、背後に掛かっているオブジェの形状も変です。左側には宙に浮いているようなボトルも出現しており、全体的な色味も違和感があります。


入力した写真と、単にアニメ調にした出力画像です。
そこで再度、画像をアップロードし、「画像を詳細に分析し、再現できるように細かい部分までYAML化してください」と入力します。すると、以下のYAMLが得られました。
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scene:
location: バーのカウンター
lighting:
type: 間接照明
color_temperature: 暖色系(約3000K)
sources:
- 天井のダウンライト
- バックカウンターの棚照明
atmosphere: 落ち着いた高級感のあるバー
depth_of_field: 背景は中程度にぼかされ、人物がシャープに描写
person:
gender: 男性
age: 30代後半〜40代前半
body_type: がっしり体型
skin_tone: 明るめの中間色
expression: 穏やかで自信のある微笑み
pose:
hands: 両手を軽く組み、テーブル上に置く
posture: 背筋を伸ばして浅く椅子に腰かける
facing: カメラ方向をやや斜めに見る(斜め右前)
clothing:
jacket: 濃紺のビジネススーツ、細いストライプ入り
shirt: 白地に薄いストライプのあるワイシャツ、襟を少し開けて着用
accessories:
- 黒縁のメガネ(スクエア型)
- メタルバンドの高級腕時計(左手)
appearance:
hair:
style: 短髪でトップを立てたヘアスタイル
color: 黒
facial_hair: 顎と頬にかけての整えられた髭
eyewear: 黒縁の眼鏡(スクエアタイプ)
background:
elements:
- バーカウンター上のウイスキーボトルや酒類(ぼかしあり)
- 白い食器が並んだ棚
- 手書き風のピンクのメニュー文字が書かれたガラスボード
- バーのポスター(レトロ風で人物やビールジョッキが描かれている)
materials:
- カウンター:光沢のある木材
- 椅子
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三度、画像をアップロードし、得られたYAMLを貼り付け、「YAMLを参照し、添付の写真を細かい部分も再現してアニメ調画像にしてください」とプロンプトを入力します。
出力された画像は明らかに精度が高くなっています。表情やオブジェの形、色味などよく再現されており、いい感じです。YAMLが効いているのがわかりますね。

YAMLとともに指示して生成した画像です。
YAMLを活用したビジネスでのAI活用法
ビジネスシーンでChatGPTを利用する際、YAMLを活用すると色々な利点があります。例えば、定期的に類似したテーマで行われるブレインストーミングセッションでは、毎回目的やルール、期待するアウトプット形式などを設定する手間が発生しがちです。
YAMLを用いることで、基本設定を構造化されたテンプレートとして保存できます。セッションの準備時間を大幅に短縮し、毎回変動する議題などの可変部分のみを更新するだけで、一貫性のある質の高いブレストを迅速に開始できます。
さらに、経験豊富な社員が作成した効果的なプロンプトを組織内で共有する際にも、YAMLが活躍してくれます。複雑で洗練されたプロンプトは、単なるテキストとして共有されるだけでは、その意図や最適な利用方法が伝わりにくいという課題があります。
YAML形式でプロンプトを管理すれば、プロンプト本体に加えて、その目的、対象者、バージョン情報、使い方、注意点、さらには入力すべき変数(プレースホルダー)の説明などを構造的に記述できます。YAMLを使うことで、プロンプトは単なる命令文ではなく、説明書付きの知識資産へと昇華します。結果として、他の社員がそのプロンプトを理解し、適切にそして手軽に活用・応用できるようになります。
社内全体のAI活用レベルの底上げと標準化にも貢献します。バージョン管理も容易になるため、プロンプトの改善履歴を追いかけ、常に最新のベストプラクティスを共有することができるのです。
YAMLを活用したChatGPTのプロンプト設計は、単なるテクニックにとどまらず、生成AIを効果的に活用するための戦略的アプローチです。構造化されたデータ形式を採用することで、生成AIとの対話の質を高め、再現性のある結果を得ることができます。
特にビジネスシーンでは、一貫性のある出力が求められることが多いため、YAMLプロンプトの活用は大きなメリットをもたらすでしょう。日々のプロンプトをYAML形式に変換してみることから始めて、生成AIとのコミュニケーションをより効果的に行ってみてはいかがでしょうか。
この記事の監修

柳谷智宣(Yanagiya Tomonori)監修
ITライターとして1998年から活動し、2022年からはAI領域に注力。著書に「柳谷智宣の超ChatGPT時短術」(日経BP)があり、NPO法人デジタルリテラシー向上機構(DLIS)を設立してネット詐欺撲滅にも取り組んでいます。第4次AIブームは日本の経済復活の一助になると考え、生成AI技術の活用法を中心に、初級者向けの情報発信を行っています。